現代のアーティストたちが描く美しく艶やかな花

FLOWER  今をいろどる花たち

現在、高崎市美術館では、ホセ・マリア・シシリア、新恵(しんえ)美佐子、渡辺香奈、大竹夏紀、ましもゆき、大村雪乃のアーティスト6人による花をテーマにした作品を紹介する企画展を開催しています。

当たり前のように、私たちの生活の中にある花。多くの人々は花を愛おしみ、癒やされていることでしょう。花と人との関わりは、先史時代に遡ります。数万年前の洞窟から花粉が発見されました。洞窟の中は花が育つ環境ではないので、誰かが花を集めて死者に手向けたのではないかという説もあります。

渡辺香奈《The River》2012年 作家蔵

よく考えると花は不思議な存在です。人間にとって主たる食料にも、衣服の素材となるわけでもありません。それでも古くは生命や豊穣の象徴として崇め、ある時代からは神や死者への祈りの儀式を彩り、その姿を絵画や彫刻で形に残してきました。現在も私たちは、人生の悲喜さまざまな場面に花を飾ります。人間が花を愛する理由―それは花自体の美しさに魅了されただけでなく、生命をつなぐために華麗に逞しく進化した姿そのものに自らの存在を重ね合わてきたからではないでしょうか。

 

大竹夏紀《ILLUMINATED GIRL #5》2017年 作家蔵

今回の展覧会では、油彩や染色、身近な文房具シールなどで制作された花の作品約50点を、「生命の花」「暗示する花」「女神の花」「増殖する花」の4つのテーマで展示しています。情熱的な赤が印象的なホセ・マリア・シシリアさんの蜜蝋を使った作品を始め、深淵な青緑色が覆う新恵美佐子さんの日本画、艶やかな花々が画面を埋め尽くす渡辺香奈さんの大作、黒一色の線描で表現されたましもゆきさんの繊細なペン画、カラフルな花と女性を描いた大竹夏紀さんの染色作品、ビビッドなドット柄が躍る大村雪乃さんの作品(シールアート)など、多彩な「花々」が会場を彩っています。

アーティストたちは花にどんな思いを託し描いたのか。ぜひ会場で、「今」をいろどる花たちをご鑑賞ください。

 

高崎市美術館 学芸員
谷津 淑恵 さん

跡見学園女子大学文学部美学美術史学科卒業。2000年より高崎市美術館に学芸員として勤務。「ウィリアム・ブレイクと神の世界」「3は魔法の数字」などを担当。

■高崎市美術館(同市八島町110・27)■027・324・6125■8月30日まで■午前10時~午後6時(金曜日のみ午後8時まで、入館はいずれも閉館30分前まで)■月曜日および祝日の翌日休館■一般500円、大高生300円(中学生以下、65歳以上無料)

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