榛嶺の学舎に育まれた才

「渋川高校出身作家展 榛嶺の学舎に育った作家たち」

多彩な作品が並ぶ展示会場

会場に入ると、まず目に入ってくるのは、写真やプリントされた言葉の並ぶ作品です。このコーナーは、コピーライターの一倉宏さん、テレビプロデューサーの安達元一さん、写真家の小林修さん、アートディレクターの丸橋桂さんの仕事を紹介しています。皆さん都会の第一線で活躍している方々です。特に一倉さんの仕事は、私たちがよく知っている言葉をたくさん、生み出していて「この言葉もそうなの!」と驚きを覚えます。

群馬県立渋川高等学校は、榛名山麓の東側にあります。坂東太郎の異名を持つ利根川を挟んだ向こう側には、雄大な赤城山…この大自然は高校時代を渋川の街で過ごした者たちにとって、その後の人生の中で幾度となく思い起こすことのある郷愁をそそる景色になっていると思います。

そして、展覧会のタイトルにある「榛嶺(しんれい)」という言葉は、榛名山の麓で学んだ彼らには馴染みがあり文化祭や文集などでも使われ、校歌の2番の冒頭では「学舎は 榛名のふもと~」と歌われています。また、生徒らの雰囲気や校風を語っているかのように思えるのは、校歌の冒頭「自由の子 民主の民ぞ~」です。この印象深い歌詞は、良い意味で自由奔放に学ぶことを許された証かもしれません。

人は、どこかの土地で生まれ、学び、育み、それぞれの道を歩んで行きます。今回、創立100周年を発端に動き出した本展は、文化・芸術に携わり各界で活躍する人々へと話しが伝わり同窓生の繋がりによって、多岐にわたるクリエイティブな仕事に出会うことができました。

会場では、絵画、彫刻、工芸、デザインなど総勢37人の同窓生の活躍ぶりをご覧頂けます。そして、この同窓生たちを繋ぐきっかけには、恩師の存在もあります。なかなか出身高校で同じ分野で活躍する仲間で集うことは難しいと思いますが、同窓という輪は、新たな繋がりにもなるのではないかと希望の光を見させてくれています。

 

渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館 学芸員
須田 真理 さん

女子美術大学大学院修了。00年12月開館の渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館開設準備から携わる。現在、常設展や企画展などを担当

■渋川市美術館(同市渋川1901・24)■0279・25・3215■11月22日まで■午前10~午後6時(入館は午後5時半まで)■火曜休館(祝日の場合はその翌日)■入館料一般300円、中学生以下と65歳以上の方、障害者手帳をお持ちの方は無料

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