しわ寄せ [コロナ禍に伴う社会の激変や貧困、虐待…]

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コロナ禍に伴う社会の激変や貧困、虐待……。「こどもの日」にちなんだ子どもたちを取り巻く悲しい記事を、胸の詰まる思いで読みました。

群馬版で報じた県内の19歳の女性は、幼い頃から父親の壮絶な暴力にさらされました。「このままだと殺される」。家を飛び出したのは高1の夏。駆け込んだコンビニで電話を借りて警察署に連絡し、そのまま児童相談所に保護されたといいます。飲食店で働きながら、通信制高校で大学入学をめざして勉強中。コロナ禍で学費をためられなかったということです。

自分のように劣悪な環境にいる子どもを救いたい――。女性の思いはデジタル版でも大きな反響を呼び、東京周辺で配っている夕刊でも後日、取り上げられました。

社会面の別の記事では、児童養護施設や里親のもとで暮らす生徒を対象にした大学の推薦枠を紹介していました。青山学院大では、施設長の推薦書や志望理由書による書類選考と面接で合否が決まり、学費免除で毎月10万円の奨学金も給付されるということです。

厚生労働省の調査によれば、2018年度末の施設出身者の大学や短大、専修学校への進学率は28・3%。全高校卒業者の73・6%と比べると、極端に低いのが実情です。虐待を受けたり身寄りがなかったりという事情で、将来の多様な選択肢をあきらめることはあってはなりません。貧困を理由に学ぶ機会を奪われることも許されません。大人は何をすべきか。静かなGW、物思いにふけりました。

(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)

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