染色文化に思い巡らせ初夏の園を散策して

企画展「 この木なんの木どんな色? ー染料植物の道を歩こうー 」

時代ごとに代表的な染料、植物から染めた資料を展示

高崎市の観音山にある当植物園には、飛鳥・奈良時代から現代までの日本の染色文化史に沿って染料植物を紹介している「染料植物の道」があります。7月7日まで開催中の企画展では、この道をたどるように、それぞれの時代を彩ってきた染料植物から染めた染織品を紹介しています。

ベニバナ

江戸時代の終わり頃までは、人々は植物など天然の染料で糸や布を染めていました。ベニバナ、クチナシ、ウメ、クサギ、ザクロなど、私たちの身近にある植物の多くが、昔から染色に利用されてきました。特殊な植物という訳ではなく、皆さんにも親しみのある植物ではないでしょうか。なかには希少なものもあります。例えば、「万葉集」にも登場するムラサキは、古来、朝廷での位による服色の最上位の紫色を染めるため根が利用されてきましたが、現在は絶滅危惧種となっています。

明治時代以降は化学染料の時代となりましたが、植物学者や染色家によって新しい染料植物や染色方法が研究されています。例えば「緑色染」という、1種類の植物から緑色を染める現代の技法があります。草や葉は緑色をしていますが、じつはこの緑色(葉緑素)は布に定着させることができず、昔から青い色(アイなど)と黄色(カリヤスなど)を重ねて緑色を染めていました。展示では重ね染めによる緑色と、「緑色染」による緑色の両方をご覧頂けます。

本展は、植物の枝葉や樹皮、根、花などから生み出されてきた、多彩で豊かな色の世界をご覧いただける展示となっています。「染料植物の道」を実際に歩くことでよりいっそう楽しめる展覧会ですので、染色文化に思いを巡らせながら、初夏の園内散策をお楽しみください。

高崎市染料植物園
杉本 あゆ子 さん

金沢美術工芸大学芸術学専攻卒業。須坂版画美術館、高崎市美術館で学芸員として勤務。2017年より高崎市染料植物園に勤務。

高崎市染料植物園染色工芸館(高崎市寺尾町2302・11)■027・328・6808■7月7日まで■午前9~午後4時半(最終入館は同4時まで)土日は午前9~午後6時まで(入館は同5時半まで)■月曜休園■入館料一般100円、大高生80円、65歳以上、中学生以下は無料■6月15~7月7日まで「染料植物の道スランプラリー」を開催中。全スタンプを集めた先着200人に草木染コースターをプレゼント

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