佐々木ワールド[7月12日号]

7月に入り、各テレビ局で夏ドラマがスタートした。話題作が多い中、「これは見ねば」と心に決めているドラマがある。人気漫画家・佐々木倫子さんの同名コミックを実写化した「Heaven?~ご苦楽レストラン~」だ。

初期の「ぺパミント・スパイ」やヒット作「動物のお医者さん」、近作「チャンネルはそのまま」など、高校生の頃からずっと愛読している漫画家なので否が応にも期待は高まる。

佐々木さんの作品はどれもコミカルでシニカルでシュール。クスっと笑える中に含蓄あるセリフが挟み込まれており、「そうだよな」と共感したりジンときたり。レストランを舞台にした「Heaven?」もしかり。コメディ要素てんこ盛りでハチャメチャだが、サービスの極意や、働くことの本質を突くセリフが次々と繰り出され小気味よい。

変わり者の女性オーナーが、ある従業員に「レストランで一番大切なことは距離感よ」と伝えたかと思えば違う従業員に「非日常よ」と返答したり。挙句の果てには「酒がたくさん飲めることよ」と言い放つ。スタッフは困惑するが全て大切なこと。業種は違えど、仕事をする上で多くのヒントを与えてくれる。

9日にスタートした第1話は原作同様、登場人物たちの掛け合いがテンポ良く飽きさせない。特に従業員のオーナーに対する「諦観」の笑みが秀逸。強烈な佐々木ワールドを壊すことなく、ドラマならでは独自性をどこまで出せるか。第2話も楽しみだ。

(中島美江子)

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