10日遅れの開幕[7月20日号]

職務上、催しで挨拶させていただくことがあります。なかでも夏の高校野球は、選手や家族、友人、ファンが並び、テレビ中継もあって、最も緊張します。群馬大会開会式での挨拶は今年で3回目でしたが、やはり同様で、なにより内容に悩みました。

群馬と同じ今月7日に開幕予定だったのは、全国56大会のうち23大会。前夜、西日本の8府県に大雨特別警報が出て、すでに9大会が延期を決めていました。7日早朝の時点では豪雨被害の情報は断片的で、現場の混乱と重大な事態が推測できました。

一方、群馬大会は、小雨の中でしたが式典を行えました。その幸運に感謝する気持ちを、挨拶に込めました。後に分かりましたが、被災地はまさにその時間帯にも、土石流や河川の氾濫に襲われていたのです。

犠牲者数は、17日午後時点で223人。被害の全容はまだ分からず、幹線道路の寸断や断水など、都市機能のマヒも続いています。なかでも被害甚大な広島県で17日、大会が開幕しました。豪雨災害がなければ、群馬と同じ日から熱戦が始まっているはずでした。

選手宣誓をした安芸南高校の主将は、自宅近くに土砂や濁流が流れ込みました。行方不明の友人を捜して土砂をかきわけ、重い土を運んでからのキャッチボールに、無力感も抱いたといいます。それでも練習を再開し、最後の夏にかける。一回きりのかけがえのない大会だから、乗り越え挑戦すると力強く述べていました。こうした熱い思いで積み重ねられた100回の大会の歴史に、ただ感謝するばかりです。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)