ゲームグラフィックデザイナー 河合 真吾 さん

「愛嬌のあるなめこを可愛がって欲しい」と話す河合さん=東京のビーワークス本社

「仕事を苦しいと思ったことが一度もないので、作っている時の喜びや遊び心みたいなものが伝われば良いですね」

累計ダウンロード数4200万回(昨年12月現在)。爆発的ヒットを誇るスマートフォン用のゲームアプリシリーズ「おさわり探偵 なめこ栽培キット」(以下なめこシリーズ)。「なめこを育てて収穫する」という育成ゲームのキャラクターデザインを手掛けている。来月には、シリーズ最新作「なめこの巣」が配信される予定だ。シリーズ化にとどまらず、グッズ化やアニメ化など幅広く展開中。人気ゲームアプリの生みの親に、新作やキャラクター作りへの思いを聞いた。

【好きなものをキャラに】

Q新作アプリの内容を教えて下さい

育てて収穫するという今までのなめこシリーズと違い、新種のなめこである「タケル」と一緒に巣作りを楽しんでもらうゲームです。プレーヤーはなめこ研究者という設定で、なめこの巣を大きくするお手伝いをします。遊んだり食べたり働いたり、なめこたちは巣の中でどんな生活をしているんだろうと想像しながら遊んで欲しい。

Q2011年から配信中のなめこシリーズですが、なぜなめこをキャラクターにしたのか

単純にキノコが好きだから。食べるのは勿論、種類が豊富で見た目も形もユニーク。自分が好きなもの、書きたいものをキャラクターにしました。

Q開発時のエピソードを教えて下さい

元々、別のゲームの脇役でしたが、そのゲームを大々的にPRするために作った宣伝用アプリがなめこシリーズの発端。元のゲームよりヒットし、当時、解散危機にあった弊社開発部は、お陰様で今も存続しています(笑)。

Qパズドラやモンストなど人気アプリゲームのヒット前に大ブレークしたなめこシリーズですが、これほど人気が出た理由はなぜだと思いますか

開発時、メンバー間で「なるべくストレスフリーなものにしよう」というところからスタートしました。「これ時間かかるよね」「これがっかりするよね」という様にマイナス要因をどんどん減らしていき、良いところだけを残して完成させました。当時、類似アプリがなかったこと、スマホの普及と同時期に誕生したこと、隙間時間で遊べるところなどが喜ばれたのかな。綿密なマーケティングはしませんでしたが、出来たものがスマホユーザーのニーズにちょうど合致したのでしょう。

Qなめこシリーズには約650種のキャラ(昨年末現在)がいるが制作時に気を付けている点は

キノコに寄せるのではなくコンセプトやネーミングに近付けていく。例えば「黄金なめこ」を創作する時、キンピカをイメージしがちですが、そこをちょっとズラす。黄金から連想するのは何かと。突き詰めていくと「ツタンカーメン」が浮かんできた(笑)。完全に僕の直感であり思い込み。でも、それが逆に面白いと感じてもらえると思う。

【できること、やりたいことを自分から】

Qデザイナーになろうと思ったきっかけは

絵とゲームが好きな子どもで、高校時代に絵を描く仕事に就きたいと思うようになりました。ただ、表現したいものが確固としてある訳ではないので自分発信でなく、求められたモノを作る方が向いていると。それならゲームグラフィックデザイナーだと大学ではなく専門学校への進学を決めました。担任や親には大反対されましたが(笑)。

Q専門学校卒業後、数社を経て現在の会社に入社されましたが、どんな仕事をしていますか

ゲーム開発グループのリーダーとして、ゲームの企画からコンセプト作り、プログラミング、キャラクター設定、デザインまでを総括的にディレクションしています。できること、やりたいことを自分から見つけていこうという社風なので、風通しが良く自由。誰が企画提案しても良いし、やると決まったらその案を尊重し皆でサポートします。なめこシリーズもその流れから生まれました。

Q開発グループの共通認識は

誰かが嫌な気持ちになるものは作らない。棘のあるキャラもいますが、個人攻撃するのはダメだよねって。そこをクリアさえすれば逆に何でもあり。可愛くて楽しいキャラを目指しています。

Qアニメ化までされたが、その時の気持ちは

遂にここまで来たかという感じ(笑)。老若男女に親しんでもらいたいと思っていたので凄く嬉しかったです。ゲームの一キャラをアニメにするためには多くのハードルがありましたが、色んな方の協力を得て実現させました。ゲームの世界観と乖離をしないよう、でもアニメとしてきちんと成立したものにアニメ制作スタッフの方が真摯に作って下さっているので、本当に感謝しています。僕も4歳の娘と一緒に毎週観ていますよ。

Qなめことどう関わってもらいたいか

純粋に可愛いキャラではないけれど、愛嬌があると自負しています。遊んでいるうちに愛着がわいてきて、知っている近所の子という感じで気軽に親しんでもらえたらうれしいですね。

【楽しく、面白く】

Qデザイナーとしてやりがいを感じる時は

自分の描いたキャラが形となりゲームの中できちんと動いた瞬間は何とも言えない。あと、ユーザーさんから「なめこ可愛がっています」「毎日楽しんでいます」という話を聞くと、この仕事をやっていて本当に良かったなとしみじみ感じます。

Q仕事上のモットーは

投げ出さずに最後までやる。諦めないというとちょっと違うのですが、納得するまでやれば例え失敗しても次に進む動力になる。あとは楽しく面白く。僕自身、仕事を苦しいと思ったことが一度もないので、作っている時の喜びや遊び心みたいなものが伝われば良いですね。

Q今年の目標は

2017年は僕にとって「なめこの巣」元年の特別な年。これまでのシリーズ以上に楽しんでもらえるよう今、頑張っています。完成が遅れていますが、期待を裏切らないものを作っていますのでもう少しお待ち下さい。配信後はユーザーさんの声を取り入れながら、より喜んでもらえるものにバージョンアップしていきたい。今年は、とにかく「なめこの巣」に全力投球です。

文・写真/中島美江子

【プロフィル】Kawai SHingo
1979年前橋生まれ。前橋高校から太田情報商科専門学校に進学。卒業後、2003年にデザイン会社「ビーワークス」(東京都港区)に入社。ゲーム開発部に所属、11年にゲームアプリシリーズ「おさわり探偵 なめこ栽培キット」を配信。来月には企画からデザインを手掛ける新作アプリ「なめこの巣」をリリースする予定。