並里 成

バスケに真摯に向き合う姿勢が、チームを成長させる

バスケットボール選手としてさらに成長したいと、沖縄からサンダーズに移籍してきた並里成。ファンタジスタと言われるプレーでチームを引っ張り、リーグ終盤までの東地区3位に貢献。人気、実力ともサンダーズに欠かせない並里を紹介しよう。 (星野志保)

オープンハウスアリーナ太田のこけら落としのゲームとなった宇都宮ブレックス戦に勝利し、喜びを爆発させた並里(2023年4月15日) 写真提供・群馬クレインサンダーズ

今季、群馬クレインサンダーズに加入した並里成を取材して思うのは、「この人は本当にバスケが好きなんだな」ということだ。

ホーム戦後の記者会見で取材陣から呼ばれる回数が多かった並里は、会見の席に着くと、すぐに机に置かれた公式記録に目を通し、会見が終わった後もしばらく記録を見て何かを考えている。この光景がいつものパターン。

4月22日の逆転負けを喫した千葉ジェッツ戦後、会見の席に着くなり公式記録に目を落とすと、「いつも同じ負け方」とボソッとつぶやいた。そして会見では、試合終了間際の9・9秒のプレーに対し、「もっとシンプルにプレーした方がよかった」と悔やんだ。

ときには辛辣な発言もあるが、歯に衣着せぬ言葉からも、並里が真剣にバスケに向き合い、チームを良くしたいと思っていることが伝わる。

そんな並里を若手選手も慕う。特にプロ2年目の菅原暉(てる)は、「バスケット全体のスキルが全部高く、トップレベルのスキルを持っているのはすごいと思います。アシストの部分やピックアンドロール(オフェンスの戦術の一つ)の使い方は特に意識して見ていますが、視野の広さはちょっと真似できないです」と刺激を受ける。

4月15日にオープンハウスアリーナ太田でこけら落としの試合が開催されたが、並里もまたこの新アリーナでプレーする日を楽しみにしていた一人。

「小さな頃からいろんなことを犠牲にして、つらいことも多かったんですが、その分、我慢して乗り越えてやってきたので、感謝の気持ちを持ってあのコートに立ちたいと思います。ワクワクしますね」と、新アリーナの完成が目前に迫った2月27日にこう話してくれた。

15日のオープニングゲームでは、昨季のBリーグ王者・宇都宮ブレックスを激戦の末に破り、勝利の喜びを爆発させていた。彼がチームメイトに力や刺激を与え、チームを成長させていく存在なのは間違いないだろう。

「昨日の自分に勝つ」を胸に、今年34歳になるベテランの成長ストーリーはこれからも続く。

なみざと・なりと

1989年8月7日生まれ、沖縄県出身。福岡第一高校卒業後は、漫画家の井上雄彦氏が創設した第1回スラムダンク奨学生として渡米。帰国後は、当時JBLに所属していた栃木(現・宇都宮)でプロのキャリアをスタート、その後、地元の球団であるbjリーグの琉球に移籍。Bリーグ誕生後は滋賀で2シーズン、琉球で4シーズンプレーし、今季、水野宏太HCの下で新たなバスケットを学びたいとサンダーズに加入した。今季の成績は4月30日現在、平均得点10.6点、フィールドゴール成功率41.7%、3ポイント成功率33.8%、フリースロー成功率80.05%、平均リバウンド2.1本。特に平均アシストではリーグ3位の7.1本をマーク。プロ選手を目指す子どもたちへのメッセージは「昨日の自分より良くなって、また次に自分より良くなってをちょっとずつ積み上げていってください」。背番号16、ポジションはポイントガード、172㎝・72㎏。

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