地域医療を担う[5月18日号]

春先、出身の兵庫県立高校の同窓でつくるSNSページが盛り上がりました。春の甲子園大会で活躍した球児の母親が、同級生だったとわかったのです。野球だけでなくスキーも得意で学力も高いという記事を読み、やはり文武両道だった彼女の顔を思い浮かべました。

自治医大(栃木)の存在を知ったのは、彼女の進学先として聞いた高校卒業前です。「へき地のお医者さんになりたい」。30年余り前の言葉通り、過疎地域の診療所で今も働いていると知りました。

同大は、地域医療を担う医師を育てるため1972年、都道府県が共同で開きました。学費は貸与され、卒業後に出身県が指定する病院などで一定期間働くと、返済を免除されます。

この方式が、十数年前から注目を集めています。都市や特定の専門科に医師が偏り「地域医療が崩壊する」と危機感が高まった頃。各地の大学医学部が入学定員に「地域枠」を設け、県が奨学金制度を整えました。2015年度で全国1250人を数えます。

群馬では09年に5人で始まり、今春は18人がこの枠で群馬大に入学しました。今月中旬、その新入生らが県庁を訪れて決意と抱負を語る様子に、かつての同級生の輝く瞳を重ねあわせました。

縦割りの専門分野にとらわれず、総合的な医学知識と人に向き合う能力を駆使して住民の命と健康を守り、地域福祉を向上させる――。全国の取材先で出会った自治医大出身者から感じる姿勢です。単に医師不足地域で診療するだけではない医師が、地域枠から多く巣立つことを願っています。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)