群馬のハチミツ

早春から次々に咲くウメやサクラ、菜の花、アカシアなどの花からミツバチが集めて作るハチミツ。ビタミンやミネラルなどの栄養素を豊富に含む健康食品でもあり、風味があっておいしくトローリとしたミツバチの贈り物です。群馬県は蜜蜂飼育戸数が308戸で全国10位(2021年、農林水産省畜産振興課調べ)。群馬の豊かな自然が生み出したハチミツは、採蜜の季節を迎えています。県内の養蜂場やオリジナルブランドが手掛けたハチミツや加工品他、まちおこし事業などを紹介します。
※免疫力が弱い1歳未満の乳児には与えないようにしましょう
小野フルーツ園(沼田市横塚町・小野勝司農園主)のサクランボ樹。6月にはサクランボ狩りと同時に同園で採れたハチミツも販売。小野さんは、「自然からいただくハチミツは味が毎年違うので、その違いも楽しんで」と話す

ミツバチのこと、ハチミツのこと教えて

「小林養蜂園は、1954年、父の代から続けています。ここでしか味わえないハチミツをお試しください」と語る小林社長

県内で多数のミツバチを飼育し、採集量も多い小林養蜂園(沼田)の小林豊社長(66)に、話を聞きました

―ミツバチはどのように蜜を集めるのでしょう?
ミツバチは、「ぶーんぶーん」と羽音をさせ、花から蜜を集めようと懸命に仕事をしています。ハチの種類は、輸入されて家畜化した西洋ミツバチです。飛ぶ範囲は約2㎞。1つの巣箱には約4万匹のハチがいて、そこから飛び出し、花から花へ蜜を集めます。1つの花から取れる蜜はわずかで、足に花粉を付けて飛び回ります。果樹園はハチがいることで受粉が進み果実が実りますし、養蜂園はハチミツが取れて双方とも良い関係になり、豊かな自然の生態系になっています。

―ハチミツの種類について教えてください。
ハチは遠くの花まで蜜を集めに行くのではなく、近くの花へと効率良く飛んでいきます。箱の近くにサクランボの花が咲いていれば、別の場所に花が咲いていても、近くのサクランボに来ます。だからサクランボの花だけの「単花蜜」が採集できるんです。そのためには、都度、巣の中を掃除しないといけません。一旦、きれいにしてから、今度はリンゴやブルーベリーのハチミツを採蜜します。何もしないでおくと、蜜が混じってしまう。何の花か分からないものは、「百花蜜」といって販売します。

―小林さんの養蜂園では、年間でどのような採蜜をしていますか?
12月下旬から1月いっぱいはハチを疑似冬眠させ、2月は榛名や箕郷梅林に移動させます。ハチが増殖してくる3月下旬には、桜の蜜を集め、4月には、沼田でサクランボ、桃、リンゴ、ブルーベリーを採蜜します。その後、アカシアが続きますが、昨年は花がすぐに散ってしまい収量が少なくて苦労しました。6、7月は、片品方面に移動して、トチ、クリの蜜が採れます。それ以降も採蜜できますが、ミツバチの冬越しのために残してあげます。みんなもらっちゃうとかわいそうですからね。群馬や沼田には、養蜂場やハチミツ専門店が多数ありますので、ぜひお立ち寄りください。

 

小林養蜂園
花ごとに単独の蜜を採って加工せずに

人気のアカシアやトチ、色の濃いソバや希少なキハダ蜜などの単花蜜。このほか、季節の百花蜜も販売。なお、JR東日本おみやげグランプリ2019で金賞を受賞したラングドシャ「HONEYLOVER」(つつじ庵)も同園のハチミツを使用している

沼田インターから国道120号を尾瀬方面に向かって右側にある小林養蜂園。昨年5月にリニューアルした赤い屋根の新しい直売所では、群馬で採れたハチミツを販売している。

アカシアやトチなど花ごとに採集する「単花蜜」を中心とした30種類以上のハチミツが店内に並ぶ。輸入品とは違い風味豊かでそれぞれ異なる味わいと色合いが魅力だ。

季節ごとに沼田や県内各地に咲く花のハチミツを集める。今年の3月は、ほんのりした香りが広がる希少な「ウメ」のハチミツが採れた。現在は、「サクラ」のハチミツが搾りたて。その後、サクランボの名産地である沼田の農園で採れた甘~い「サクランボ蜜」や一番人気の「アカシア蜜」、色も味も濃厚な「トチ蜜」や「ソバ蜜」などが順次採れる。

同園のハチミツは、全て加工しない非加熱のもの。自然のままなので、ビタミンやミネラル、酵素など栄養が豊富で殺菌作用がある。金子裕工場長は、「何度も『ろ過』した高品質の商品です。自信を持って天然のままをお届けします」と説明してくれた。

■沼田市利根町大原1617-2   電話:0278-56-2401
  HP:  https://www.8-3-2.com/ ※通販あり
  ※元旦以外は無休

トネノワ
「荒牧さん」のハチミツの美味しさ広めたい

定番の百花蜜(300ml、税込1700円)桜と藤が感じられるフローラルな香りで細やかな結晶。バタートーストに合う

「トネノワ」は、2014年に誕生した太田市の天然ハチミツブランド。群馬を流れる利根川と「輪」という言葉に自然循環の意味を込める。代表の相澤朗雄さんが、実家にあったハチミツのおいしさに衝撃を受け、新ブランドとして売り出した。

代々養蜂を営む家系に育ち、ミツバチとともに婿入りして40年以上というベテラン荒牧友治さん

そのハチミツの製造者は、同市新田地区に住むベテラン養蜂家・荒牧友治さん(72)。より自然で安全なハチミツ作りを目指し、手間を惜しまず丁寧な仕事を行う。熟練の技と勘によって最適なタイミングを見極め採取した蜜は、香り高く濃厚な味わいで、リピーターやコアなファンも多い。相澤さんは「県内外、色々試しましたが、荒牧さんのハチミツが一番。多くの人にこの美味しさを知ってほしいですね」と話す。
■太田市西新町85-10 電話:0276-56-4871
   HP:https://www.tonenowa.com/
  インスタグラム:@tonenowa

ルオムの森
場所による味の違い楽しんで

百蜜「春かなる丘 Ⅰ」(160g 税込2100円)。桜と藤が感じられるフローラルな香りで細やかな結晶。バタートーストに合う

長野原町北軽井沢の自然体験施設「ルオムの森」で販売しているのは、非加熱で無添加のオリジナル生はちみつ「百蜜(ももみつ)」だ。キャンプ場SweetGrassをはじめとするアウトドア事業や林業などを手掛ける「きたもっく」(福嶋明美代表取締役)が、「北軽井沢の豊かな自然環境を百年先まで守り続けながら美味しいハチミツを提供していきたい」と、養蜂事業をスタート。

有機農家・岩田農園がつくる新にんにく、新玉ねぎ、百蜜で作った万能だれ「蜜のうまだれ」(300ml、同1000円)は、しょうゆとみその2種

蜂が健康であるために砂糖給餌はせず、自然環境にも配慮した養蜂を徹底。地元をはじめ吉井や榛名など県西部地域11カ所で、標高の低所から高所へと巣箱を移動、移り変わる花の開花に合わせて採蜜後、新鮮なうちに瓶詰めする。同社の福嶋悠貴さんは「場所や時期による味の違いを楽しんで」と話す。地元の酒造会社や工房などとコラボした蜂蜜酒やビールのほか、調味料など多様な加工品も開発している。
■吾妻郡長野原町北軽井沢1984-239 電話:0279-84-1733
  HP:https://luomu.thebase.in/
 インスタグラム:@momomitsu_honey

坂井養蜂場
黄金の一滴をびん詰め

奥利根の雄大な自然の中から採れたアカシアハチミツ

坂井養蜂場(近藤みゆき代表)は、奥利根の大自然の中、1947年に、代表の伯父、坂井鉄男さんが創業した養蜂場。以来、一貫してはちみつ製品の生産、販売に携わっている。ハチが集めた「黄金の一滴一滴」を添加物を使用せず、びん詰めし、純度100%の天然ものとして販売する。さらに、ゆずの皮やナッツをハチミツで漬け込んだ商品も人気。

近藤代表は、ハチミツをもっと楽しんでほしいと様々な利用方法を提案する。「トーストやホットケーキ、ヨーグルトはもちろん、カマンベールチーズ、ブルーチーズにかけてもおいしいです。また、コーヒーや紅茶、リンゴ酢などの飲み物だけでなく、すき焼きや煮魚、酢豚、カレーに入れると、お砂糖の代わりにもなりヘルシーです。保湿効果があり、ハチミツパックとしても使えますし、ペットの毛並みの艶出しにもなります。健康にも美容にも効果があるハチミツをお試しください」と語った。
■沼田市高橋場町1885-10 電話:0278-24-4134
HP: https://sakai-hachimitsu.jp/

※ネット通販あり

赤城山麓養蜂場
クリームハチミツや蜜ろうクラフト

結晶ハチミツを練り上げた「クリームハチミツ」は、クラッカーの上に乗せても流れずおいしく食べられる

赤城山麓養蜂場は、12年前に建設業から転身した高橋健一さん(69)が、自然豊かな赤城山麓で採れたハチミツを販売している。養蜂を始めた当初は、何も分からず苦労も多かったというが、巣箱の製作も得意の上、作業場を製造場に変えて、ハチミツの勉強を重ねながら販売するようになった。

ハチミツは、赤城南面や渋川などで、サクラや藤、アカシア、百花蜜などを採収している。赤城千本桜のイベントでは、サクラやアカシア蜜に人気が集まったという。また、秋冬は結晶になって白く固まったハチミツを独自製法で練り直した「クリームハチミツ」が人気。蜜だけでなく、最近ではハチの巣の蜜ろう細工も始めた。キャンドルや「花のクラフト」が大好評だ。

■前橋市勝沢町192-7 電話 : 027-269-7979
HP: http://mitsubachido.com/

  インスタグラム: @mitsubachido

まえばしハニープロジェクト
市中心街でミツバチを育てハチミツを作る

ミツバチと自然が共存できる前橋市を目指そうと、市中心街でミツバチを育てハチミツを作る「まえばしハニープロジェクト」が、2019年4月にスタート。プロジェクトの発案はFMGUNMAパーソナリティの内藤聡さん。市内に本社を置くコーエィ株式会社をはじめとした企業の資金提供を受け、テルサの指定管理者、公益財団法人前橋市まちづくり公社が実施する。

現在、前橋テルサ10階の中庭に設置した養蜂箱で、約2万匹のミツバチを飼育しており、日々の掃除や養蜂箱の点検など、ミツバチの世話は、地元の養蜂組合の指導を受けてテルサの職員らが行っている。スタートから2カ月後には約7㍑のハチミツが採れ、以来毎年、5月の終わり頃と秋口に、ハチミツの採取を行っている。ほかにも、広く活動を知ってもらおうと様々なイベントを実施。採れたハチミツを使ったスイーツの販売や、小学生を対象にした養蜂体験教室、ミツバチの蜜源確保として、花の苗の配布や寄せ植え講座なども行っており、内藤さんもイベントに参加し、ラジオ番組の中で活動内容を報告している。

この春から、前橋総合運動公園にも養蜂箱を設置し「まえばしハニープロジェクトin MAESOU」を開始。前橋テルサ館長の行方正さんは「ハチたちは色々なことを気づかせてくれます。この活動をしっかりと受け継ぎ、次に繋げて行きたい」と話す。問い合わせは、同公社027-231-3211)へ。

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