国指定重要文化財  臨江閣(vol.46)

2018年8月17日指定

「生糸(いと)の町前橋」の隆盛を伝える県内最大規模の木造建築

臨江閣の建物と庭園。向かって右より別館、本館、左端の木立の中の瓦屋根が茶室

「臨江閣」は、県庁の北800㍍の楽歩堂前橋公園北端にあります。周辺には、るなぱあく、前橋東照宮、源英寺など古き前橋を色濃く残す施設が所在しています。本格的な和風建築である本館(1884年建築)と茶室(同)、別館(1910年建築)からなり、2018年に国の重要文化財に指定されました。

本館は、当時の県令(現在の県知事)楫取素彦(かとり もとひこ)の提言により「前橋町」の有力商人や企業がお金を出し合い建設された迎賓施設。当初は彼らによる共同経営で運営されました。一方、茶室はこの迎賓館を建てた町民への返礼として、楫取ほか当時の県庁職員の募金で建設。茶室の棟札には「賛市街有志者之美挙也」とあります。本館は、型にはまらない数寄屋風の造り。また、建物の配置も南を流れる利根川とその背後の上州の山々の姿を遮らないような配慮がなされています。

別館は、前橋市を中心に開催された「一府十四県連合共進会」の貴賓館として建設、各種団体の大会など公会堂機能も備えました。断面が波形をした桟瓦葺、豪壮な総2階建てで、県内最大規模の木造和風建築といえます。内部は床の間、脇床、付け書院を持った書院造りの和室のほか、1階には60畳の洋間を、2階には180畳の和室を備えています。特に1階洋間の大空間を支えるために、当時の先進的技術である梁に鉄筋を添えて引っ張る「張弦梁(ちょうげんばり)構造」を、2階の巨大な一室空間を作り出すために「洋小屋構造」を採用するなど、和と洋の技術を融合した近代和風建築の範としての姿をとどめると共に、かつて製糸業で繁盛した古き前橋の姿を伝えています。

築100年を超えた今も現役で、前橋市を代表する迎賓施設として利用され続けています。今後も使い続け、未来に残していくべき建物の一つです。

前橋市文化財保護課嘱託員
小島 純一 さん

こじま・じゅんいち/1956年生まれ 桐生市出身 明治大学史学地理学科考古学専攻 2017年前橋市文化財保護課長で退職。2020年より現職

 

きてみて
臨江閣
前橋市大手町3-15
TEL : 027-231-5792    ※貸館利用等の問い合わせは文化財保護課( 027-280-6511 )へ
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時半)/観覧無料/
休館:毎週月曜(祝日の場合は開館し直近の平日が休館)、年末年始(12月29日~1月3日)
駐車場:隣接する楽歩堂前橋公園の駐車場
■17日まで本館1階にてひな祭り開催中。幕末から昭和前中期のひな人形11組を公開

掲載内容のコピーはできません。