子どもたちを天災から守りたい!

原市小児童にヘルメットを手渡すメンバー(左から3人目が茂木さん)

安中ヘルメットプロジェクト 今月から市内全小学校に配布スタート
ジーフリーク・ボーカル茂木洋晃さんら有志がボランティアで実施

火山の噴火や台風などの天災時に頭にかぶるヘルメットを地元の子どもたちに贈る「安中ヘルメットプロジェクト」(以下、A.H.P.)は、ロックバンド「G‐FREAK‐FACTORY(ジーフリークファクトリー)」のボーカルで安中市出身の茂木洋晃さん(45)が代表となり今年の元旦に始動したボランティア活動だ。オリジナルTシャツの販売収益で購入した防災ヘルメットの、市内の全小学校への配布が今月から始まった。プロジェクトのきっかけや、配布に至るまでの動きを紹介する。                 (上原道子)

AHPが寄贈するヘルメット

コロナ禍経てようやく始まった配布

安中市原市小(須賀博之校長)で14日、1、2年生へのヘルメットの配布が行われた。「浅間の噴火や台風など大きな災害が起きないとも限らない。使う日の来ないことが一番だけど、みんなのそばに、お守り代わりに備えておいて欲しい」と思いを語る茂木さんに、集まった計202人の児童は真剣に耳を傾けた。メンバーから直接ヘルメットを手渡された須藤稜平さん(2年)は、「固くて強そう。かぶってみたら軽かった。色や形がかっこいい」と喜んだ。同校の須賀校長は、「寄贈はありがたい。地震や火災の避難訓練で使うなど活用法を色々検討していきたい」と話す。

今春、寄贈開始を目前にコロナが流行し、計画の練り直しを迫られたが、今月1日の臼井小を皮切りに、市内全12校、2360人にヘルメットを届ける活動がようやくスタート。茂木さんは「感極まっています。ヘルメットを手に取った子どもたちの笑顔や声が燃料になり、次の活力につながっていると感じます」と語る。

実用性よりもメッセージとして

発起人である茂木さんの故郷は安中市松井田町。これまで天災が比較的少ない地域で暮らしてきたが近年、全国各地で頻発する自然災害に危機感を抱くように。昨年の台風19号では同市内でも避難指示が発令されるなど安全が脅かされた。そこで、市民、特に子どもたちに防災意識を高めてもらおうと同プロジェクトを発案。「実用性よりも、『大切な命を守って』というメッセージを届けることを重視し、あえてかさばるフォルムで存在感ある『ヘルメット』にしたのです」と力をこめる。

市内在住の29歳~46歳の男女10人で今年1月から活動を開始。その後も賛同者が増え、現在約20人が中心となって活動を支えている。

旧坂本小の教室での動画撮影風景

趣旨伝える動画 廃校でロケ

A.H.P.の趣旨に加え、へルメットの使い方などを解説した動画も制作し、ヘルメットと一緒に各校へ配布している。

動画の撮影は9月末、市内の旧坂本小の教室や校庭で、メンバーら18人により行われた。同市観光大使でフリーアナウンサーの竹下裕理さんと茂木さんが事前にナレーションを録音。先生と生徒役を演じるメンバーが音声に合わせ動きを確認しながら、収録に臨んだ。

Tシャツ販売収益 全額ヘルメットに

販売しているTシャツは、胸に「ANNAKA CITY」と書かれたシンプルなデザイン。市内在住の酒屋兼デザイナーの高野領翼さん(44)は、「もともとは安中を盛り上げるイベント『the安中会』のために考案したものですが、地元の子どもたちに還元されるという最高のストーリーができました。胸に『安中愛』を持つ人が沢山いると思うと嬉しい」と語る。

購入者が安中を訪問するきっかけにもしてもらうため、あらかじめウェブ上で申し込み、高野酒店または安中観光機構で直接受け取ってもらう仕組みにした。収益の全額をヘルメットの購入にあてる。

Tシャツは1枚2500円、3色5サイズ(サイズにより完売の場合あり)。来年1月からはラインナップを変更するとともに、通販も視野に販売を強化していくという。

10月16日現在の販売総数は1140枚。達成まであと約1200枚だ。茂木さんは「必ず成し遂げると決めて始めた。完全配布まで仲間と一緒に走っていきたい」と意気込む。

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