ザスパJ2復帰 「天国と地獄」分ける大一番で勝利 「歓喜」からリスタート

J2昇格を決め、喜びを爆発させるザスパ選手=8日、福島市のとうほう・みんなのスタジアム

遂に念願の瞬間がやってきた。ザスパクサツ群馬が今月8日、J3リーグ最終戦となる第34節アウェイの福島ユナイテッドFC戦で2―1の勝利を収め、最終順位を2位とし、3年ぶりとなるJ2復帰を手にした。福島に詰めかけた多くのサポーターの大声援の目の前で、選手たちが見せた激闘をレポートする。
(文・写真 安藤隆人)

後半3分 待望の先制点

勝てば文句なしのJ2昇格だが、引き分け以下だと同時刻キックオフの3位藤枝MYFCが、優勝したギラヴァンツ北九州を相手に勝利すれば順位が入れ替わるという、天国と地獄を分ける大一番となったこの一戦。立ち上がり風上に立った群馬は、長身FW榎本樹をターゲットにロングボールを中心に組み立てるが、3分のMF姫野宥弥のシュート、31分の田中稔也のミドルシュートがポストを叩くなど、チャンスをモノにできなかった。
しかし、0―0で迎えた後半3分、ついに均衡は崩れた。右FKを得ると、姫野のキックに合わせたのはゲームキャプテンのDF渡辺広大。今季、市立船橋高時代の恩師・布啓一郎監督から呼ばれて群馬にやってきた渡辺の鮮やかなジャンピングボレーが突き刺さり、群馬が待望の先制点を奪った。55分にもMF磐瀬剛が得たPKを、42分に榎本と代わって投入されていたFW髙澤優也が冷静に決めて追加点。
その後は、福島も187センチのFW小牟田洋佑、188センチのFWイスマイラを次々と投入し、前線を4トップ気味にするなど反撃に転じた。84分にはそのイスマイラに1点を返されるが、渡辺とDF舩津徹也の2CBを軸とした守備陣が最後まで身体を張って同点弾を許さなかった。

何が何でも守り切る

実は、藤枝が後半アディショナルタイムに決勝点を挙げたことで、もし同点ゴールを許していたら地獄が待っていた。だが、「藤枝の結果は知りませんでした。もう最後は何が何でも守りきるという気持ちで戦っていた」と渡辺が語ったように、選手たちはそうした情報に目もくれず、目の前の戦いに集中していた。

最低限のタスクを達成

試合後、布監督は「最低限のタスクであるJ2昇格が達成できて、ホッとしています」と安堵の表情を浮かべた。
昨年は1年でのJ2復帰を果たすべく、市立船橋高を全国トップレベルに仕立て、2015年からの3年間はJ2・ファジアーノ岡山のコーチを務めていた布監督を招聘。奈良知彦新社長と共に新たなスタートを切ったが、結果は5位に終わった。しかし、「普通だったら解任されてもおかしくなかったのに、もう1年私に託してくれた」と布監督が口にしたように、クラブが結果で判断せずに継続強化を選んだことで、2018年が土台となって今回の歓喜につながった。
とはいえ、布監督が言うように、J2昇格はあくまでも「最低限」のタスク。また同じ過ちを繰り返さぬように、この歓喜がクラブとしての重要なリスタートとなる。

パブリックビューイングに約900人集結

サポーター「よしっ、 やったぞ!」
「よしっ、やったぞ」—最終戦でザスパがJ2復帰を決めた8日、正田醤油スタジアム群馬(前橋)で行われたパブリックビューイング会場は歓喜に沸いた。
 ザスパのホームスタジアムには共に戦う約900人が集結。スクリーンに映し出される選手に大きな声援を送った。後半3分、ザスパが先制すると観客は総立ちに。高崎南陽台小5年の星野利音君は、「ホームで応援できて良かった。シュートを決めてくれて嬉しい」と父親の尚紀さん(37)とハイタッチ。試合終了の笛が鳴ると、サポーターはクラッカーで昇格を祝福。伊勢崎から訪れた中野純晴さん(35)、由佳里さん(33)夫妻は、「若手の頑張りが頼もしかった。J2での活躍が楽しみ」と奮闘を称えた。

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