群馬県への移住 増加!  「人気者」になった理由は?

近年、群馬県に移住する人が増加している。移住希望者に対するアンケート「2021年の移住希望地ランキング(窓口相談)」(NPOふるさと回帰支援センター調べ)では上位にランクイン。群馬県がなぜ、移住地として人気となっているのか。実際に移住してきた人や、県、都内の相談機関などに聞いた。   (谷 桂)

コロナきっかけに急上昇

21年度の移住支援金の支給実績79件のうち34件と最多の高崎市

 

 

 

 

都道府県別魅力度ランキングでは、毎年低迷している群馬。ところが、とあるランキングで全国5位になった。それは、全国の移住希望者を支援するNPOふるさと回帰支援センター(東京都千代田区有楽町)が今年2月に発表した「窓口相談者が選んだ移住希望地ランキング(2021)」。19年には15位だったが、20年には10位に、21年にはさらにアップして5位と過去最高を記録した。

ここ数年で「人気者」となった群馬に一体何があったのか。

「ぐんま暮らし支援センター(ふるさと回帰支援センター内)」相談員で高崎市出身の藤田正治さんによると、「最近の傾向として都心暮らしの30代前後の方が、出身地とは別の地域に住む『Iターン』を希望するケースが増えています。東京から群馬までアクセスしやすいし、物価が安く、災害も少ない。さらにコロナ以降、リモートが進んだことも原因ではないでしょうか。相談に来た方には、群馬を実際に訪れて体験してほしいと伝えています」と話す(相談は要事前予約)。

ちなみに希望地ランキングの1位は2年連続で静岡県。2位以下は福岡県、山梨県、長野県の順。北関東の隣県、栃木県についても20年は13位だったが翌年は9位に浮上している。

移住支援金件数 10倍増

移住という大きな決断に心強いのが、「移住支援金」。19年からは県内すべての市町村で、移住支援金事業を実施している。東京圏から群馬に移住して、一定の条件を満たせば支給される。

県によると支給実績は、19年度が2件、20年度が8件だったが、21年度は79件(内訳:高崎市34件、前橋市13件、みなかみ町6件、桐生市4件など)と、前年度に比べ約10倍の件数に跳ね上がった。

今年度は、2人世帯だと100万円(単身60万円、18歳未満の子どもがいる世帯は30万円追加)。21年度からは、仕事が「テレワーク」、地域と多様に関わる「関係人口」も新たな対象に加わった(基準は自治体によって異なる)。

「移住」を担当する県の「ぐんま暮らし・外国人活躍推進課 移住促進係」の金井浩二さんによると「コロナを機にテレワークが増えて、群馬への関心が高まった手応えは感じている。転職なき移住も徐々に可能になっているようだ」と話す。高崎市出身で移住や関係人口に詳しい、未来をつくるSDGsマガジン「ソトコト」編集長の指出一正さんは、「群馬は東京へのアクセスがよく、県民の日常生活の満足度も高い。リモートワークの普及で背中を押された群馬ファンが移住している。新しい人と一緒に、群馬の豊かなまちづくりが進むといい」と述べた。

コロナをきっかけに、リモートワークが拡大し、働き方が変化。東京から100㎞圏にある群馬は、自然が豊かで魅力にあふれる移住希望地になった。移住した人と豊かな群馬を作れれば未来が開けそうだ。

移住と転入の違い/別の場所に移り住むことだが、群馬県では、会社の都合で転勤した場合の転入や、大学などに入学して転入した場合は移住とカウントしていない。
関係人口とは/観光に来た「交流人口」以上で「定住人口」未満の人口のこと。地域と多様に関わる人々を指す言葉。※各自治体によって異なる

★群馬への移住を考える人のためのウェブ/「ぐんまな日々」https://gunmagurashi.pref.gunma.jp/

なぜ、群馬に? 移住した人に聞きました

コロナ機に高山村で「里山暮らし」の夢実現
山中麻葉さん(37)

「高山村で自分たちの理想の暮らしを実現したい」と話す山中さん一家

2021年10月、東京杉並区から高山村に移住して来ました。アメリカの移民「アーミッシュ」のスタイルを取り入れたワンピースをオーダーメードできるオンラインショップ「Down to Earth」を夫婦で営んでいます。東京にいた頃、将来は自給自足の里山暮らしをいつかしてみたいと思っていました。コロナになり緊急事態宣言の頃、サラリーマンの夫(武さん=37)が完全にリモートになり、今こそチャンスと、移住先を探し始めました。長野や山梨など人気のエリアも見学しましたがピンと来なくて。以前、前橋のレンガ蔵に来たこともあり、親しみがあった群馬の高山村を夫婦ですっかり気に入り決めました。近くに上毛高原駅もあって東京へのアクセスも自宅から約2時間。庭付き3LDKの住宅の家賃は東京の4分の1に。移住して子どもが生まれ、ライフスタイルは大きく変わりました。今は地元の方とも仲良くなり生活が豊かになったことを大満足しています。

仕事も変わらず 同じ家賃で広い家に
Yさん(28=女性)

2022年1月に東京都新宿区から高崎市に移住しました。実家が前橋で、祖父母の家が高崎だったため親しみがあり、交通面も良いので決めました。リモートの仕事ばかりになったので、東京に住んでいることに疑問を感じたのです。週に1度ほど東京へ行き、他は自宅で編集の仕事をしています。変わらない家賃で家が広くなり、花など植物を育てるのが楽しみな毎日です。実家暮らしのときは感じませんでしたが、群馬の環境がありがたいですね。

故郷になった群馬ライフを満喫
Aさん(40代=女性

2021年7月に、前橋に勤務する夫との結婚を機に東京都目黒区から高崎に移住しました。仕事はリモートと週1、2回東京への通勤を続けています。趣味の陶芸も湘南新宿ラインで鎌倉に出かけます。群馬は野菜が安くておいしく感動。自然が豊かなので、赤城山に登ったり、梅林やツツジを見に行ったり。コンサートも楽しんでいます。先日はソフトボールの試合に行って思いっきり高崎のチームを応援しました。すでに故郷になりつつあります。

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