73年目の夏[7月20日号]

先日、「いわさきちひろ生誕100年『Life展』ひろしま 石内都」(今月16日まで)を観に、安曇野ちひろ美術館へ出かけた。「窓ぎわのトットちゃん」で知られる絵本画家と、遺品や身体の傷などを被写体とする作品で世界的に評価されている桐生出身の写真家。一見ミスマッチともいえる2人が、どんなコラボを見せてくれるのか興味があったからだ。

会場では広島の被爆者たちの遺品を撮影した石内さんの写真と、広島で被爆した子どもたちの作文や詩に添えられたちひろさんの絵が、静かに美しく響きあっていた。

日を改めて訪れたアーツ前橋。昭和にフォーカスした石内さんや土門拳さんら30作家の写真を紹介する企画展(~9月3日)と収蔵品展(~同18日)が開かれていたが、ここでも戦争を想起させる作品が並んでいた。

空襲で破壊された銀座や焼け跡の母子を切り取った写真は、戦争の恐ろしさやむなしさを雄弁に物語る。一方、7歳で体験した前橋空襲を語り継ぐ原田恒弘さんを映し出した小泉明郎さん(前橋出身)の「捕われた声」からは、不安と恐怖がヒタヒタと伝わってきた。

いずれも声高に戦争反対を叫んでいる訳ではないが、故に観る者の心に深く迫ってくる。期せずして出会った作品たちは73年目の夏を意識させると共に、増え続ける広島の遺品やGHQによる原爆被害に関する写真記録の制限、地元の空襲被害など今まで知らなかった多くのことを教えてくれた。

(中島美江子)