映画と平和の関係[3月16日号]

「ただいま」。映像史を切り開いた巨匠の第一声でした。シネマテークたかさきで25日まで公開中の最新作「花筐/HANAGATAMI」を監督した映画作家・大林宣彦さん(80)が今月初旬、舞台挨拶した時のことです。

高崎映画祭が始まった1987年、「野ゆき山ゆき海べゆき」が最優秀作品賞を受賞。その後も「ふたり」「野のなななのか」で授賞式に出席しました。なかでも初年が印象的だったといいます。

「映画館がある街で映画祭は難しい、と言われていた。でも高崎では、映画館主も会場を掃除していた。驚いた。映画を愛してもらうのが大事という意識。全国でもまだない例だった」。今春32回を迎える映画祭への大きなエールでした。

「花筐」は檀一雄原作。戦争や病気という不条理の中での青春群像劇です。撮影入り前日の一昨年夏、肺がんで余命3カ月と告知され、監督は「うれしかった」と不思議なことを言います。「意識的ノンポリだった私に、檀さんの小説を読み解く資格があるかとおびえていた。檀さんと同じ肺がんになり、つながることができた」。

医師だった父は「世の中に病気がなくなれば医者はいらなくなる。その理想に向けて医者をしている」と話したといいます。監督は、映画に置き換えます。「戦争がなく、皆が深呼吸でき、健康で幸せなら映画なんて必要ない。戦争の空気を感じる今、映画を使って平和をたぐり寄せたい」。戦意高揚に使われたメディアとしての歴史が重なる新聞界にいる者として、大きくうなずきました。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)