人々の心に寄り添い続けるかまちの作品

代表作が一堂に「山田かまち常設展

「虹のように消えてゆくきょうも午前0時で明日につながっている。」この言葉は、高崎市に生まれ育ち絵画や詩文などの芸術制作に情熱を傾けた少年・山田かまち(1960~77年)がノートに綴っていたものです。

先の自粛期間、日々ままならぬ中で、ご自身と向き合う機会の増えた方や周囲との心の繋がりを意識された方もいらしたかもしれません。43年前、突然の事故により17歳で世を去るまで、瑞々しい感性から沸き出る言葉を何十冊ものノートに残したこの少年も、心の内を深く見つめ続けた一人でした。

冒頭の言葉を読むと、『今日の楽しかったこと、悲しかったことや後悔もつながる明日への糧になるから大丈夫。また精一杯生きよう。』と語りかけられている心持ちがします。かまちの詩文を読むほどに、彼は日常が当たり前に過ぎるのではないこと、今を懸命に生きることの尊さを、時を超えて叫び続けているように思えてならないのです。

山田かまち「プリーズ・ミスター・ポストマン」

「プリーズ・ミスター・ポストマン」は、かまちが愛するロックに触発され制作した作品で、郵便配達人の姿が豊かな色彩で描かれます。作品名はビートルズやカーペンターズが歌ったナンバーからとられ、メロディの華やかな響きが絵画に表現されています。かまちがこの曲を知ったのは、東北の文通友だちから送られたカセットテープがきっかけでした。友の便りを楽しみに待つ気持ちと、手紙を届けてくれるミスター・ポストマンへの感謝を曲に重ねて描いたのでしょう。

山田かまち「海辺のライオン」

「海辺のライオン」は、草原に生きるはずのライオンが海を眺めるという構図に物語性を感じます。クレヨンの巧みな混色で黄金色の輝く毛並み、引き締まった体躯が表現されています。岩陰の暗さと海辺の明るさの対比も鮮やかです。ライオンにはかまち自身の姿が投影されているようにも見えます。水平線のかなたやきらめく太陽に想いを馳せていたのでしょうか。

2作品とも展示は11月下旬までを予定しています。作品の多くは、彼が世を去った後に部屋の中から見つかりました。かまちが自らのために描いていた絵画や詩文ですが、その伸びやかで真っ直ぐな表現は、たくさんの方の心に寄り添い続けています。

 

高崎市山田かまち美術館 学芸事務
城尾 実希さん

群馬県立女子大学美学美術史学科卒業。専攻は美学。2014年4月、高崎市山田かまち美術館リニューアル時より同館に勤務。山田かまちの作品や遺品の調査研究などに取り組んでいる。

■高崎市山田かまち美術館■高崎市片岡町3・23・5■027・321・0077■午前10~午後6時(入館は午後5時半まで)■月曜および祝日の翌日は休館■一般200円、大高生160円、中学生以下および65歳以上は無料

掲載内容のコピーはできません。