上野瑞香 牛嶋直子 吉村浩美 

気鋭アーティストによる独創的な表現世界約80点を一堂に
企業メセナ群馬芸術文化奨励賞受賞記念展 前橋のヤマトギャラリーで20日まで

気鋭アーティストによる三人展が今月20日まで、前橋市古市町のヤマト本社1階ギャラリーホールで開かれている。「令和4年度企業メセナ群馬奨励賞」に輝いた日本画家の上野瑞香さん(49=富岡)、画家の牛嶋直子さん(44=前橋)、彫刻家の吉村浩美さん(57=安中)の受賞記念展で、3作家の作品が一度に観られる貴重な機会となっている。 (中島美江子)

 

左から上野さん、牛嶋さん、吉村さん=ヤマトギャラリーホール

記念展は、地域貢献の一環としてギャラリーを運営するヤマトが群馬ゆかりの作家を支援しようと企画。初期から新作まで計73点が並び、三者三様の独創的な表現世界が見比べられる展示になっている。

東京芸大大学院を修了した上野さんは、2019年に山種美術館日本画アワード、22年に千住博が企画する日本画大賞展に入選するなど全国的に注目を集めている。発表作36点は、創作の原点となる自宅庭の植物などが描かれている。淡紅色に包まれた作品には必ず赤いアリが登場するが、そこには戸惑いながらも自由に進んでいきたいという人の姿が重ねられているという。「言葉遊びではないが『何でもアリ』という肯定感の象徴。作品を観た人が明るく前向きな気持ちになってもらえたら嬉しい」と話す。

女子美大大学院で日本画を学んだ牛嶋さんは、2012年に第5回東山魁夷記念日経日本画大賞展やシェル美術賞展に入賞、16年にはVOCA展に出品するなど高い評価を得ている。日常の景色をモチーフにした初期作品と、自ら作った人形などのオブジェを描いた近新作まで20点を出品。光と闇が混在する画面は神秘的で吸い込まれそうな美しさに包まれている。「どれも記憶の中にある心象風景。自分が逃げ込みたい場所、その時々の一時避難場所みたいなイメージです。現実にはない不思議な世界にひたって欲しい」と語る。

東京芸大大学院で文化財保存学専攻を修了した吉村さんは、麻布を漆で貼り重ねて造形する乾漆技法を用いて立体やレリーフを制作。国内外で作品を発表、多方面で活躍する。今回展示している18点のモチーフはペンギンや少女、玉ねぎなど多岐にわたり、素朴な素材感と相まって唯一無二の存在感を放っている。「生命の輝く瞬間をカタチにしました。漆の艶やザラっとした質感、彩色を施した作品、それぞれの表情の違いを楽しんで下さい」と笑顔を見せる。

多彩な作品が並ぶ展示室は柔らかな色彩に満ち、温かな雰囲気が漂う。日本画、現代アート、彫刻とジャンルは異なるが、いずれも独自の感性が光る作品ばかりだ。入場無料。土日祝休館(14、15日は開館)。ヤマト本社( 027-290-1800 )。

上野瑞香「たんぽぽ」
牛嶋直子「境界」
吉村浩美「噴火Ⅰ」
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