世界に耳を傾けてみると…

恩田晃《静まりかえった庭̶イーストヴィレッジのコミュニティーガーデン、パンデミックの時分》2020年より、ローワー・イースト・サイド・エコロジー・センター・コミュニティーガーデン

「聴くー共鳴する世界」展

「聴く―共鳴する世界」展は、世の中で起こっている様々なことに耳を傾け、「聴く」という行為を通して世界を認識することをテーマとする作品によって構成しています。日本、台湾、オーストラリア、ベトナムからの6組の出品作家の作品には、歌やピアノの調べ、インタビューや環境音などの様々な音が用いられています。

小森はるか+瀬尾夏美は、東日本大震災以後、東北に移り住み制作活動を続けています。作品は主にインタビューをもとに制作され、被災した土地に暮らす人々が語る様々な想いが「声」によって届けられ、「聴く」という体験をとおして私たちの身体に響いてきます。今回発表された《飛来の眼には》は、かつてインタビューした人々を2020年に再び訪ね記録した映像と人々の手記、自らを渡り鳥になぞらえた瀬尾の小説によって構成され、10年という月日の流れを感じさせます。

フィールド・レコーディングによって、「記憶」にまつわる作品を制作し続けている恩田晃の《静まりかえった庭 イーストヴィレッジのコミュニティガーデン、パンデミックの時分》は、1970年代からニューヨークのイーストヴィレッジに在り続けるコミュニティガーデンと呼ばれる、住民の自主運営による共同の庭をテーマにしています。それらは、アクテヴィストの啓蒙活動に端を発し、貧しい生活者たちの憩いの場やアーティストの発表の場であるとともに、再開発や移民の流入、荒廃と緑化計画、さらにはコロナ禍での街の変化など、社会の状況を反映する鏡のような場所でもあります。写真、テキスト、資料とともに会場に流れる、コミュニティガーデンで録音された日常の生活音には、生き生きとした臨場感があります。

ほかにも、当館の収蔵作品を音で表現するワークショップから生まれた曲や、人々が往来する場としての済州島を音によって浮かび上がらせるインスタレーション、歌をとおして街の様々なコミュニティが見えてくる映像作品、ベトナム人留学生の心情を歌に表した作品などが出品されています。

また、会場でQRコードを観客がスマートフォンで読み取り鑑賞するものや、オンライン上でのweb図録などの新しい鑑賞方法も試みておりますので、是非、体験してみてください。

 

アーツ前橋学芸員
北澤 ひろみ さん

恵比寿映像祭ディレクター、キュレーター、東京都現代美術館学芸員を経て現職。主な展覧会企画に「MOTサテライト秋 うごきだす物語」(2018年、東京都現代美術館)、「第6回恵比寿映像祭 トゥルーカラーズ」(2014年、東京都写真美術館)などがある

■アーツ前橋(前橋市千代田町5・1・16)■027・230・1144■2021年3月21日まで■午前10時~午後6時■水曜休館■一般500円、学生と65歳以上300円、高校生以下無料■ギャラリーツアー 1月23日、2月6日(事前申込が必要)、上映プログラム 1月30日、3月20日(展覧会チケットで入場可)詳細はHP参照
http://www.artsmaebashi.jp/
本展特設サイト
https://listening.artsmaebashi.jp/

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