賢治の世界に浸れる仕掛け随所に

企画展「宮沢賢治―みんなのほんとうのさいわいをさがしに―」

宮沢賢治 明治29(1896)年~昭和8(1933)年©林風舎

当館では現在、企画展「宮沢賢治―みんなのほんとうのさいわいをさがしに―」を開催しています。「銀河鉄道の夜」や「注文の多い料理店」、「セロ弾きのゴーシュ」などで有名な、宮沢賢治(1896~1933年)の生涯と作品を紹介する展覧会です。

宮沢賢治は、明治29(1896)年に岩手県稗貫郡里川口町(現在の花巻市豊沢町)に生まれました。中学時代から短歌を作り、その後、童話や詩の創作に目覚め、たくさんの作品を生み出します。生前刊行された本は、詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』の2冊のみですが、没後、草野心平や高村光太郎、賢治の弟・清六などの尽力により、賢治の作品は日本中に広まりました。

宮沢賢治というと童話作家や詩人として紹介されることが多いのですが、賢治は地質学や物理学、気象学、天文学など理系の知識が豊富で、そのほか音楽や美術などの芸術方面にも精通していました。クラシック音楽をよく聴き、自分でもチェロやオルガンを演奏したそうです。本展では、そのような賢治のさまざまな側面にもスポットを当てて紹介しています。

宮沢賢治 明治29(1896)年~昭和8(1933)年©林風舎

会場内では、賢治が盛岡高等農林学校時代に出会った親友・保阪嘉内(ほさかかない)への手紙や、「雨ニモマケズ」が書かれた手帳の精密複製、『春と修羅』や『注文の多い料理店』の初版本など約100点の資料のほか、幼少期から晩年までの写真を多数展示しています。また、「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」(「農民芸術概論綱要」より)や「ぼくはきっとできるとおもう。なぜならぼくらがそれをいまかんがえているのだから。」(「ポラーノの広場」より)など、心に響く賢治のことばもたくさん掲示しています。

クイズなどの参加型企画、「銀河鉄道の夜」のDVD上映、建物の入り口から賢治の世界に浸れるような仕掛けなども随所にあり、お子さまから大人の方まで楽しめる展覧会となっておりますので、ぜひこの機会に足をお運びください。。

 

県立土屋文明記念文学館 学芸員
神戸 道子さん

みどり市(旧笠懸町)生まれ。2014年4月、県立土屋文明記念文学館学芸員として赴任。これまで「金子みすゞの世界」展や「ごんぎつね」展、「愛の手紙‐文学者の様々な愛のかたち‐」展などの企画展を担当

 

■県立土屋文明記念文学館
■高崎市保渡田町2000■027・373・7721■9月20日まで■午前9時半~午後5時(入館受付は午後4時半まで)■火曜休館■一般500円、大高生250円、中学生以下無料)

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