住みます芸人 アンカンミンカン

わたらせ渓谷鉄道のキャラクター「わ鉄のわっし〜」を手にするボケ担当川島大輔さん(左)とツッコミ担当富所哲平さん(右)。胸元には群馬県のキャラクター「ぐんまちゃん」が=みどり市の「ながめ余興場」

群馬を地産地”笑”県に

「群馬ごと笑わせて、鶴舞う形を変えちゃうくらいの勢いで頑張りますよ」

 

【企画にうってつけ】

「いきなりチラシに載ってない奴が出てきちゃってスミマセン」—昨年末、館林で開かれたお笑いライブ「週末よしもと」。博多華丸・大吉、FUJIWARA、スリムクラブら人気芸人と共に、1組の若手漫才コンビが舞台に立った。吉本興業が昨春から進めるプロジェクト、「住みます芸人」の群馬代表・アンカンミンカンだ。ツッコミ富所哲平さんとボケ川島大輔さんは、ご当地ネタの上毛カルタや新ネタを次々繰り出し会場を笑いの渦に包んだ。本番を終えた富所さんは、「初めての夢舞台。緊張しました」。一方の川島さんは「楽しくやれた。僕ら的にはほぼ満点の出来」とニンマリ。
「笑いの力と人々の力を一つにして、地域からニッポンを元気にしていきたい」—今春、創業100年を迎える吉本興業は47都道府県全てに芸人を送り込み、地域を盛り立てる活動を展開中。昨春、前代未聞のプロジェクトが始動すると知った2人は、「群馬出身だし幼馴染みだし、うってつけじゃないですか」と自ら売り込みに行った。その熱意が伝わり見事、群馬代表の座を射止める。「デビュー5年目の分岐点を迎え、不安もあったが、ここで乗らなきゃいつ乗るんだって話だった」

【中2でコンビ名誕生】

小中学校の同級生。「メッチャ暗いやつ」(富所さん)、「調子乗りな感じ」(川島さん)と第一印象はお互い良くなかったが中学時代、マージャンをきっかけに仲良くなる。「2人とも人を笑わせるのが好きで、その頃から芸人になりたいって話をしていた」と川島さん。コンビ名も中2の時、卓を囲む中から生まれた。「マージャン用語の明と暗をくっつけた。コンビは凸凹が良いと言われていたので」と富所さん。
別々の高校に進むが専門学校と大学卒業後、吉本興業の養成所にそろって入学。その前に川島さんは救急救命士の国家試験に落ち、富所さんはIT企業の内定を辞退していた。「合格者170人中171位で不合格。これは神の思し召し以外の何者でもないと思った」と川島さん。片や富所さんは「ずっと決断できない自分がいたが、どうしても諦められずに最後の最後でドンとこけた」 紆余曲折を経て辿りついた芸人への第一歩だった。
養成所卒業後は東京の劇場「よしもと浅草花月」を中心に活動。約4年間、舞台に立ち続けた。ネタ作りは99%川島さんが担当する。「相方には基本演じてもらうだけ、みたいな(笑)。まぁ俺のことをスゴク分かってくれているし、イジリ甲斐があるので助かっていますが」と涼しい顔。対して富所さんは、「俺はマリオネットじゃねえって文句言いますが、彼の才能に頼っているのは事実。出会った時から、死ぬまで彼の面白話を隣で聞きたいと思ってますから」と苦笑。

【年中無休で群馬PR】

東京からみどり市の実家に戻り約8カ月。ライブ中心だった芸人生活は一変した。毎晩午後10時からネット上(http://www.ynn47.jp/)で動画を生配信するほか、ブログやツィッターなどでもコンビの活動や群馬を年中無休でPR。更に週2回のFMぐんまレギュラー出演に加え、地域の祭りや学校行事に赴き笑いを振りまく。藤原湖マラソンや赤城山ヒルクライムに出場するなど、体を張った仕事もこなす。「地元中学校に呼ばれるなど地域密着度は半端ない。住みます芸人やってホント良かった」と川島さん。富所さんも「僕も同感。台本真っ白全部お任せって仕事もあったが、お陰で引き出しは確実に増えた(笑)」
県内での活動は日を追うごとに広がりを見せている。先月には地元みどり市から初代観光大使に任命。「渡良瀬鉄道、ながめ余興場、小平鍾乳洞、岩宿遺跡、草木ダム、小中大滝と、みどり市って何気に色んなものがある。市のPRはもちろん、任期中に緑色の名産品を作ったり商店街マラソン大会を開いたりして地元を盛り上げていきたい。最終目標は石原条市長と飲み友達になること(笑)」と口をそろえる。

【群馬を笑いで元気に】

県内をほぼ網羅した2人は改めて群馬の魅力に気付いたという。「人が本当にあったかい。差し入れもしょっちゅう頂く」と富所さんが上州気質を挙げれば、川島さんは「焼きまんじゅうにうどんにモンジャ、小麦のバリエーション凄すぎ」と粉食文化を絶賛。一方で群馬の宣伝ベタなところも感じている。「潜在能力は高いのに地域ブランド力47位は納得いかない。日本一になれるよう一肌でも二肌でも脱ぐつもり」と気勢を上げる。とはいえ、県内での知名度はそれほど高くない。アンカンミンさんと呼ばれたり芸人と気付かれなかったり。「早くイベント以外で声を掛けられるようになりたい」
ささやかな願いとは裏腹に12年の抱負は壮大だ。「群馬を独自の笑いを生み出せる『地産地笑』県にします。県民200万人だけでなく群馬ごと笑わせて鶴舞う形を変えちゃうくらいの勢いで頑張りますよ(笑)」
西へ東へ南へ北へ「群馬を笑いで元気に」を合言葉に県内を飛び回る凸凹コンビが地域ブランド力47位に甘んじる群馬の救世主になる日は近い!?かもしれない。

文:中島 美江子
写真:高山 昌典

【プロフィル】ankanminkan
川島大輔(83年、みどり市大間々出身)と富所哲平(同)によるお笑いコンビ。小学校からの幼なじみ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。吉本東京養成所NSC12期生。11年5月、「住みます芸人」群馬代表として東京から地元群馬に移り住む。以来、地域の祭りや学校行事、ラジオ、お笑いライブなどに出演。みどり市在住。

 

〜アンカンミンカンさんへ10の質問〜

芸人として「ながめ余興場」は外せない

—群馬のイチオシ

川=地酒。久しぶりに飲んだ「赤城山」は涙が出る程旨かった。富=群馬のユルキャラ「ぐんまちゃん」。僕らメッチャ仲良くさせてもらっています。

—みどり市のイチオシ

川=渡良瀬渓谷鉄道。小さい頃一人で良く乗った。芸人としては「ながめ余興場」=写真。昨秋舞台に立たせてもらったが、こんなスゴイとこが地元にあることを誇りに感じる。富=僕も「ながめ余興場」は外せない。あと、和菓子屋「青柳」の「まゆの詩」とラーメン店「龍昌」のソースかつ丼はホントおいしい。

—尊敬する芸人

川=志村けんさん。お笑いに徹する熱量がマジでスゴイ。富=山崎邦正さん。毎年、僕の中で一番の大爆笑をかっさらっていく。

—座右の銘は

川=哀川翔さんの言葉で「やりたくないものはやりたくないけど、やりたくないという感情がなければやった方がいい」。富=子供の時から親に言われてきたことで、「自分がやられて嫌なコトは人にやるな」。

—好きな食べ物は

川=スイカ、肉、ラーメン。食べることが大好き。富=食への執着があまりない。でもお菓子は好き。

—趣味は

川=自転車、絵を描くこと。地元に来てから、相方の似顔絵は100回位描いてます。富=読書とテレビゲーム。週刊ジャンプやマガジンなど、漫画はほぼ毎日読む。好きな作家は、東野圭吾や伊坂幸太郎。

—仕事以外の関心事

川=AKB48。プロモーションビデオ「上からマリコ」の斬新なダンスにシビレた。富=ザスパ草津。来年こそJ1行きますよ。

—気分転換は

川=真夜中の散歩。昼間じゃだめなんです(笑)。富=アロマオイル。加湿器は2種類持ってます。

—芸人でなかったら

川=救急救命士。富=IT企業の会社員か警察官。

—長所短所

川=常に平常心。心がガンと揺れることはあまりない。短所は意固地。富=明朗快活。短所は負けず嫌いであまのじゃくなとこ。

 

取材後記
片やほっそり、片やがっしり。「お互いリスペクトしているところは?」と問えば、富所さんは「天性のお笑いセンスと笑いに対する真摯な姿勢」と直球ストレート。一方の川島さんは「人間性というかキャラは最高。でも芸人としてはビミョ〜」と変化球を放り投げる。体型も言動もまさに凸凹コンビだ。時には取っ組み合いの喧嘩もするというが、相手への信頼や愛情があるからこそだろう。会話を聞いていると、腐れ縁、いやいや固い絆で結ばれていることがヒシヒシと伝わってくる。地元・みどり市に戻ってから約8カ月。今年も去年同様、仲良しコンビは県民200万人の心に笑顔と元気を届けてくれるに違いない。

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