アーティスト 片山 真理さん

制限ある自由を100%楽しみながら作ります

幼い頃、先天性四肢疾患により、両足を切断し以来、義足生活を送る片山真理さん(太田出身)は、自らの身体をテーマにした作品で知られる気鋭アーティストです。今年7月に女の子を出産、来月2日からは東京都写真美術館でスタートするグループ展「日本の新進作家」に出品するなど、制作に子育てに奮闘中。生まれ故郷を拠点に国内外で活躍する片山さんに、妊娠や出産、育児と仕事の両立、制作への思いなどを聞きました。

人間はみんな同じように産まれてくる

Q出産おめでとうございます。初めての妊娠・出産はいかがでしたか

自分と同じ誕生月の7月に無事、産まれました。名前は陽毬(ひまり)。「太陽のように明るく育って欲しい」という願いを込めました。30歳前に、「子どもが欲しいな、出来たら良いな」と思っていました。高校時代からずっと作品を作り続けてきましたが、ここらで作品の整理や編集作業をし、今までのやり方を転換しようと考えていた矢先。14年に東京から太田に戻り、タイミングよく妊娠・出産となりました。
思い返せば、妊娠中はオイオイ泣いてばかりいましたね。自分の体は大丈夫なのか、義足はいつまで履けるのか、仕事はどうなるのか。つわりもひどかった。匂いがダメで何も食べられない。しっかり育てなければと、覚悟はしていましたが毎日、不安で押しつぶされそうでしたね。

Q出産当日はどうでしたか

太田市内の病院で、自然分娩でした。義足履いて踏ん張るのかと思いきや、病院の先生には「背が高くて骨盤も大きいから大丈夫」と言われました。家族の立会い出産となりましたが、いざ陣痛が来ると苦しかった。でも、「人間はみんな同じように産まれてくる。クローンで増殖した人は1人もいないのだから、きっと自分も大丈夫」と思い直し、落ち着いて臨みました(笑)。障害があるから大変ということは全くありませんでしたね。

Q出産後に感じたことは何でしょう

さて、この人が独り立ちするまでの20年間、手助けしなければと思うと恐くなりました。適当に生きてきた私に人が育てられるのかと…。母には「今まで大変だったね。それに私って、とっても手がかかったよね」と素直に思いました。私は生まれてすぐに手術をしたりギプスをしたり。自分が親の立場だったら、耐えられないでしょうね。

家庭でも世界でも大事なものは変わらない

Q仕事はいつから再開したのでしょうか

出産から3カ月経ち、ようやく制作出来るようになりました。ただ、時間の使い方や素材選びなどはシビアになりましたね。前みたいに緩くやっている暇は全くない。常に直球勝負(苦笑)。今は12月から始まる東京都写真美術館でのグループ展の作品を制作中です。よく、「これからは作品に子どもを登場させるのか」と問われますが、それはない。新しい試みとしてデジタルではなくフィルムで全部撮るようになりました。基本「モノ」で残したいですね。今まで自分がいかに自由にやってきたか、ようやく気付きました。子育てで制限されることもたくさんありますが、その中で得られる自由を100%楽しみながらこれからも作り続けたいですね。

Q子どもが生まれたことで、仕事のやり方や制作への意識は変わりましたか

出産前は自分1人で作っていましたが、今は無理なのでチーム体制で作るようになりました。基本、写真撮影や作品制作は私がしますが、スケジュール管理やメール返信などは他のスタッフにお願いしています。制作への意識も大きく変化しました。障害を持った自分の身体を通して経験したことや感じたことを作品にしてきましたが、妊婦に対する眼差しや心身の変化を体験したことで、女性や人間が感じてきたものへの共感力が高まり表現の幅も広がった気がします。これまでは不特定多数の人へのメッセージでしたが、今回は目の前にいる娘に向けたものになりました。だからこそ、「この子を守りたい、ウソをつかないように生きたい」と強く思うようになりました。家庭で大事なものと世の中で大事だとされるものは、大きさが違うだけでその本質は変わらないのではないでしょうか。普遍的なものを意識的に考えるようになりましたね。この子ののおかげで仕事も家庭もうまく両立できています。

生まれた街を伝えたい

Q子育てでやりたいことは何でしょう

地域に面白い子育てサロンがあれば良いなと感じているので、いずれ自分で立ち上げたい。あと、太田には子どもと一緒に行きたいところが一杯ある。幼い頃の記憶って一生残るから色んなところに連れて行ってあげたい。活動範囲は限られていますが、子育てで絵本への興味が沸いたので、まずは近所の太田市美術館図書館に通います。

Q今後、どんな作品を作りたいですか

今はガンガン写真を撮りたい。被写体は地元の工場だったり、繁華街だったり。太田は夜、働いている人が多い。影の立役者です。そんな街の風景や人々を切り取りたいですね。地元に目を向けるようになったのは妊娠してから。大きくなってからの抱っこなど普通のお母さんより出来ることは少ないけれど、作品を通して娘に「あなたが生まれた街は、こういうところだよ」と伝えることはできる。彼女が何か迷った時、過去の記憶や経験が支えになると思うので、自分の生まれた街を作品で残してあげたいですね。

Q群馬のママパパにメッセージをお願いします

大変な時は、「これが10年も20年も続くわけではない」と自分に言い聞かせてきました。子どもは日々成長するし、今日と同じことは明日はないんじゃないかな。それを思うと何でもできますよ。

文・谷 桂/撮影・中島 美江子

かたやま・まり
87年生まれ。群馬県で育つ。群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業後、東京芸術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。自らの身体をテーマにした作品を制作。そのほか、音楽やモデル、講演など活動は多岐にわたる。群馬青年ビエンナーレ’05奨励賞、アートアワードトーキョー丸の内2012グランプリなど受賞多数。2017年の個展「19872017」(ガトーフェスタハラダ本社ギャラリー)、「帰途」(群馬県立近代美術館)など精力的に作品を発表。12月2日から東京都写真美術館で開催されるグループ展「日本の新進作家・無垢と経験の写真」に出品。