群馬県指定史跡(1958年指定) 「五料の茶屋本陣 お西」(vol.32)

参勤交代の休息所 明治天皇もお立ち寄りに

「五料の茶屋本陣 お西」の外観。火災により1806年に再建され、1984年には大規模改修が行われた

五料の茶屋本陣は、中山道の松井田宿と坂本宿の間にあります。2宿の間は約9500㍍(2里15町7間)と長かったため、五料と横川に茶屋本陣が置かれました。茶屋本陣は、参勤交代の大名や日光例幣使などが休息する場所で、宿泊はできませんでした。五料は街道の北側に2棟が建ち並び、それぞれ「お西」、「お東」と呼ばれていました。同じ祖先をもち戦国時代から代々名主を務める2軒の「中島家」の屋敷で、天保年間以降は1年交代で五料村の名主を務めました。

手前から「表の間」「下の間」「上段の間」

「お西」は、間口13間(約23・6㍍)、奥行き7間(約12・7㍍)、木造総2階建切妻造り。東側には土間の玄関に、馬屋や流し、竈など。中央には名主の仕事場として中の間、茶の間、納戸(寝室)などがありました。西側が茶屋本陣の機能を果たした場所で、籠などを横付けする式台、下位の家来が控える表の間(10畳)、上位の家来が控える下の間(6畳)、大名や例幣使である公家の休息する上段の間(8畳)があり、「通り」と呼ばれる廊下で家族の生活空間と区切られました。2階は蚕室でしたが、現在は郷土資料展示室となっています。

1878(明治11)年の明治天皇北陸東海御巡幸の際、「お西」が御小休所となることを受けて上段の間周辺は改造され、2階には壁が造られました。
裏庭にはひょうたん池も作られ、麓の楠(くすのき)はこの御巡幸の際の記念樹といわれています。また、日露戦争で活躍した乃木将軍の石像も建っています。これらは「上段の間」北側の廊下から眺めることができます。「お西」と似たような間取りの「お東」と合わせて往時の雰囲気を味わってください。

安中市教育委員会文化財保護課文化財活用係係長
深町 真 さん

ふかまち・まこと/1966(昭和41)年、前橋市生まれ。徳島大総合科学部卒。1992年4月、安中市教育委員会採用。2021年4月より現職

 

きてみて
五料の茶屋本陣 お西/安中市松井田町五料564-1/ 027-393-4790 /午前9時~午後5時/
月曜(月曜が祝日の場合は開館しその翌日)休館/一般210円、小中学生100円/
※11月6日まで松井田町華道協会楓会による「秋のいけばな展」開催中

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