コロナ時代で変わる? 譲渡事情 動物愛護週間(20~26日)

県動物愛護センターで6日から再開した譲渡会。お目当ての子猫をいとおしそうに抱き上げる里親希望者=玉村町

新型コロナウィルス感染拡大防止のためステイホームを余儀なくされる中、動物を迎えたいという家族が増えている。ボランティア団体への問い合わせや、県動物愛護センターが里親希望者を対象に開く譲渡前講習会の申し込みも急増。各団体はコロナ禍での注意喚起をした上で、希望者の受け入れを進めている。今月20~26日は「動物愛護週間」。ウィズコロナ時代の譲渡事情などを取材した。

動物と一緒に暮らしたい!

増える希望者、新たな懸念

譲渡会を6月から再開した県動物愛護センター(玉村、以下センター)では、7月だけで犬15頭と猫33頭を譲渡。杉本治義所長は「昨年1年間の譲渡数は犬146頭、猫252頭ですから割合的にも増えています。ステイホームを経験し、動物と暮らしたい人が増えたのでしょう」と話す。 高崎のNPO群馬わんにゃんネットワーク(飯田有紀子理事長、以下同NPO)は、3月から譲渡会を中止。メールで飼育環境を聞いたり、電話で希望者と綿密に連絡を取り合うなどして譲渡に繋げている。4~7月の譲渡数は、前年に比べ3割以上も増えた。

譲渡に至らないまでも顕著なのはアプローチ数。同センターが、里親希望者に義務付けている事前講習会への申し込みはコロナ以前と比べ3~4割増。同NPOでも4月以降、希望者は猫1匹に対し今までの倍以上の7~8人が名乗りを上げている。うれしい反面、譲渡側は安易な受け入れ姿勢に懸念を示す。

同NPOの飯田理事長は「コロナで落ち込んだ気持ちを癒すためなど、自分自身の問題解決を動物に過剰に期待するのは危険。あくまでも、愛情を持って家族に迎える自覚が必要」と警鐘を鳴らす。同NPOでは譲渡前に飼育環境や家族構成などを問うほか、ステイホームが理由の里親希望者にはコロナ終息後の飼育環境などを必ず聞き、動物たちが悲しい思いをすることのない状況かどうかの確認も行っているという。

動物迎え入れ、家族に変化

子猫がじゃれると家族の間に笑いが起きる

吉岡町の田中智さん、緩奈さん夫妻は長女の愛空さんと長男の洸さんの家族全員で8月、同センターの譲渡会に参加。「外出自粛が続く中、以前から飼いたかった猫の受け入れを決めた」という。高崎市の小嶋睦巳さん(47)、博美さん(49)、華乃さん(13)親子もコロナを機に7月、ボランティアを通して猫を迎えた。博美さんは「ステイホームならぬステイルームだった家族が、猫のいるリビングに自然に集まるようになりました」とほほを緩める。睦巳さんは猫との触れ合いを楽しみに晩酌を早めに切り上げるように。一方、勉強や部活で忙しい子どもたちは気持ちが穏やかに。「猫を通して親との会話が増え、以前よりも絆が深くなった気がします」と華乃さんは笑顔で語る。

中毛地区に住む女子大生(21)と家族は、8月に猫との暮らしをスタート。決め手は、大学が今年度いっぱいオンライン授業となったこと。通常授業に戻っても家族が家にいること、留守になっても猫飼育経験のある親戚に依頼するなど、緊急時の対応を考えた上でペット探しを開始。「迎えるなら保護猫」という家族全員の希望で、里親募集サイトを通じて運命の出会いを果たした。「今では猫中心の生活。脱走防止策を講じたり誤飲に気を配ったり、しなければいけないことが増えたがそれ以上に癒されることが多く、今ではなくてはならない存在」と声を弾ませる。

コロナ後、対応に新たな工夫

動物の幸せのため、またお手本となる飼い主を増やすため、同センターでは以前から譲渡希望者を対象に事前講習会を義務付けている。9月からは1日6組まで、参加人数は1組2人までに制限。マスク着用や検温を求めるほか、隣席との距離を確保するなどの対策を施している。

同NPOでは対面での譲渡会を中止し、里親希望者へのヒアリングをメールで行ない、その後、希望者と電話で話す方法を取っている。スピーカー機能を使い家族全員と話すなど、飼い主の飼育環境を深く把握するための工夫を重ねる。さらに、譲渡時は検温や長時間の接触を避けるなど感染予防を徹底。「今後はリモート機能を使って譲渡対象の動物の魅力や個性が事前に伝わるよう工夫し、受け入れ数を増やせないか検討したい」という。

講習会で飼い主の意識向上

コロナの感染者が再び多くなりつつある昨今、家庭内感染も増えている。予防はもちろん、考えておきたいのは飼い主が感染した時のこと。一人が感染すれば家族は濃厚接触者に。仮に全員陽性で入院を余儀なくされた場合、動物をどうするか。事前に考え、前出の女子大生のように「もしも」の場合の対応と明確にしておくことが必要だ。

なお、同センターではホームページで「新型コロナウィルス感染による入院・宿泊療養した場合のペットの飼育」をアップし対応を促す。同NPOの飯田理事長は「ウィズコロナ時代。今まで以上に飼い主としての責任が問われています。自分を守らなければならない時、ペットも守れるか?という視点を忘れず、最悪の事態の備えた準備をしていて欲しい」と呼びかける。

コロナ禍を受け、何があっても動物たちを不安にさせない対策が飼い主に求められているが、前出の女子大生は「保護猫探しを通じて無責任な飼い方をしている人が、想像以上に多いという事実を知りました。癒しの対象として、都合が良い時だけ可愛がるだけでは無責任。尊い命が自分たちの手にかかっているという自覚を持って、まずは我が家に迎えた猫を幸せにできるよう努めたい」と語っている。

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