相模屋食料社長 鳥越 淳司 さん

「お豆腐は私にとって人生そのもの、愛してやまないものです。可愛いくてしょうがない」と笑う鳥越社長=前橋の相模屋食料本社

おとうふをおもしろくしたい


「とにかくやってみる。それも、おっかなびっくりではなく必死に真剣に全力で。すると道は自ずと開けていくものです」

人気アニメ「機動戦士ガンダム」にちなんだ「ザクとうふ」やフレッシュチーズのような味わいの「マスカルポーネのようなナチュラルとうふ」など数々のヒット商品を飛ばす豆腐メーカー「相模屋食料」(前橋)。先月「ナチュラルとうふ」の開発が高く評価され「第6回ものづくり日本大賞」経済産業大臣賞を受賞、来年1月15日には新工場の竣工式を行う。創業以来、「木綿とうふ」「絹とうふ」作りにこだわり「おいしさ」を追求してきた。09年に年商104億円を突破し豆腐業界シェア1位になった後も、業績を伸ばし続け15年2月期の売上高は178億円に上る。快進撃を続ける同社の鳥越淳司社長に、豆腐のことや急成長の原動力などについて聞いた。

【新しい価値軸を創出】

Q「ものづくり日本大賞」経産大臣賞を受賞しました

F1層と呼ばれる20〜34歳女性にターゲットを絞った「ナチュラルとうふ」が高く評価されうれしい。不二製油(株)さんが開発した豆乳クリームを使うことで、濃厚かつ滑らかな新食感が生まれました。ダイエットに関心の高い女性にとってお豆腐はどちらかと言うと仕方なく食べるもの。そこに「おいしさ」という新しい価値軸を創出したことで多くの支持を得られました。お豆腐の世界観を広げたと自負しています。

Qナチュラルとうふを東京ガールズコレクションなどでPRしています

F1層が集まるファッションショーにお豆腐を立たせたいという夢がありました。モデルさんに持ってもらい歓声を浴びるにはどうしたら良いか。通常パックでは格好付かないので、ファッションアイテムとして使われていた飲料カップ型容器に入れればいいとビビッときました。昨夏の発売日にショーデビューを果たした史上初のお豆腐です。

Qザクとうふにナチュラルとうふ、ヒット商品を次々開発しています

ザクとうふは完全に私の趣味。結果的にガンダムコアファン層の30〜40代男性から大反響を得ました。お豆腐は万人向けという固定概念がありましたが、ニッチ層に絞ってもヒットすると実感できました。そこに我々が地道に築き上げた絹と木綿の基本的なお豆腐作りのノウハウを注入したのです。奇をてらうだけでは受け入れられなかったでしょう。

Q新商品や価値観を創造する極意

まずできるかできないかと考えるのではなく、自分が本当に作りたいかが大切。「こうなったら良いな」という夢や理想をイメージし、形にするため必死に考え行動します。現状からスタートしたらいつまでたってもゴールに辿りつきません。あとは常識に捕われないこと。弊社は第3工場でアツアツのお豆腐にパックを被せる「ホットパック製法」を取り入れています。それまで、水中でお豆腐をパックに合わせて入れていましたから、まさに逆転の発想です。

【一点突破、一心不乱に】

Q攻めの姿勢を貫いています

我々中小企業には守るべきものはありません。自分たちが決めたことを一点突破、一心不乱にやるだけ。例えば、「焼いておいしい絹厚揚げ」にはでんぷんを加えています。邪道だという人もいますが「おいしい」を起点に考えれば何ら問題ありません。作り手が陥りがちなのはおいしいお豆腐を作るために技を磨いているのに、ある時から技術自体を誇るようになってしまう。それでは本末転倒。目指すのは「お客様が求めるおいしさ」です。

Q急成長の原動力は

お豆腐に対するリスペクト。四六時中考えています。あとは気合と根性。綿密な計画は立てません。ガンダムに「圧倒的じゃないか我が軍は」という台詞がありますが、それに習い圧倒的な努力を続けています。お豆腐業界は成熟産業で、これ以上変わりようがないと言われてきました。そんな中、お豆腐の可能性を信じ挑戦してきたからこそ成長できたのでしょう。ピンチはチャンス。「どうせダメ」ではなく、とにかくやってみる。それも、おっかなびっくりでなく必死に真剣に全力で。すると道は自ずと開けていくものです。

Q豆腐づくりで心掛けていること

「お豆腐を面白くする」「お豆腐のマーケットを広げていく」をコンセプトに掲げ、他社との圧倒的な差別化を目指し「分かりやすさ」や「深さ」を追求しています。どんな商品も木綿と絹から出発し最後はそこに帰結する。原点からブレずに新商品や新しい価値感を作り出しています。

【豆腐の素晴らしさ発信】

Q来年1月15日に新工場の竣工式を迎えます

本社隣接地に建設中の新工場は、1階に冷蔵設備、2階に生産設備、3階に検査室などを設置します。11年に建てた芳賀工場は全国展開を視野に入れ、敷地面積が狭くても対応できるよう3階建てにカスタマイズしました。05年に建てた第3工場は、ロボットを導入し「見せる工場」にしました。新工場は、今まで実験的に展開してきたモデルケースの工場の実践版になるでしょう。

Q今後の夢や目標は

弊社は来年創業65周年を迎えます。私の故郷が京都なので、まず西日本の拠点強化に取り組んでいきたい。国内の豆腐市場は6000億円とも8000億円とも言われています。業界大手と言っても弊社の年商は178億円。数%に過ぎません。将来的に年商1000億円を目指します。「お豆腐の素晴らしさ」や「お豆腐のある豊かなライフスタイル」を発信し続けていきたいですね。

Q群馬の皆さんにメッセージを

お豆腐と一緒で、群馬県は全国的に注目度が高い県とは言えないでしょう。でも、水も食べ物もおいしいくて本当に魅力的な県です。実はあまり知れていませんが、群馬はお豆腐と油揚げの出荷量が全国1位を誇っています。「群馬ってスゴイ」と自信を持ってもらえるよう、おいしいお豆腐作りに邁進していきますので、応援よろしくお願いします。

文・写真/中島美江子

【プロフィル】Junji Torigoe
73年京都生まれ。早稲田大学卒業後、96年に雪印乳業に入社。02年に相模屋食料に入社し、07年に社長に就任した。11年、「焼いておいしい絹厚揚げ」が食品ヒット大賞優秀ヒット賞を受賞。12年3月に発売した「ザクとうふ」が大ヒット。14年8月には「マスカルポーネのようなナチュラルとうふ」を発売、次々とヒット商品を生み出している。前橋在住。