日本武道館で華麗なるデビュー

プロレスラー(全日本プロレス)
安齊 勇馬さん

夢かなえ プロレス界へ 「子どもたちの〝憧れ〟になりたい」

全日本プロレス(東京、以下「全日」)に今春、入門した安中市出身の安齊勇馬選手(23)が9月18日、日本武道館(東京)で新人レスラーとして華々しくデビューした。試合では、新日本プロレス(東京、以下「新日」)の重鎮・永田裕志(ゆうじ)選手(54)を相手に堂々とした試合展開をみせた。中学時代からプロレスラーに憧れ、前橋西高、中央大のレスリング部で活躍。故ジャイアント馬場さんが1972年に旗揚げした全日の50周年という節目の年、期待を背負い入団した安齊選手に、夢をかなえた今の心境や、プロレスラーを目指したきっかけ、今後の目標などについて聞いた。

母校・前橋西高校のレスリング部道場でファイティングポーズをとる安齊勇馬選手

「当たって砕けろ」の気持ちで
― デビュー戦を終えて心境は
まずは無事やり切れた点で、ほっとしています。観客やファンの皆さんからも、たくさんの応援やサポートをいただき、心から感謝します。見に来てくれた家族も、ケガ無く終えられて良かったと言ってくれました。

このデビュー戦は、50周年記念で、しかも全日としては18年ぶりの日本武道館開催という大舞台。その上、自分のために入場曲の作曲や生演奏までしていただき、とてもありがたく思っています。曲が流れるとより一層テンションが高まり、「期待にしっかり応えなければ」と、気合も入りました。

― リングに上がった時の気持ちは
入場ゲート裏では、「もうすぐ始まる!」と、ものすごく緊張していました。走ってリングに上がった時は客席を一瞬見た記憶があるだけ。でも、続いて対戦相手の曲が流れてきたら不思議ともう緊張は消えていました。永田選手はIWGP(新日が運営するプロレス選手権)ヘビー級元王者で「ミスターIWGP」の異名を持つ大ベテラン。「当たって砕けろだ! 胸を借りるつもりでやるしかない、やってやるぞ」という闘志に変わっていたのです。声援には制限が設けられていましたが、後で周囲に聞くと、「あんざーい!」「ゆうまー!」などの声が飛び交っていたとのこと。その時は目の前の相手以外、何も見えないし聞こえないくらい集中していました。

― 大ベテランとの試合はいかがでしたか
永田選手のショルダー・アームブリーカー、ミドルキックなどの攻めに対し、自分もミサイルキック(コーナーからのドロップキック)や逆エビ固めなどで反撃。特に、相手の腕をとって投げる「ダブルアームスープレックス」という得意技が成功した時は客席から「ワーッ」という歓声が聞こえて「よっしゃー!きまった!」と興奮しました。

9月18日、日本武道館で開かれた「全日本プロレス50周年記念大会」で対戦相手の永田裕志選手に逆エビ固めをかける安齊選手(写真提供:安齊選手)

でも、最後はナガタロックIIという厳しい決め技にギブアップ。永田選手はさすが技も豊富で上手い。敗戦でしたが、とても良い経験ができました。

一番印象に残っているのは試合終了後、敵として戦った永田選手が自分の手を取り高く掲げて、一緒に四方へあいさつした時のことです。そこで初めて多くのお客さんが自分に拍手してくれていると気付きました。あとで永田選手が自分のことを「将来、全日の柱になれる人材」などと高く評価してくださったのも、本当に光栄に思います。

このような華々しい舞台を用意していただけたこと、今まで「テレビの中で輝いている人」だった方を相手にデビューできたこと、ファンや観客の皆さんにたくさんのエールをいただけたこと、全てに感謝しています。

デビュー戦終了直後に、永田選手(写真右)と握手を交わす(写真提供:安齊選手)

たまたま見たテレビで
― プロレスへの憧れはいつからですか?
小さい頃からスポーツ全般に興味があり、幼稚園と小学校では、4つ上の兄と一緒に空手、野球、サッカーを習いました。空手一筋の父は世界選手権入賞経験者。だから空手を習得させたいとの思いは強かったようです。でも自分はあまり好きになれず、中学では野球部に入り練習に励みました。

ある日、夜中たまたまつけたテレビでプロレスを見て、レスラーの姿に一瞬で魅了されました。「キラキラな服を身にまといライトを浴びて、なんてカッコいいんだろう。あそこに自分も立ってみたい」と。さらに、プロの入門テストの中に「レスリングのスパーリング(試合)」があることを知り、「高校はレスリング部のあるところへ」と決意しました。当然、野球を続けると思っていた親や先生は猛反対。それでも自分は意志を貫き、レスリング部があって家から最も近い前橋西高を受験しました。

入学後は磯部駅から始発列車に乗り、1時間半かけて通学。初めて取り組む競技に最初は戸惑い、きつい練習に辞めたいと思うことも時々ありましたね。それでも顧問の増谷一樹先生の指導のおかげで次第に実力がつき、インターハイにも出場できました。その頃は、プロにこだわるというよりも、試合に勝つ喜びから純粋にレスリングというスポーツを楽しめるようになっていました。そこで、大学でも続けようと思ったのです。

― 全日へ入門したきっかけは
大学では哲学を専攻し勉学も両立。教員免許取得も目指していましたが、途中でコロナ禍になり、地元に戻りました。ジムに通い体作りに励んでいた時、プロレスへの思いが再燃したのです。中央大レスリング部の監督に相談すると、全日で活躍中の人気レスラーで同部OBの諏訪魔(すわま)選手を紹介してもらえることに。監督とはレスリング部の先輩後輩だったそうです。お会いした時に諏訪魔さんには、「背が高いから、なかなか良いじゃないか」と言っていただきました。色々な環境や縁が重なり、夢が実現したのだとつくづく感じています。

目標はジャンボ鶴田
― 今後の目標は
身長188㌢と大きいところが強みですが、そのわりに体重は105㌔と軽め。もっと筋肉を付け、あと10㌔体重を増やして「戦う人」の体を作っていきたいです。

目標は、伝説の名レスラー、故ジャンボ鶴田さん。中大出身で長身と、自分との共通点が多いのです。鶴田さんや諏訪魔さんに続き、名実ともにビッグな選手を目指したいですね。

自分はプロレスを、たまたま見たテレビで知り、この世界に入りました。今度は自分が「こんなカッコいいスポーツがあるんだ」と感動してもらえるような試合をたくさん見せて、子どもたちの〝憧れ〟になりたいと思っています。

今後さらに経験を積み、いつか地元・群馬でも勇姿を見せられるよう頑張りますので、応援宜しくお願いします。
(文・上原道子/写真・谷 桂)

あんざい・ゆうま

1999年、安中市生まれ。安中二中-前橋西高(前橋市清野町)-中央大(東京)。東日本学生レスリング選手権春季大会優勝、全日本大学グレコローマン選手権5位。2022年4月、全日本プロレスに入門。9月18日に 東京の日本武道館で開かれた「楽天チケット Presents 全日本プロレス50周年記念大会」でデビュー。得意技はダブルアームスープレックス。188㎝、105㎏
ツイッター:@anzai_AJPW インスタグラム: @anzai_ajpw

安齊選手の出場する直近の試合
■10月30日、東京・新木場1stRINGで「2022 旗揚げ記念シリーズ ~#ajpw Halloween MANIAx~」
■11月13日~、「2022 世界最強タッグ決定リーグ戦」。13日は東京・後楽園ホールで開幕戦
※詳細は全日本プロレスHP(http://www.all-japan.co.jp/)へ

掲載内容のコピーはできません。