尾瀬ケ原行(下) [5月下旬、雨の降る中で始まった尾瀬再訪…]

5月下旬、雨の降る中で始まった尾瀬再訪。先週の総局長日記は尾瀬の玄関口・鳩待峠までの道中記で終了したので、今回はたっぷり尾瀬ケ原の風景を紹介する。

尾瀬ケ原の湿原までは山道を歩く必要がある。尾瀬はほぼ全域に木道が敷かれており、山間地も木道が続く。ガイドの杉原勇逸さんによると、毎年木道で転倒してケガをする人は後をたたないという。降りしきる雨の中、木道は滑りやすくなっている。足元ばかりに気を取られていると、杉原さんが道の脇を彩る様々な植物の名前を教えてくれた。ネコノメソウ、オオバキスミレ、オオカメノキ、ニリンソウ……。1200種類ともいわれる尾瀬の植物の多様性を道中ですでに実感することになった。

ゆっくり歩いて約2時間後、尾瀬ケ原に到着。目の前いっぱいに広がる湿原は、まさに私の心の中の「尾瀬」のイメージそのもの。ミズバショウの群生、点在する池溏と呼ばれる池、植生が変わることによって生じる縞模様(指紋状パターン)がはっきり見てとれる。池溏から響くモリアオガエルの鳴き声を聞きながら、背中に至仏山、前方に燧ケ岳と、尾瀬の名山に守られて木道を歩く。山小屋に食料などを届ける歩荷さんの、うず高く積んだ荷物を背負って木道を闊歩する姿も尾瀬ならではの景色だ。

鳩待峠に戻ったのは午後4時半。別世界の時間を堪能した9時間の尾瀬ケ原行だった。夏は至仏山を目指してみたい

午後は雨があがり、至仏山が姿を見せた
今の季節の主役は、やはりミズバショウの群生
山小屋のホットココア。雨で冷え切った身体にしみわたった

(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)

 

掲載内容のコピーはできません。