密度のあるデッサンと画家の思索に思い馳せて

「生誕110年記念 松本竣介 デッサン50」

昨年は松本竣介の生誕110年にあたり、今年6月には没後75年を迎えます。これを記念して、各時代に描かれたデッサンを精選してご覧いただきます。

竣介はデッサンについて「簡単なスケッチや習作ではなく、計画であり、決意決心を意味している」(1935年)と述べ、「線は僕の気質なのだ」(39年)、さらには「只の線は一切のものを現はすものだ」(40年)と断言しています。

本展では油彩画のためのプロセスとしてのスケッチ、習作から、完成された風格を備えたデッサンまで全50点をモチーフごと6章に分けて紹介。また、関連する油彩画16点と、竣介手製のスケッチ帖やスクラップブックなどもあわせて展示し、激動の時代を生きたこの画家の優れた素描家としての軌跡を辿ります。

例えば「女性像」は、竣介にとって生涯に渡り多様なイメージをはらんだモチーフでした。身近な人物の特徴を捉えたものもあり、当館所蔵の「婦人像」(1942年)は妻・禎子のくつろいだ様子が描かれています。のびやかな墨による線が印象的な一点です。他にも「建物」をモチーフにした完成度の高いデッサンや戦後抽象的な展開をみせた作品まで多彩なデッサンをお楽しみ下さい。

また、2018年10月から展示してきた「竣介のアトリエ再見プロジェクト」がこの6月で公開終了を迎えます。そのため、本展が松本竣介の企画展とご覧頂ける最後の機会となります。竣介の密度のある美しいデッサンをご堪能頂き、この画家の思索の時間に思いを馳せていただければ幸いです。

松本竣介「婦人像」 (1942年頃 大川美術館蔵)
「松本竣介のアトリエ再見」展示(2018年10月撮影:木暮伸也)

大川美術館 学芸員
小此木 美代子さん
93年より大川美術館勤務。日本近現代美術を中心とする展覧会に携わる。「生誕100年 オノサト・トシノブ展」(2012年)、「松本竣介展(アトリエの時間/読書の時間/子どもの時間/街歩きの時間(18-19年)などを担当

大川美術館(桐生市小曽根町3-69)■0277・46・3300■一般1000円、大高生600円、中小生300円■3月12日まで■午前10~午後5時(入館は午後4時半まで)■月曜休館(月曜祝日の場合は翌日火曜休館)

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