書いて、創って、踊って開花させた大輪の花

萩原葉子さん=東京の自宅スタジオでⒸ井上TORA

「なぜ踊らないのー生誕100年記念 萩原葉子展」

80歳を超えてもなお、危険なアクロバット入りのダンスに果敢に挑戦し続けた人生とは。

詩人・萩原朔太郎(1886~1942年)の長女である萩原葉子さん(1920~2005年)は、30代半ばで文筆活動を始め、2年後のデビュー作『父・萩原朔太郎』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、作家として高い評価を得ました。その後、『天上の花―三好達治抄』では田村俊子賞と新潮社文学賞を、自身の生立ちを元にした『蕁麻の家』で女流文学賞、さらに続編『閉ざされた庭』『輪廻の暦』を合わせた『蕁麻の家』三部作で高橋元吉賞、毎日芸術賞を受賞、ベストセラーとなりドラマ化もされました。

文筆家としての目覚ましい活躍だけでなく、40歳代半ばにはダンスを始めます。70歳を超えてアクロバティックな振付にも挑戦。造形制作も行い、68歳で初めてオブジェ展へ出品。「出発に年齢はない」と「書いて、創って、踊る」を生涯続け、遅咲きにして大輪の花を咲かせました。

本展では、萩原葉子さんのダンスや造形活動にも焦点を当てています。直筆原稿や著作、作家活動の原点である同人誌『青い花』などのほか、色鮮やかなフェルトやビーズ、ダイヤストーンで飾られた猫ワッペンや流木の「おしゃれ虫」など自由な発想の作品の数々、さらにはデザインプレートやカップ、衣装やシューズ、ダンス映像もご紹介しています。

直筆原稿や著作、色鮮やかなフェルト、猫ワッペンなど、自由な発想の作品の数々が並ぶ展示会場

会場には葉子さんをイメージした書き下ろしの音楽が流れ、ミラーボールがきらめき、また、葉子さんの長男でもある、萩原朔美前橋文学館館長監修の本展では、葉子さんが校正をした朔美館長の直筆原稿や、遺言とも言えるメモなどの貴重な資料も展示しています。葉子さんが執筆に使った思い出の文房具で創られた「えんぴつと消しゴム」、葉子さん亡き後、母を映像で綴った「その後の母のこと」など朔美館長が手掛けた作品や、母葉子さんについてのインタビュー記録もご紹介しています。萩原葉子さんの人となりや、親子2人の絆を垣間見ることが出来るかも知れません。

今回は、萩原葉子さんと親交の深かった田村セツコさんの展覧会も同時開催中です。それぞれに個性的で前向き、強くしなやかな生き方から紡ぎ出された表現は、わたしたちに元気と勇気を与えてくれます。ぜひあわせてご覧ください。

 

前橋文学館学芸員
新井ゆかりさん

群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業。ハラミュージアムアーク勤務を経て、2019年より前橋文学館勤務。「羽の生えた想像力-阿部智里展」「わたしたちはまだ林檎の中で眠ったことがない-第27回萩原朔太郎賞受賞者 和合亮一展」を担当

■前橋文学館(前橋市千代田町3・12・10■027・235・8011(要予約)■会期は来年1月24日まで(同時開催中の「田村セツコ展」は1月17日まで)■午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)■水曜休館(休日の場合は翌日)、年末年始(12月29~1月7日)■入館料一般400円、高校生以下無料※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1人無料。観覧無料の日=1月9、11、24日■公式YouTubeで関連動画を公開(詳しくはHPをご覧ください)。
https://www.maebashibungakukan.jp/

掲載内容のコピーはできません。