「アルフォンス・ミュシャ展―美しき時代の女神たち」

アールヌーヴォーの寵児 多角的に紹介

当館では現在、「アルフォンス・ミュシャ展―美しき時代の女神たち」を開催中です。優雅で神秘的な女性像が描かれたポスターや装飾パネルを中心に、書籍の挿絵や雑誌の表紙、菓子容器、香水瓶などインダストリアル・デザインの仕事も含めた約300点を通して、チェコを代表するアーティスト、ミュシャを多角的に紹介するものです。

ミュシャは1860年、チェコに生まれました。1887年に支援者の力添えでパリに出て絵画を学び始めましたが2年後に仕送りが打ち切られたため、雑誌の挿絵を描いて生計を立てる苦しい時期を迎えます。運命の分かれ道となったのは1894年の暮れから翌年にかけての数日間でした。年末に版画工房で仕事をしていたミュシャは偶然にも、人気絶頂の女優サラ・ベルナールの舞台「ジスモンダ」のポスター制作の急な依頼を受けたのです。新年明けてすぐにパリの街を飾ったサラの等身大のポスターはセンセーションを巻き起こし、無名だったミュシャは一躍アール・ヌーヴォーの寵児となりました。サラもミュシャのポスターを大いに気に入って、その後6年間、自分のポスターを任せています。

《ジスモンダ》(1895年、カラーリトグラフ、OGATAコレクション)

ミュシャは1860年、チェコに生まれました。1887年に支援者の力添えでパリに出て絵画を学び始めましたが2年後に仕送りが打ち切られたため、雑誌の挿絵を描いて生計を立てる苦しい時期を迎えます。運命の分かれ道となったのは1894年の暮れから翌年にかけての数日間でした。年末に版画工房で仕事をしていたミュシャは偶然にも、人気絶頂の女優サラ・ベルナールの舞台「ジスモンダ」のポスター制作の急な依頼を受けたのです。新年明けてすぐにパリの街を飾ったサラの等身大のポスターはセンセーションを巻き起こし、無名だったミュシャは一躍アール・ヌーヴォーの寵児となりました。サラもミュシャのポスターを大いに気に入って、その後6年間、自分のポスターを任せています。

19世紀末から20世紀初頭のパリは華やかな近代都市文化を謳歌した「ベル・エポック(美しき時代)」と呼ばれ、人々は様々な嗜好品や娯楽を楽しむようになっていました。演劇ポスターで不動の人気を得たミュシャは、商品や娯楽のポスターにおいても時代の要望に完璧に応えるイメージを次々と生み出します。商品の魅力のエッセンスを擬人化するというミュシャ独特の方法によって、新しい時代の高揚感を体現したのです。

ベル・エポックには陽気で大衆的な女性像も数多く描かれていました。しかし、ミュシャが描いた女性たちは幻想的で非日常性にあふれ、きわめて象徴的です。それはあたかも美しき時代に君臨した女神たちの姿そのもののようであり、世代を超えて愛され続けています。

《夢想 シャンプノア》(1897年、カラーリトグラフ OGATAコレクション)

 

高崎市美術館 学芸員 
柴田 純江 さん

大阪外国語大イタリア語科卒業、金沢大大学院修了。1998年より高崎市美術館に勤務。専門は西洋美術史。これまで「水野暁展」(2018年)、「マルク・シャガール―愛と祈りと冒険と。8つの版画物語」(2020年)、「4つの革命― オーブリー・ビアズリーからサルバドール・ダリまで」(2020年)などの展覧会を担当

高崎市美術館館(同市八島町110-27)■ 027-324-6125 ■11月27日まで■午前10時~午後6時(金曜のみ午後8時まで)■月曜、および祝日の翌日休館■10月28日は群馬県民の日につき観覧料無料■一般600円、大高生300円(中学生以下、65歳以上無料)■10月30日午後2時より学芸員によるギャラリートーク

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