ショップ&ギャラリー象(桐生市)

美術嫌いが作ったギャラリー もっと気軽な場所に

うつむき加減で牙が生えた子どもをモチーフにした立体の隣りに立つオーナー丸尾万象さん

桐生市本町一丁目の桐生新町重要伝統的建造物群保存地区に、明治期の古民家を改修し、カフェと店舗を併設したギャラリー「ショップ&ギャラリー象 ―KATACHI―」が、2月下旬に誕生した。ギャラリーの若きオーナーは、桐生育ちの丸尾万象さん(29)。万象さんは、「美術に関心がない人も子どもでも、ふらっと来て楽しんでもらえる場所になったら」とコンセプトを話す。

万象さんの父は熊本県山鹿市と桐生市両方にアトリエを構え、自然と人間の共生をテーマに作品を制作する彫刻家の丸尾康弘さん。母は、透明感のある色彩を多用し、絵画や木版画を作る難波多輝子さん。2人の芸術家の間に長男として生まれ、幼少期から美術が身近な存在だったという。しかし、小学4年の頃から、20代半ばまで、両親に反抗。「美術なんか嫌いだ、とずっと背を向けていました。何も分からない子どもだったのです」と振り返る。

その後も「美術」と距離を取りながら、サラリーマンになり数年経った25歳の時、転換点を迎える。

店内では、丸尾康弘展「ボクらの森」を開催

「人に影響を与えたり、心が癒されたり、何て美術は素晴らしいのだろう」という思いが湧いてきた。「美術に育てられ、ご飯を食べさせてもらった。今度は、美術に恩返しをしたい」と海外でアートマネージメントを学ぼうと決心。留学費用のため、がむしゃらに働いたが、そこにコロナが立ちはだかり、実現は困難に。がっかりしたが、「これも運命」と心機一転、貯めた資金と思いをギャラリーに全て投じた。自らも天井をはがし、壁を塗り、リノベにも精を出した。その姿に両親は、「やりたいことが定まってよかった」と喜んでくれたという。

和紅茶や和紙製品など熊本県山鹿市の物産を提供

ギャラリーでは、現在、こけら落しとして、丸尾康弘さんの個展「ボクらの森」を17日まで開催中。立体17点と平面20点などが展示されている(無料)。その後は、別の作家の企画展などを予定。音楽が流れる店内では、コーヒーや紅茶も提供。熊本で出会った作家の「い草アクセサリー」や「和紅茶」、「ハンドソープ」などの商品も販売している。万象さんは、「高校生や若い人にも使ってほしい。織物などの桐生らしいインスタレーションを展示できたらいいですね」と話した。(谷 桂)

 

■ショップ&ギャラリー象(かたち)

定休日:火・水、午前11~午後6時。問い合わせ(0277-32-3648)。
インスタグラム @katachi.kiryu

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