「百聞は一見に如かず」 まずは足を運んで

「中之条ビエンナーレ2023 コスモグラフィア ー 見えない土地を辿る ー

旧五反田学校に展示されているアニタ・ガラツツァの「Glöckler」

9回目となる「中之条ビエンナーレ2023」が始まった。前回はコロナ禍で様々な制限がかけられたため、今回はその鬱憤を一斉に解き放つようなエネルギーを持った作品やイベントが多い。

参加アーティストは各地区のレジデンス施設に滞在して、リサーチを行いながら作品を制作していく。この土地に滞在した経験から作品が生み出されていくので、最終的に作品がどうなるのかは、ディレクターといえども直前にならないと分からない。まさにこの土地で生まれ、ここでしか見ることのできない作品が殆どで、会場となる建物も木造校舎や文化財の古民家など、普段は入ることが出来ない場所も多い。

2007年から隔年開催される国際現代芸術祭は、地域とアーティストが共に歩みながら、数えきれないほど多くの人々の繋がりも生まれた。この取り組みが切っ掛けで、移住した人や結婚した人、また、気の合う友人が出来たなど、それぞれの人生で大切な時間をここで過ごした人も多い。このことは1か月間の展覧会イベントとしての中之条ビエンナーレではなく、多くの人が支えてくれた十数年のプロジェクトとしての大きな成果だと感じる。

また、観客として何度も通って1か月間を楽しんでもらえるのはもちろん嬉しいことだが、興味があればボランティアとして、中之条ビエンナーレに関わってみることもお勧めしたい。こういった人たちは会場で受付をしてくれていたり、マルシェを出していたりするので、気軽に声をかけてみて欲しい。

きっと、まだ知らない中之条ビエンナーレが見えてくるはず。百聞は一見に如かず、まずは中之条ビエンナーレへ足を運んで頂きたい。

会場の「やませ」に鎮座する浅野暢晴の「異形の食卓」

中之条ビエンナーレ 総合ディレクター
山重 徹夫 さん

2006年より群馬県を拠点に文化発信することを目的に、中之条ビエンナーレを立ち上げ、総合ディレクターを務める。現在は地域ブランディングやデザイン、国際芸術交流をはじめとするプロジェクトなど、各地で文化振興事業を行っている

中之条ビエンナーレ2023(中之条の市街地や四万温泉街、伊参スタジオなど町内各所)■ 0279-75-3320 ■10月9日まで ■午前9時半~午後5時■会期中無休■当日一般1500円、高校生以下無料■16、17、18日各午後5時15分~、旧第三小学校でダンス公演「生を見つめる3部作」を上演。観覧料各500円

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