新シーズン 群馬交響楽団がおもしろい

ようこそ紙上音楽教室へ

アクティブで熱量のある指揮者飯森範親さんを常任指揮者に迎え、4月から新シーズンを迎える群馬交響楽団。定期演奏会や移動音楽教室など長年幅広い活動を行っている群響が、新指揮者の下、更なる飛躍を目指している。今号では「紙上音楽教室」と題して、初めての人にも興味を持ってもらえるように、コンサートマスターを始め楽員の紹介やクイズも交えてその魅力を紹介する。

常任指揮者はどんな人?

©山岸伸

「信念」を持って突き進んでいく 常任指揮者(4月就任) 飯森範親さん
今まで様々なオーケストラに携わってきていますが、群馬交響楽団には応援してくれる人がたくさんいて、とても恵まれたオーケストラだと思います。その環境の中で音楽を奏でられるのは幸せです。常任指揮者として新たにスタートを切る上で、私自身、周囲の人の意見にも耳を傾け、きっぱり「信念」を持って突き進んでいきたいです。

今年1月の定期演奏会では、マーラーの1番を演奏して大きな拍手をいただきましたが、一方で群響の課題も見えました。「こうしたらどうだろうか」と整理しながら改善点を考えています。毎回定期演奏会では、モーツァルトに取り組みますが、モーツァルト自身もハングリー精神を持って、逆境に立ち向かっていた人です。その中で素晴らしい音楽を作っていました。メンバーにもそういう気持ちを持ってほしいですね。お客様には聴くだけではなく、観たい、楽しみたいといろいろなニーズがありますから、音楽を提供する側として、「ホスピタリティ」を大事に、伝統にあぐらをかくことなく、期待に応えていきたいですね。その受け皿も常に用意しておきたい。定期演奏会の本番前に、リハーサルを公開する新しい試みを行います(※)。音楽がどうやって作られていくのかを一緒に体感してください。

(いいもり・のりちか)1963年生まれ、桐朋学園大学指揮科卒業。ベルリン、ミュンヘンで研鑽を積む。東京交響楽団正指揮者、ドイツ・ヴェルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団音楽総監督などを歴任。2023年4月より、群馬交響楽団常任指揮者に就任。http://iimori-norichika.com/

※公開リハーサルについて/群馬交響楽団では、定期会員を対象として、定期演奏会の公開リハーサルを予定している。定期会員は、現在募集中。詳しくは、同事務局(027-322-4316)。

群馬交響楽団とは

1945年戦後の荒廃の中で、文化を通した復興を目指して創立。定期演奏会や移動音楽教室など1961年建設の群馬音楽センター(高崎市高松町)を拠点に国内外で充実した演奏に取り組んだ。2019年には、同年開館した高崎芸術劇場(栄町)に本拠地を移し、更なる飛躍を目指している。

定期演奏会は、高崎芸術劇場で年10回。太田市民会館で行う東毛定期演奏会の他、東京公演(すみだトリフォニーホールやサントリーホール)も行う。その他、室内楽演奏会なども開催。

HP : http://www.gunkyo.com/

コンサートマスターはどんな人?

指揮者とオーケストラの橋渡し  コンサートマスター 伊藤文乃さん

群響では2009年から14年間コンサートマスターを務めています。コンサートマスター(以下、コンマス)とは、指揮者とオーケストラの橋渡し役です。指揮者の隣、楽員から一番見えやすい所にいて、様々な指揮者がどういう音楽を作りたいのか、どんな音楽的アプローチをしたいかを瞬時に汲みとり、ヴァイオリンの弓の動き(ボウイング)などで伝えています。指揮者と考え方がマッチしていると、良いものが生まれるんです。

4月22日の定期演奏会では、R.シュトラウスの「英雄の生涯」を演奏しますが、コンマスが弾くソロがあります。このソロは人生3回目の演奏です。初めて弾いたのは20代。その時は無我夢中でしたが、コンマスとしての初めの一歩を踏み出す自信になった思い出の曲です。ヴァイオリンは、心の琴線にふれるような音色が魅力なので、その音色を皆様に伝えたいです。群響には、優秀な若い人も入ってきました。次の世代にとっても「群響って、いい楽団だね」と言われるように、これからも魅力ある楽団にしていきたいです。

(いとう・あやの)1968年生まれ、東京都出身。3歳からヴァイオリンを始め、高校までの間にソリストとして東京交響楽団などと共演。その後、桐朋学園大学を首席で卒業し留学。スイスのベルン音楽院を首席で卒業。広島交響楽団コンサートマスターを経て、2009年から群馬交響楽団コンサートマスター。

個性あふれる楽員の中から紹介。

第1ヴァイオリン奏者
やりがいあるファーストヴァイオリン 杉山和駿さん

5歳の時、音楽教室の体験レッスンで、ヴァイオリンに出会いました。現在は、群響でファーストヴァイオリンを担当しています。メロディーを弾くことが多く、音域も高くて目立ちますし、音程を取ることが難しいですが、その分やりがいや美味しいところもあって、とても毎日楽しいです。特にブラームス、ブルックナー、Rシュトラウス、ラフマニノフ、ストラヴィンスキーなど好きな作曲家はキリがないほど、そして弾いた曲は大体好きになります。「きれいな音色で、感動していただける演奏をお届けすること」をモットーに、「聴きに来て良かった」と思っていただけるような演奏をこれからも心がけていきたいです。小さい頃から車が好きで、現在の愛車はトヨタのスポーツカー「86」。群馬はドライブに絶好の場所が多いので、これからも色々な場所に出かけたいです。

(すぎやま・たかとし)1998年生まれ。神奈川県横浜市出身。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学音楽学部卒業、アカンサス音楽賞受賞。青山音楽財団2019年度奨学生。第69回全日本学生音楽コンクール全国大会第1位。群馬交響楽団第1ヴァイオリン奏者。

第2ヴァイオリン奏者
セカンドヴァイオリンの響きも味わって 塩加井ななみさん

幼稚園の時にヴァイオリンを始めました。担当しているセカンドヴァイオリンが奏でるのは、主役のメロディーではありません。聴いている皆様は、気づかないかもしれませんが、ひたすら細かい音符を奏でて、他のパートを支えています。この機会にぜひ、セカンドヴァイオリンの響きも味わってください。群響で弾いた曲に、シューベルトの交響曲第8番「ザ・グレート」があります。演奏時間が約50分と長い曲。最初は弾けるのかと心配でしたが、本番ではあっという間で、とても魅力ある曲でした。他にもベルリオーズの幻想交響曲が大好きです。この曲は、6月24日の定期で演奏します。いつも一瞬一瞬を大切にして、素敵な音を皆様にお届けしたいと思います。休日は美味しいケーキ店に行ったり群馬ライフを楽しんでいます。おすすめのお店を教えてください!

(しおかい・ななみ)神奈川県鎌倉市出身。第12回ルーマニア国際コンクール弦楽器部門第3位。桐朋学園オーケストラとして、第20回アルゲリッチ音楽祭にてチョンミョンフン氏,マルタアルゲリッチ氏と共演。小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩⅦにて、コンサート・ミストレスをつとめる。現在群馬交響楽団第2ヴァイオリン奏者。

首席クラリネット奏者
クラリネットで優しく暖かい音色を 西川智也さん

クラリネットは、マウスピースという部品に一枚のリードを組み合わせるシングルリードの楽器です。黒い本体はグラナディラという黒い木でできていて、そこに金属製のキーが付いています。オーケストラの中では、音域とダイナミクスレンジの広さからメロディーに伴奏にと様々な役割を担います。魅力は何といっても優しく暖かい音色。そして弱音が得意な楽器なので、遠くから聴こえるこだまのような音も楽しんでいただければと思います。聴きに来てよかったと思っていただけるように、演奏会ではいつも音色やアンサンブル、指揮者の音楽にどう寄り添うか試行錯誤しながら本番に臨んでいます。11月25日の定期演奏会では、指揮者であり、世界的クラリネット奏者のポール・メイエさんと演奏します。メンデルスゾーン作曲の2本のクラリネットための協奏曲をオーケストラの色彩と共にお楽しみください。

(にしかわ・ともや)大阪教育大学卒業後、東京藝術大学大学院卒。N響アカデミーを終了。東京音楽コンクール、日本木管コンクールで第1位。群馬交響楽団首席クラリネット奏者。室内楽やソロの活動もする。2023年3月には初のCDを発売予定。

首席トロンボーン奏者
ベルリオーズも愛した魅力の音 越智大輔さん

中1の春、吹奏楽部に入ろうと、吹奏楽部顧問をしていた父親に楽器の相談をすると、「トロンボーンがいいんじゃない」と言われ、その一言で人生が決まりました。トロンボーンの魅力は、その音。セクション(パート)で奏でるハーモニーの美しさです。15世紀頃教会で宗教曲を演奏していた楽器が元になって、その後オーケストラでも使われるようになりました。かの大作曲家、H.ベルリオーズは、「すべての管楽器の中で“最高”の楽器はトロンボーンだ。究極の高貴さと崇高さを持ち合わせ、穏やかなアクセントから、野蛮な大騒ぎまで、すべてを表現することができる」と語っています。だからこそ、多様な表現ができる楽器という訳です。1月には、飯森さんの指揮でマーラー1番「巨人」を演奏しましたが、新年度からも、さらに音楽と真剣に向き合い最高の音で演奏することを心がけていきたいと思います。「飯森さん×群響」にご期待ください。

(おち・だいすけ)愛媛県立今治西高校を経て、2010年東京藝術大学器楽科トロンボーン専攻を卒業。東京藝大管弦楽研究部非常勤講師の後、2017年ベルン芸術大学CAS課程を修了。イギリスの音楽家、イアン・バウスフィールドのもと研鑽。室内楽での活動や、群馬県内での教育活動にも力を入れている。群馬交響楽団首席トロンボーン奏者。

首席ティンパニ&パーカッション奏者
打楽器は最後の味付け役 三橋敦さん

小学5年の時、高校でバンドをやっていた兄に「ドラムの8ビートを叩けるか」と言われ、思いがけずできてしまったことからドラムが楽しくなって、のめり込みました。初めはドラマーを目指しましたが、高校で管弦楽部に入り、それからは、「オーケストラの打楽器大好き人間」です。ティンパニは、お鍋のような銅のお釜に皮を一枚張った太鼓です。音程が出せるので合奏の中ではハーモニーも共有します。古くは6本のネジを回して調律していましたが、その後、足のペダルなどで調律できる楽器に進化しました。

打楽器は弦楽器と管楽器が作り上げた音に、最後の味付けや色付けを加える楽器です。その影響力と存在感は、大きなやり甲斐に繋がっています。本番では、リハーサルで作り上げた音楽を100%再現できるように取り組みます。

(みつはし・あつし)国立音楽大学卒業。打楽器全般を岡田知之氏に師事。文化庁海外研修員としてベルリンフィルハーモニーソロティンパニ奏者のW.ヴェルツェル氏のもとで研修。日本フィルハーモニー交響楽団を経て、2019年から群馬交響楽団首席ティンパニ&パーカッション奏者。

答えて知ろう 群響クイズ

 

 

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