バリトンで語る日本歌曲の世界に魅せられて 猿谷 友規さん

「群馬のアーティストシリーズ 猿谷友規バリトンリサイタル 日本のうた」

「3分のドラマ」と言われている歌曲。短時間の中に、場合によっては何十年もの時が流れ、そこには多くの感情がうごめいています。凝縮された時間と濃密な人間らしさが感じられる日本歌曲にすっかり魅せられた私は、バリトンという語り手に近い声で、語るように歌うことを心掛けてきました。

今月31日、前橋のベイシア文化ホールで「日本のうた」と題し、日本歌曲の古典から現在に至るまでの作品を歌わせて頂きます。県民のホールとして群馬県ゆかりのアーティストの輩出に力を注いで下さるベイシア文化ホールには、一アーティストとして、一県民として本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

私がバリトンに目覚めたのは、高校1年生の時。音楽の先生を目指し、「声楽」を習い始めましたが、詩の世界観や声で絵を描くかのような「声楽」の奥深さにすっかりのめり込んでいきました。

「この素晴らしさを多くの人に伝えたい」と音大では声楽専修に入学し、ドイツ歌曲を学んでおりました。海外の作品を学ぶ中で日本の作品への興味が高まり、大学卒業後は日本の歌曲や童謡などの研究に励むと共に、日本歌曲リサイタルを県内外で精力的に行ってきました。

日本歌曲の中には、民謡のような歌い回し、子守歌のようなメロディーなどがあり、初めて耳にする曲でも自然と我々の体の中に入ってくるような要素があります。

今回のリサイタルでは、私自身が愛してやまない「日本歌曲」を紹介したいと思います。瀧廉太郎の「荒城の月」から始まり、「語り歌曲」と呼ばれるジャンルに至る現代の作品まで、日本歌曲の歴史を凝縮したプログラムにさせて頂きました。なかでも、群馬県在住の詩画作家・星野富弘さんの詩に、群馬大教授の西田直嗣先生が作曲された作品「別れ」にご注目ください。

日本歌曲には、ほかの歌曲やオペラのような派手さありません。しかし、静かに、時に熱く我々の心を揺さぶる力があります。コロナ禍における日常の中で、一瞬でも音楽の世界に身を置いていただけましたら幸いです。

「日本歌曲の魅力、奥深さを感じて欲しい」と猿谷さん

 

バリトン歌手
猿谷 友規 さん

高崎出身。国立音楽大音楽学部演奏学科声楽専修卒業。声楽を本島阿佐子、田中誠、山下浩司、織田修一、指揮を北爪道夫、今村能、夏田昌和の各氏に師事。日本の歌曲や童謡、唱歌の研究に積極的に取り組み、箏や三味線、尺八との共演や日本歌曲リサイタル開催。また、合唱指揮者として、各合唱団において音楽監督を務めるほか、県内外の合唱団でボイストレーナー、指揮者、講評講師を務める

■「群馬のアーティストシリーズ 猿谷友規バリトンリサイタル 日本のうた」■ベイシア文化ホール(群馬県民会館)大ホール(前橋市日吉町1・10・1)■027・232・1111■10月31日午後2時開演■全席自由 一般1500円、高校生以下1000円■未就学児入場不可、ソーシャルディスタンス公演(感染症対策を講じての実施)

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