重層的に響き合う20世紀アート

「大川美術館コレクションによる20世紀アート120」

展覧会入口。壁式構造の当館ならではの展示で、手前からレジェ、ローランサン、奥にのぞくのはエルンスト

個性の表現への関心が強くなっていった20世紀という時代に生まれた作品を、「大川美術館コレクション」により紹介しています。本展では、当コレクション7300点からなる収蔵作品より精選した120点を2部構成でご覧いただきます。

清水登之「祭之図」(1918年)

「第1部:エコール・ド・パリとアヴァンギャルド」では、第一次世界大戦後のパリで美術がいっせいに花開いた時代をとりあげます。マティスやルオー、マリー・ローランサンといったフランス出身の画家に加え、ピカソやシャガール、藤田嗣治らのように世界各地からパリに集まった画家たちがいました。また、人間の想像力や無意識に着目し、絵画表現を試みたマックス・エルンストに代表されるこの時代の美術の動向にも触れていただきます。

「第2部:アメリカンシーンの画家たち」では第二次世界大戦後、戦後復興と経済的な繁栄とを背景に、美術の舞台がパリからニューヨークへと移っていった時代をたどります。社会問題を鋭敏な感性でとらえ、ゆるぎないヒューマニズムの視点を持ち続けたベン・シャーン。初期から最晩年の代表作を紹介する展示は、本展の見どころのひとつといえましょう。この章では、大都会に生きる市井の人々をありのままに表現しようとしたアメリカンシーンの画家たちと、アメリカに学んだ日本人画家(野田英夫、国吉康雄、清水登之)の作品、さらにマルチアーティスト アンディ・ウォーホル、草間彌生らの登場にいたるまで、時代を追ってご覧いただきます。

当美術館の創設者大川栄二(1924~2008年)は、松本竣介の作品を中軸に据えたコレクションをしました。竣介もまた20世紀の画家のひとりでした。当館コレクションをあらためて「20世紀アート」という視野で見渡してみると、それはけして網羅的とはいえません。ですが、いわゆる小品と呼ばれる作品たち、あるいは習作や素描からうかがわれる画家の個性は、独特の煌めきを放つものです。今、展示空間でそれらは時代の断面として重層的に響き合っています。ここにもうひとつの20世紀アートの楽しみを見つけることができるのかもしれません。

 

大川美術館 学芸員
小此木 美代子さん

1993年より大川美術館に勤務。日本の近現代美術を中心とする展覧会に携わる。主要な担当展覧会に、「石内都展 上州の風にのって」(2009年)、「生誕100年 オノサト・トシノブ展」(2012年)、松本竣介展4シリーズ(「アトリエの時間」「読書の時間」「子どもの時間」「街歩きの時間」2018-2019年)など

大川美術館(桐生市小曽根町3・69)■0277・46・3300■一般1000円、大高生600円、中小生300円■6月20日まで■午前10~午後5時(入館は午後4時半まで)■月曜休館(月曜祝日の場合は翌日火曜休館

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