漫画家 千葉 侑生 さん

自分が描きたいものを描くのではなく、読者に求められているものや「今」という時代を強く意識することが大切。自分が勝負できる表現世界を追及し、納得いくまで徹底的に調べ上げて作品化しています

絵を描き始めてから、わずか2年。現在、「週刊少年ジャンプ」が購読できる無料マンガ雑誌アプリ「少年ジャンプ+」(集英社)で、縦スクロールマンガ「ドリキャン‼」を週2回連載中だ。デビュー作「人生カンパニー」に続く2作目では、モータースポーツ「ドリフト」の天才・轟輪(とどろきりん)と彼女が所属する自動車部員たちの友情や恋愛をコメディータッチに描く。気鋭漫画家・千葉侑生さんに、連載作品や漫画への思いを聞いた。

リアリティを追及する努力は惜しまない

Q「少年ジャンプ+」で連載が決まった時の気持ちは

お話を頂いたのは昨年9月。うれしかったですね。ちょうど1作目の「人生カンパニー」が完結した直後でした。連載のきっかけは、集英社さんが「縦スクロールマンガ」を試験的に導入するために初めて実施したコンテスト「縦スクロール賞」での準大賞受賞。SFをテーマにした受賞作が連載になると思っていたら、編集担当から「ドリフト」について描いて欲しいと言われて。しかもスタートは3カ月後の12月から。「マジかっ!」と、超焦りましたね。

Qなぜ、「ドリフト」をテーマに

大学時代、自動車部に所属しドリフトの大会に出ていたことを編集担当者に話したら、「それ、面白い!」となりました(笑)。父親がドリフト車のチューニングショップをしていること、大学の入学式にドリフト車で行ったこと、自動車部に勧誘されたこと、ドリフトに全く興味がなかったこと、自動車部が通称「シャブ」と呼ばれていることなど、漫画に出てくるエピソードは実体験をもとにしているものも多いですね。

Qタイトルの「ドリキャン」とは

「ドリフト」と「キャンパス」を合わせた造語。マイナーなドリフト競技に明るいイメージのキャンパスライフを組み合わせ、可愛らしさや親しみやすさを出しました。友情あり恋愛ありのスポコンものですが、コメディー要素が強めなのでドリフトを知らない人でも十分楽しめると思いますよ。

Q「ドリキャン」を描く上で心掛けている点は

「ドリフトはスポーツだ!」という作品コンセプトに沿った象徴的なシーンや言葉を1話ごとに必ず入れ、その意図や魅力が読者に伝わるようにしています。特に気を遣っているのは車の描写。感動シーンや魅せゴマを車で表現しなければいけないのですが、人物と違って自動車には表情がないので走行中の迫力や躍動感をどう出すか毎回頭を悩ませています。色んなアングルに対応できるよう様々なドリフト車のプラモデルを買い集めたり、自動車部の後輩に走行中の画像送付を依頼したり、父親に原画のチェックをしてもらうなど、リアリティを追及するための努力は惜しみませんね。

漫画を読んだことも描いたこともない

Q小さい頃から絵を描くのが好きでしたか

全然(笑)。得意でしたが、自ら進んで描くことはなかったですね。実は近所のギター職人に憧れていて、高校時代はその方から修理方法を教えて頂き、大学卒業後は専門学校に入ってギター製作を学んでいました。

Q漫画家になったきっかけは

専門学校時代、漫画アプリ「comico(コミコ)」主催のコンテスト「学生漫画賞」で賞金30万円がもらえると知り、賞金目当てに応募したら入賞することができました(笑)。卒業し、楽器店の修理部門に就職した直後、コミコでSFをテーマにした「人生カンパニー」の連載が決まったのです。今まで漫画を描いたことも読んだこともないので、編集担当者から「ネームを出して下さい」と言われても「何それ?」状態。めっちゃ怒られましたね(苦笑)。全く未知の世界でしたが、「やれるところまでやろう」と楽器店を辞め漫画家人生をスタートさせました。

QなぜSFをテーマに

それまで漫画の世界にいなかった人間が、恋愛ものやコメディーなど普通の話を描いても生き残れないですよね。「ほかの人に出来ないものは何か」と考えた結果、SFに行きつきました。SFも読んだことも興味もなかったのですが、大学が理系なので知らないことを調べるのは苦になりません。物理学など様々な専門書を読み込み、何とか110話完結にこぎつけました。

寝る時と食べる時以外ずっと描いている

Q毎日、どのくらい制作をしているのですか

今、2日で1話を仕上げるため、寝る時と食べる時以外ずっと描いています。15時間位かな(笑)。自分の中で完結までの流れは出来ていますが、面白くなければすぐ打ち切られてしまうので毎回、必死ですね。

Q表現する上で大事にしていることは

一般的な横読み漫画は見開きの左下に面白いコマを持ってくるというセオリーがありますが、縦読み漫画にはそれがありません。読者を惹きつけるにはストーリーのリズム感が重要で、一番言いたいことの前に絵やセリフを一切入れず敢えて間を取るなど独自の演出を試みています。あとは、自分が描きたいものを描くのではなく、読者に求められているものや「今」という時代を強く意識することが大切。自分が勝負できる世界を追及し、納得いくまで徹底的に調べ上げ作品にしています。

Q今後の目標は

まずは、ドリキャンの完結です。最後まで続けば達成できますが、こればっかりは分かりません(苦笑)。そして、ドリキャンが一段落したら次は一般的な横読み漫画連載に挑戦したい。将来、単行本化されるのが夢。実現したら、「あぁ、漫画家になったんだな」と実感できる気がします(笑)。

Q群馬のファンにメッセージを

ドリフトは、うるさいとか危ないとかマイナスイメージが強いですが、フィギュアスケートに例えられる、「魅せる競技」です。スピード感や大音量、そして観客席の一体感など、その場でしか味わえない臨場感が魅力。「ドリキャン」を通して、その存在を一人でも多くの人に知ってもらい、モータースポーツ全般を盛り上げていけたらと思っています。興味を持った方は、無料ですので是非、読んでみて下さい。ドリフト競技の面白さと奥深さに、きっとはまりますよ(笑)。

文・写真/中島美江子

ちば・ゆう

藤岡市生まれ。群馬高専を経て国立大学工学部に進学後、ESPギタークラフトアカデミーでギター製作を学ぶ。専門学校在学中に漫画アプリ「comico(コミコ)」主催のコンテスト「学生漫画賞」でSFをテーマにした作品が入賞。卒業し楽器店の修理部門に就職した直後、コミコでの連載が決まる。デビュー作となる「人生カンパニー」は、2017年から2019年1月まで続き全110話完結。2018年、集英社が初めて実施したコンテスト「縦スクロール賞」で準大賞を受賞。同年12月から、集英社が運営する無料マンガ雑誌アプリ「少年ジャンプ+」で2作目「ドリキャン!!」を連載中。群馬県在住。

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