群馬のおいしいお米で  食卓も地域も盛り上げよう

実りの秋。新米の販売が始まりました。県内では各地で米作りが行われていますが、特に北毛地域や伊勢崎では、地域が一丸となって農家の支援や設備投資に力を注ぎブランド化を進めています。今週は、米の各種コンクールで高評価を受けている雪ほたか(川場)や、昨年デビューした嬬恋米(嬬恋)をはじめ、さくや姫、花ゆかり、月あかね、稲姫米、小松姫、水月夜、ミルキーシェリー86の、県内9つの地域ブランド米を紹介します。

米の品種と銘柄

「コシヒカリ」や「あきたこまち」などは、国に登録されている米の品種名で、国内で約900品種(2020年10月現在)に上る。このうち、農産物検査法に規定された品種が都道府県ごとに定められており「産地品種銘柄」と呼ばれる。群馬県では朝の光、あさひの夢、キヌヒカリ、コシヒカリ、ゴロピカリ、さわぴかり、ひとめぼれ、あきだわら、いなほっこり、にじのきらめき、はいほう、ミルキークイーン、ミルキープリンセス、ゆめひたち、ゆめまつりの15の品種が指定されており、検査機関が行う米穀検査に合格するとその産地・品種・産年を表示できる。検査を受けない米は「その他の品種」と表示することになっている。

ブランド米とは

一般に「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」など広く評価されている「おいしい米」や「高価格の米」などを「ブランド米」と呼ぶことが多いが、確固とした定義はない。群馬県では、一定の基準を設けクリアした米だけを地域ブランド品として商品化する団体や個人が増加。食味値の高い米だけを選りすぐり、オリジナルブランド米として価値を高めていこうとする動きも活発化してきた。食味とは、食味計という機械で水分、たんぱく質、アミロース、脂肪酸の成分量を測定し総合的に評価した数値。国産米の標準的な食味値は65~75と言われている。

おいしくなった群馬のお米

昨年の「米の食味ランキング」(一般社団法人日本穀物検定協会主催)で、中之条・高山・東吾妻・みなかみ・沼田・川場の北毛6市町村の生産組合や企業などが2020年に生産したコシヒカリが11年ぶりに最高評価の「特A」を獲得した。審査員が白飯を試食して味や香り、見た目などを5段階で評価するもので、全国154銘柄の出品のうち53銘柄が特Aに。東北などの米どころでも獲得できなかった地域があり、群馬の米も名産地に負けずおいしいことが証明された。このほか、新米のおいしさを実食鑑定によって競う世界最大の米のコンクール「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」(米・食味鑑定士協会主催)には、毎年全国から多くの農家が出品。県内にも毎年のように金賞を受賞する農家があり、米づくりに取り組む上での励みとなっている。

幻のおいしさを村全体で
雪ほたか/川場

「幻のおいしさ」と言われる川場村産コシヒカリ「雪ほたか」。米は白くてつやがあり、炊き上がるともっちり、ふっくらと、つやつやして、上品な味わいが口に広がる。宮中へ献上されている米としても知られる。

国内最大級の「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」では、全国でも例を見ない通算12回の金賞を受賞している群馬が誇る高級米だ。

米が生産されるのは、日本百名山である武尊山のふもとにある川場村。ミネラルたっぷりの良質な天然水や大きな寒暖差、地形、土などおいしい米が育つ条件を兼ね備えている。

雪ほたかは、「川場村の美しい田園風景を後世に継げていくことが使命」とビジョンを掲げる株式会社雪ほたか(川場村生品・小林政幸代表取締役)によって生産される。初めは20軒ほどの農家が集まってスタートを切ったが、2005年に組合、11年には株式会社となり、現在は約70軒の農家構成員が「雪ほたか」を丹精込めて減農薬で栽培する。今年度の作付け面積は約60㌶、10月中旬にすべての刈り取りが終了。右肩上がりの生産量は今年過去最高の約260㌧になった。価格変動もなく安定供給を維持する。

その秘密を同社専務取締役の星野孝之さんは、「村全体で名産地を作ろうというチーム力が非常に高いので、ブランド化が進みました。農家と村とが官民一丸となって取り組んでいます。当社敷地内の川場村ライスセンターでは、14年に低温貯蔵庫設備もでき、もみすり、選別、乾燥、保存、精米などを一定の水準に保っているのがおいしさの理由です。群馬のお米は全国的な評価が低いように思いますが、名米がいくつもあるので、ぜひ、地元のお米を食べて群馬を盛り上げてほしいです」と話す。人気の道の駅「川場田園プラザ」直売所やレストランなどで食べた消費者からダイレクトに、味の感想が寄せられるのを、生産に生かしていると同社は話す。群馬の川場村で「雪ほたか」が日本一を目指して進化している。
【販売所】川場田園プラザファーマーズマーケットほかデパートや量販店で販売
川場田園プラザファーマーズマーケット=利根郡川場村荻室385(0278-52-3712) 直売価格は2㎏1580円(税込)、5㎏3900円(同)。

雪ほたかを食べられる
おにぎり「かわばんち」
「雪ほたか」のうまみをしっかりと気軽に味わえるおにぎり専門店が「かわばんち」。川場田園プラザ店の他、昨年オープンした高崎駅のイーサイトにある高崎駅店でも購入できる。具は豪華なシャケいくら(380円税込)、ぴりっと辛いかぐら味噌(250円同・以下同価格)、定番人気のシャケ、梅、おかか、コンブ、高菜、ツナマヨ、唐揚げなど。
■ 川場田園プラザ店(0278-52-2596)
■ 高崎駅店(027-388-0593)

甘み、粘り、ツヤの3拍子
花ゆかり/中之条

中之条おいしい米づくり研究会(外丸茂樹会長、会員数51人)では、食味値80以上の米だけを「花ゆかり」というブランド名で販売。昼夜の寒暖差が大きい地域であることから、甘みと粘り気があり、冷めてもおいしい米ができるという。低農薬、低化学肥料で生産。中身の米は同一品種・生産者・生産年の米100㌫で構成され、均一で混じり気がないためツヤがある。「花ゆかり」の名の由来は町のキャッチコピー「花と湯の町」をもとに「湯」「香」「里」の音から。同研究会事務局同町農林課=0279-75-8844)。
【販売所】道の駅「霊山たけやま」、中之条ガーデンズ、ふるさと交流センターつむじほか

食味コンクール金・世界最高米にも
さくや姫/東吾妻

良質な水、東吾妻町萩生地区では、地元の浅間神社に祀られている「木花開耶姫(このはなのさくやひめ)」から命名した地域のブランド米「さくや姫」の栽培に取り組んでいる。パッケージのデザインは萩生出身切り絵作家・大塚久枝さんが手掛けた。農事組合法人「さくや姫」(大塚秋則代表理事)に所属するのは約40人。各農家によって、コシヒカリ、ひとめぼれの、いずれかの単一品種で栽培する。食味値80以上、農薬や化学肥料を半分の量で作る特別栽培米。米・食味分析鑑定コンクール国際大会では何度も金賞受賞。また、「世界で最も高いお米」としてギネス認定された「世界最高米」の原料に選ばれた実績を持つ。問い合わせは大塚代表理事0279-69-3657)。
【販売所】道の駅「あがつま峡」、同「八ッ場ふるさと館」ほか

粘りが特徴の低アミロース米も
月あかね/高山

「月あかね」は高山村商工会が企画した地域のブランド米。2011年に同村月あかね生産組合(田中孝雄組合長、組合員18人)を組織。赤根(あかね)峠のふもとの田園と上弦の月との美しい情景や、実りの秋の待ち遠しさをイメージした名前で、外装の絵と文字は農家の後藤明宏さんが手掛けた。特別栽培米や、無農薬、無肥料、天日干しで育てた自然栽培米(数量限定)など、安心安全にこだわる。各農家はコシヒカリ、ひとめぼれ、ミルキークイーン、ミルキープリンセス(低アミロース米)など異なる品種を栽培するが、単一品種で食味値80点以上のものを「月あかり」として販売する。同商工会0279-63-2200)。
【販売所】道の駅「中山盆地」

大粒で高品質
水月夜/みなかみ

みなかみ町は地場産業活性化のため、2012年にブランド米事業を立ち上げ、以来、美味しい米作りを推進してきた。水月夜の名は「水田に映る月夜」という意味で、町民による公募から選ばれた。みなかみ町地域ブランド認証品「みなかみの珠玉」取得第1号商品で、ふるさと納税返礼品にもなっている。現在は町の農家が作る「水月夜生産組合」(本多義光組合長)が一貫して品質管理、保管を行い、粒の形がきちんと整ったもの、大粒でふるい目1.8mm以上のもの、集荷時・精米時に測定した食味値が86点以上のものなどの基準に適合したものだけが水月夜と呼ばれる。お米コンクールで数々の賞を受賞。同組合(0278-64-0449)
【販売所】道の駅「みなかみ水紀行館」、同「月夜野矢瀬親水公園」内の月夜野はーべすと、同「たくみの里」内豊楽館直売所

真田用水が育む極上のコシヒカリ
小松姫/沼田

沼田市白沢町の金井農園(金井繁行代表)が販売する食味値83点以上の「真田のコシヒカリ 小松姫」は、初代沼田城主・真田信之の妻の名を冠し2014年に誕生。河岸段丘の台地上にあり水を引くのが困難だった沼田の領民を救うため真田家が整備したという「真田用水」を使って栽培する。昼夜の寒暖の差と武尊山のきれいな雪どけ水が、美味しい米を育む。「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」や「お米日本一コンテスト」で何度も金賞に輝いている。中でも人気の「小松姫(プレミアム)」は食味値85点以上。同農園090-4612-8734)。
【販売所】道の駅「白沢」、食の駅ぐんま吉岡店・前橋店・前橋南店、高崎髙島屋ほか

小松姫の幼名冠した厳選米
稲姫米 沼田

沼田市産コシヒカリ「稲姫」は、2014年に誕生した、良質なコシヒカリの厳選米。同市薄根地区とその周辺で稲作を行う農家43軒でつくる「稲姫会」(堀江正司会長)が生産。県が定めた特別栽培基準に沿って農薬の使用を極力抑えて栽培する。真田信之の妻・小松姫の幼名「稲姫」から命名。食味値を83以上、低温貯蔵するなど多くの厳しい基準をクリアした米だけを「稲姫米」として出荷する。昼夜の寒暖差から生まれる甘みと香りが特徴で冷めてもおいしいと、市内の弁当店などでも使用されている。パッケージを順次新しくしていくという。同会窓口(稲姫ファーム=0278-23-1203)。
【販売所】農産物直売所「稲姫ファーム」ほか

愛妻の村で昨年誕生 皇室献上も
嬬恋米/嬬恋

米作りの歴史200年以上という嬬恋村で昨秋デビューした「嬬恋米」は、嬬恋村おいしい米づくり研究会(小嶋良一会長、会員数13人)のブランド米。品種はひとめぼれで、高原特有の昼夜の寒暖差が引き出す甘みとさっぱりとした食感が特徴。粘り、甘み、うまみ、香りのバランスが良く、昨年の米・食味分析コンクール国際大会では県内唯一、金賞を受賞した。また、昨年は宮中行事「新嘗祭」に県を代表して献上した。村名の由来となっている日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の愛妻伝説をモチーフにしたロゴには、吾妻川や草津白根山、四阿(あずまや)山、浅間山など地元の風物を盛り込んだ。ふるさと納税返礼品にも。同研究会事務局(同村農林振興課=0279-96-1256)。
【販売所】農産物等直売所「あさまのいぶき」、村内スーパーほか

生産者の思いが生んだ美味しいお米
ミルキーシェリー86/伊勢崎

ミルキークイーンという品種の米に「食味値86以上」という品質基準を設けブランド化。甘味が強く、もちもちした食感。炊き立てはもちろん冷めても美味しい、という特徴を持つ。同市の「農&食」戦略会議・米麦部会に所属する5軒の農家が作る。2013年、「地元産の美味しいお米を」と、同会長の膳尚希さん(39)が挑戦を始め、共感した仲間たちが続いた。膳さんは「昼夜の寒暖差が少ない伊勢崎で、食味値の高い米づくりは無理だと言われていた。高品質の基準である80を超えた時、市役所の人も一緒に泣いて喜んでくれた」と話す。今年の販売は12月1日から。詳細は市の広報、ホームページで公表する。問い合わせは同市農政課0270-27-2757)へ。
【販売所】農産物直売所「からか~ぜ」「からか~ぜまゆの郷」

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