ウクライナ支援 県内でチャリティー活発化

ロシアの軍事侵攻によって苦境に立たされたウクライナの人々を支援する活動が、県内でも広がりを見せている。西毛地域の寺院で授与している特別御朱印と、ウクライナのアーティストを応援するチャリティー展示を紹介する。(上原道子、谷 桂)

西毛33寺院で御朱印や募金

安中・富岡・甘楽郡を中心とした寺院で頒布している18の特別御朱印。全てを順番に並べると災いを消すお経「消災妙吉祥陀羅尼」が完成する

富岡・安中・高崎・甘楽・下仁田の5市町にある18の曹洞宗寺院では、西隣の国ポーランドに避難しているウクライナ人らを支援しようと、統一デザインの特別御朱印を(1枚300円)で授与している。志納金の全額を、支援物資購入にあてる。

御朱印には、ウクライナの国旗色をイメージした青空と麦畑が描かれ、ウクライナ語と日本語で「ウクライナに平和を」というメッセージが添えられてる。中央には災いを消し去る経文「消災妙吉祥陀羅尼(しょうさいみょうきちじょうだらに)」の一節が書かれ、18寺全てを巡ると経文が完成する仕組みだ。

同御朱印の取り組みに乗り出したのは富岡市上高尾の長學寺・生沼(おいぬま)善祐住職(45)。ウクライナの悲惨な状況が連日のように報道され、多くの人が犠牲になっている様子を目にするにつけ、心を痛めると同時に戦争が身近に感じられるようになっていったという。

「寺として何かできることはないか」。以前から御朱印で様々なチャリティー活動を行っていたことから、今回も御朱印を活用することに。早速、曹洞宗群馬県宗務所第13教区(富岡・甘楽地域)の事務局である永隣寺・堀口元澄住職(63)に相談。隣の第12教区(安中と一部の高崎)の寺院にも広げて呼びかけた。

生沼住職は「御朱印が参拝の証となるだけでなく『支援』にもなる。さらに、現地で亡くなった方の冥福を祈り、避難している人の安心と平和について考えるきっかけになれば」と話す。事務局の堀口住職は、「支援先が目に見える募金。ぜひ、たくさんのお寺を巡って」と呼びかける。受付は今月30日まで。

ポーランドへの避難民に物資を

右からアンドリューさん、長學寺の生沼住職、高野さん

物資の調達は、長學寺と以前から交流がある、ポーランド出身で富岡在住の写真家アンドリュー・クザイさん(38)と高野陽子さん(47)夫妻が担当。ポーランドの都市部には物資が届いているが小さな町は十分でないと知り、何か支援をしたいと思っていた矢先に住職から声をかけてもらい、両者の想いが一致した。現地に住む家族や親戚を通じて必要品のリストをもとに、アンドリューさんがインターネットや電話で、現地に発注する。

物資のお礼の手紙とともにポーランドから送られてきた写真。ウクライナ避難民を担当する役場の職員(左)と支援物資の配布などを手伝うボランティアのウクライナ人が持つ国旗には戦地で戦っているウクライナ軍兵士のサインが書かれている

同第12・13教区では、ほかに15の寺院で募金活動を行う。寄付金は月ごとに集計。4月(8~30日)には御朱印の志納金と合わせて52万2185円の寄付が集まった。だが、時差や生活習慣の異なる現地との連絡は難航。先月末にようやく第1便として、パスタや米、インスタント麺、缶詰、薬などの支援物資を、ポーランド中部に位置するアンドリューさんの故郷、ウッチ県シェラツ郡へ無事届けることができたという。

高野さんは、「第2、3便も順調。先週は県のウクライナ避難民担当者と連絡が取れた。ポーランドへの避難民の数は日に日に増えている上、避難先によって必要なものが様々。要望に応じ手配したり、必要としている物資の数が多い所を優先的に届けられるよう、調整していきたい」と話す。永隣寺0274-67-4329)へ。

■御朱印を授与している寺院など、支援活動についての詳細は同HPhttp://gunma13.main.jp/shien.htm)へ

ウクライナ芸術家を支援したい 5人の作品やっと届く

渋川市出身の藝大院生・福田さん企画 今月25日まで

写真を手にする福田さん

「ロシアによるウクライナ軍事侵攻によって住居や仕事場を失った芸術家を支援したい」と渋川市出身で東京藝術大学大学院の福田周平さん(25)が立ち上げた、ウクライナのアーティストと協力したチャリティ展「ウクライナ芸術支援プログラム―with Peace(平和とともに)」が始まり、今月25日まで渋川市渋川のギャラリー、Ais(アートインスティチュート渋川・福田篤夫代表)で行われる。

この展覧会は、2019年にウクライナのキーウにある国立M17現代アートセンターで行われた国際美術展に、福田さんの父である彫刻家の篤夫代表が参加し、ウクライナのアーティストと友好を深めたことがきっかけとなって実現。交流しているのは、現在もキーウに留まっているセルヒィ・ポポフさん(44)。福田さんによると、防空壕生活をしているポポフさんは、電気の不安定な供給や電波状況が悪い中、パソコンでのやり取りも思うようにいかない状況だ。30~70代のアーティスト5人の作品を輸送経路の状態が悪い中で、ポポフさんが窓口になり、ポーランドやチェコの有志のサポートによって、輸送を試みた。しかし、「A4サイズ」に限定した平面作品は、展示開始の4日を過ぎてもなかなか到着せず、今週6日になって、やっと到着。篤夫代表は、「紆余曲折(うよきょくせつ)の旅をなんとか全うしたこの作品が、本当の宝物のように思えます」と喜ぶ。

到着したティベリウ・シルバシさんとドローイング、オレナ・ドンブロフスカさんのアクリルと黒鉛を使用した宅品、セルヒィ・ポポフさんの写真作品なども展示するギャラリー

送られてきた作品は13点。同時にキーウなどでポポフさんが撮影した写真とリアルに実況コメントなど約40点の合計53点。福田さんは「日本にいる限りは、見えないウクライナ芸術家たちの作品を知ること、そしてキーウ周辺で被害にあった建物や街並み、傷ついた動物たちの状況写真を体験することで芽生える”平和への意識”に出会えるはずです」と呼び掛ける。金、土、日の毎週午後1~6時。入場無料だが、1人1000円以上の寄付を受け付ける。協力者には、アーティスト制作の缶バッジを用意。東京や佐賀にも巡回する。渋川市渋川1763-12の同事務局(080-2085-0432)。

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