草津で百年前に[5月19日号]

今月20日は温泉地・草津にゆかりの深い女性の誕生日です。生誕160周年。英国人宣教師メアリ・ヘレナ・コンウォール・リーさんは、大正期の1916年4月、草津・湯之沢集落に移り住みました。
50歳で来日。58歳で、ハンセン病を患う人たちが湯治のため集住し明治期に形成された湯之沢へ。苦悩や困難にある人たちに希望を与えようと入居施設をつくり、病院や幼稚園、小学校を整備しました。
私財と内外からの寄付で支えられた活動は、患者を療養所に隔離する「無らい県運動」やリーさんの体調、日中戦争後の英米からの援助停止で細り、41年に解散。建物は撤去され集落も消えました。
先月半ば、医療に携わる友人たちと、現地を訪れました。「大滝乃湯」を訪れる人でにぎわう谷間に面影はなく、川にかかる「湯ノ沢橋」の文字だけが、当時をしのばせます。
辺りを見下ろす丘にある頌徳公園を、草津聖バルナバ教会の松浦信司祭に案内していただきました。41年に建立された顕彰碑と、地元有志や町、国立療養所栗生楽泉園の自治会、同教会が呼びかけ10年前に制作したリーさんの胸像があります。けれど温泉施設とは対照的に、訪れる人は少ないといいます。
同教会に5年前、「リーかあさま記念館」が開きました。資料を保存展示し、湯之沢の地図を掲げます。そばには解体を免れた児童施設「聖マーガレット館」跡の木造建物も。これらの遺産を草津の特長としてもっと生かせないか。楽泉園入所者が百人を切るいま、急務に思えます。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)