反対側に目をやれば、面白いものがきっとある!

「青空は、太陽の反対側にある原美術館/原六郎コレクション」(第1期)

ギャラリーA 展示風景

雲ひとつない晴れた日に原美術館ARCを訪れて最初に目にするもの、それは大きな青空です。青空と山々の深緑、そして青空と端正な黒色の建築とのコントラストは、恐らくここでしか見ることのできない感動の光景。しかしよく見ると、青空の青さにはわずかに濃淡があります。輝く太陽の周りは少し白っぽく、太陽から離れるにつれ青さが増してゆく。理想の青い空は太陽の反対側にあります。

当館では現在、「青空は、太陽の反対側にある」展を開催中です。少し風変わりなこの展覧会名は、作品制作や作品鑑賞のあり方の一端を表す言葉を当館の豊かな自然環境に求める中で目にした美しい光景から生まれました。本展ではそのような展覧会名の下、当館所蔵の現代および東洋古美術作品から、自身の理想(=青空)を追求し、美術的・社会的に主流の動向(=太陽)に背を向けた、少々あまのじゃくな作家の表現を展観しています。

現代美術展示室では、カボチャの作品で知られる草間彌生や環境保護運動にも熱心だったヨーゼフ・ボイスなど、当時の常識や慣習、価値観に抗い、視点を変えることで独自の地平を切り開いた作家の作品や、声高ではなくとも社会や美術の潮流に疑問を呈する奈良美智の絵画や彫刻、自身の心に深く潜ることで新たな表現を浮上させた佐藤雅晴のアニメーションなど、唯一無二の作品が勢ぞろい。

『青磁鳥形水注』(高麗時代=10~14世紀)

一方、黒漆喰の壁と書院造の趣ある展示室「観海庵」には、高麗の『青磁鳥形水注』を展示中です。小品ながら、白と黒の土を用いた羽の表現や、羽毛を表す精緻な線、とろりとかかる青磁釉の美が見どころの類例をみない逸品です。また、本阿弥光悦の書体を基にした希少な古活字本『光悦謡本』も初公開しています。

輝く太陽にあえて背を向け、順光に映し出される鮮やかな青空と原美術館ARCをどうぞご堪能ください。

 

原美術館ARC  学芸員
坪内 雅美 さん

原美術館(東京)にて長年、「光―呼吸 時をすくう5人」(2020-2021年)展などの企画展を担当。2021年同館閉館に伴い、同年原美術館ARCに赴任。「虹をかける」(2021年)、「雲をつかむ」(2022年)に続き、今年は「青空は、太陽の反対側にある」を企画

原美術館ARC(渋川市金井2855・1)■ 0279-24-6585 ■9月3日まで■午前9時半~午後4時半(入館は同4時まで)■木曜休館(8月無休)■一般1800円、大高生1000円

掲載内容のコピーはできません。