井田秋雄 長岡祐介 松原利之  独創的な表現響き合う三人展

油彩、アクリル、水彩  計53点が一堂に
「前橋の美術2024」協力企画 前橋・ヤマトギャラリーで26日まで

前橋ゆかりのアーティストによる三人展が、同市古市町のヤマト本社1階ギャラリーホールで開かれている。地域貢献の一環としてギャラリーを運営するヤマトが、アーツ前橋で開催中の「前橋の美術2024」(今月26日まで)の協力企画として実施。出品しているのは、井田秋雄さん(88=前橋)、長岡祐介さん(64=前橋)、松原利之さん(52=伊勢崎)の3人で、初期から新作まで計53点を展示している。

「幼少時の対岸への憧憬が制作の原点です」と井田秋雄さん

高崎高在学中に実業家の故・井上房一郎氏に才能を見込まれた井田さんは、東京芸大に進み油絵を学ぶ。卒業後、高校の美術教師の傍ら制作活動を展開。県美術会会長を務めるなど、群馬の美術文化向上発展に多大な貢献を果たしている。今展では、一貫して取り組んでいる「対岸」をテーマにした13点の油彩画を展示。荒々しい岸壁や山肌、青々とした木々や樫ぐね、悠々と流れる清流など、郷里の風景が鮮やかな色彩と伸びやかな線で生き生きと描かれている。井田さんは現在の高崎市萩原町に生まれ、東側に流れる利根川の対岸が前橋市公田町だった。当時、橋はなく渡舟が運行していたという。「向こう岸に何があるのか、行ってみたい、そんな幼少時の対岸への憧憬が制作の原点。自分の世界観を表した色、フォルム、線の響き合いを楽しんでもらえたらうれしい」と笑顔を見せる。

「パピロンを見てウキウキしてほしい」と長岡祐介さん

筑波大で絵画を専攻した長岡さんは卒業後、高校教師の傍らモダンアート展や日本グラフィック展に出展。1988年、沼田女子高の美術教員をしていた頃、独自のキャラクター「パピロン」(=未来の赤ちゃん)を創造し、以来アクリルや水彩で愛らしいキャラクターを描き続けている。今回、平面と立体29点を出品。モンドリアンやモネの名画、パリの名所などをモチーフにパピロンを散りばめた作品群は、明るく軽やかで躍動感に満ちている。「私はオプティミスト。音楽でいえば長調の明るい作品を目指しています。パピロンを見てウキウキしたり、笑顔になってほしい」と語る。

「境界線が曖昧な世界を楽しんで」と松原利之さん

群大教育学部で美術科を専攻した松原さんは卒業後、高校教員を務めながら二紀展や県展に出展。県展美術会賞(2000年)や同NHK賞(01年)、同近代美術館奨励賞(07年)に輝くなど、注目を集めている気鋭アーティストだ。近年は「Border」をテーマにした作品を数多く手掛けている。今回は、卓越した描写力と鋭い観察眼により生み出された11点を発表。タイルや壁をモチーフにした背景に、シャベルや草花を緻密に描写したアクリル画は実物以上にリアリティがあり、圧倒的な存在感を放っている。「捉えたいのはモノの物質感。傷があったり、さびていたり、時間の風化が感じられるモノに心惹かれます。自然と人工、あの世とこの世、抽象と具象など、境界線が曖昧な世界を楽しんで下さい」と話す。

三者三様の独創的な表現が響き合う展覧会は今月26日まで開催。入場無料。土日祝休館(23、24日は開館)。ヤマト本社( 027-290-1800 )へ。 (中島美江子)

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