ロックバンド バックナンバー

ラジオ収録で月1回、地元に戻るバックナンバー=
太田のFM TARO

「良いよね」って思える曲を丁寧に

「初めての武道館。人生で1度しかないので、特別な1日になると思います」

 

【フラットになれる場所】

「どうも〜!バックナンバーのボーカル清水依与吏で〜す」3月中旬、おおたコミュニティー放送「FM TARO」で行われた公開収録。スタジオ内は終始、笑いが絶えなかった。毎週土曜午後8時から放送中の30分レギュラー番組「pizza small world!」は音楽あり、本音トークあり、地元ネタあり、恋愛相談ありと盛りだくさんで同局の看板番組として多くのリスナーから愛されている。脱力系タイトルは同局の亀井歩ディレクターと打ち合わせ中、ピザを食べていたことから思い付いた。
08年からスタートし、メジャーデビュー後も変わらず出演し続けている。「月1回地元に戻り、昔から応援してくれているリスナーや亀井さんと接することで自意識過剰気味な精神状態をフラットに戻すことができる。原点を思い出させてくれるラジオ出演は、音楽を続ける上で欠かせない」と3人は口をそろえる。

【絶対、プロになれる】

04年、群馬で結成され07年に清水さん(ボーカル&ギター)、小島和也さん(ベース)、栗原寿さん(ドラム)の現メンバーに。3人の繋がりは伊勢崎市内にある高校で別々のバンドをやっていた頃から。「当時、地元の音楽シーンはかなり盛り上がっていて小島はCDも出していた。僕ら夢見るお年頃だったので絶対プロになれると信じて疑わなかったですね(笑)」(清水)
バンド名は結成前、好きだった女性をバンドマンにとられた清水さんが、「振られた自分は元カノからしたら過去の男、つまり型遅れ」との思いから付けたという。「取り残された人、悲しみを背負った人というニュアンスの中に、彼らを見返してやるという反骨精神も込めた。生きていく上で辛いこともあるけれど、明日を今日よりも良くしたいという気持ちで歌っている」(清水)

【バランス感が一番の強み】

バンド名からも分かるように、ストレートな心情を綴ったリアルな歌詞と涙腺を刺激する甘く切ないメロディが特徴。作詞作曲は全曲、清水さんが手掛けている。詞はほぼ実体験をベースにしており西藤中央公園や東武伊勢崎線など実際、生まれ育った街の景色を織り込んだ曲も多い。詞と曲、どちらを先に作るかはケースバイケースだが「最近はまずメロディーが出来て、そこに言葉を乗せていくパターンが多い」とか。
が、その段階では曲として成立しておらず、小島さんのベースと栗原さんのドラムを重ねていきながら「完成版」を仕上げていく。誠実だったり、ずるかったり、女々しかったり‐三者三様の感情が入り混じり化学反応を起こすことで全く新しいサウンドが生まれるという。「共同作業による一体感やバランス感がバックナンバーの一番の強み」という認識はメンバー間で一致している。

【テレビ出演し全国区に】

11年4月にデビュー。以来、シングル「花束」「恋」やアルバム「スーパースター」「blues」などを立て続けにリリース。全国ワンマンツアーを行う一方、「ROCK IN JAPAN」「RISING SUN ROCK FES」など夏フェスにも出演、瞬く間に音楽シーンの最前線に踊り出る。
昨年はフジテレビ系ドラマ「高校入試」の主題歌「青い春」や映画「今日、恋をはじめます」のテーマソング「笑顔」を担当。更に朝日テレビ系音楽番組「ミュージックステーション」に出演、その名を一躍全国に知らしめた。「ドラマや映画ではクライアントの意向と自分たちの音楽スタイルを両立させる難しさと面白さを学んだ。テレビ出演後は街で声をかけられる頻度がグンと増えましたね」と3人は笑顔を見せる。
今年に入ってからも活動ペースは加速中。1〜3月にかけて全国17か所19公演のワンマンツアーを敢行、1万5千人を動員した。2月には地元の「高崎クラブフリーズ」で凱旋ライブを開催。全18曲を熱唱し故郷に錦を飾った。メンバーは「平常心を保とうと思ったが、知り合いやお世話になった人たちがたくさん来て下さっていて緊張と気恥ずかしさで必要以上に肩に力が入ってしまった」と明かす。

【ワクワク感を大切に】

デビュー後の2年を3人は「無我夢中でとにかく置いていかれないように付いていくのが精いっぱいだった」と振り返る。バンドを取り巻く環境は結成当時に比べて激変。音楽も常に進化、深化し続けている。一方でメンバーの音楽に対する思いは全くブレない。「今も昔も3人が3人とも『良いよね』って思える曲を丁寧に作っている。これからもワクワク感やチャレンジ精神を大切にしながら日々、前進していきたい」
来月26日に8thシングル「高嶺の花子さん」をリリース。今秋、9月7日には日本武道館での初のワンマンライブ「back number live at 日本武道館 -stay with us-」が待っている。「初めての武道館。人生で1度しかないので、特別な1日になると思います。その日を、どんなふうにしたいのかをしっかり考え準備していきたい」と3人は決意を新たにする。多くのミュージシャンが憧れる「ロックの殿堂」で、バックナンバーの雄姿が見られるのはもうすぐだ。

文:中島 美江子
写真:高山 昌典

【プロフィル】back number
ボーカル・ギターの清水依与吏さん(84年〜太田出身)、ベースの小島和也さん(84年〜伊勢崎出身)、ドラムの栗原寿さん(85年〜同市出身)の3人組バンド。これまでアルバム4枚、シングル8枚を発表。ドラマなどに数々の楽曲を提供。9月7日、日本武道館で初のワンマンライブを開く。東京在住。

 

〜ロックバンド・バックナンバーさんへ10の質問〜

群馬の魅力はFM太郎があるところ(笑)

—好きな食べ物は 

清=ソバ。太田にはおいしいお店がいっぱいある。小=ラーメン。味は何でも! 栗=やまといもが好きです。

—愛用の仕事道具は

清=アイフォン4S。メロディーを思い付いた時、ボイスレコーダーを立ち上げて吹き込んでいます。歌詞もすぐにメモできるので本当に便利。小=バックナンバーのロゴ入りオリジナルピック。自分でデザインしました。栗=Vic Firt(ヴィック・ファース)のドラムスティック。長さと太さが一番しっくりくる=写真。

—長所短所

清=短所は不器用なところ。生きるのが不得意で、色んな人に迷惑をかけている(苦笑)。長所は、それを歌にできるところかな。小=長所は分からないけど短所は気が短い。栗=長所は、細かいことは気にしない。短所はおおざっぱなところ。あ、一緒か(笑)。

—音楽を創る上でのモットーは

清=「良ければ何でもいい」。こうじゃなきゃいけないということに、こだわりすぎないようにしている。小=妥協しない。栗=昨日の自分より、何か一つでも出来るように頑張る。

—群馬の魅力は

清=住みやすいところ。人も気候もバランスが良い気がする。小=赤城山や利根川など自然豊かなところ。栗=赤堀花菖蒲園など花の名所が多い。清、小、栗=あとはFM太郎があるところ(笑)。

—好きな言葉は

清=臨機応変。その場に一番適している自分で何事にも立ち向かうのが大切なので。小=特にない。栗=自分がされて嫌なことは他人にしてはいけない。

—尊敬するミュージシャン

清=Mr・Children(ミスチル)のボーカル・桜井和寿さん。日本の音楽界は、この人なしに語れない。1曲1曲のクオリティーが高く、バンドマンとして一番尊敬している。小=LUNA SEA(ルナシー)のベーシスト・ジェイさん。栗原=斉藤和義さんや「いきものがかり」など、数多くのアーティストのライブで活躍しているドラマーの玉田豊夢さん。

—最近うれしかったことは

清=マネージャーが結婚したこと。一番身近な人であり、お世話になっている人なので何か曲を作りたいと思っている。小=夢だったワンマンツアーが叶ったこと。栗=地元の飲み仲間の一人が結婚し、別の一人に子供が生まれたこと。自分はまだですが(苦笑)。

—最近はまっているものは

清=はまっているというか、今は完全に曲作りモードに突入しちゃっています。小=PSP版オンラインゲーム「モンスターハンター」。栗=携帯ゲーム。移動時間を使って楽しんでいます。

—これからやりたいことは

清=海外旅行。一番興味があるのはスペイン。絵画や建築などを見て回りたい。行くあてはないですが、とりあえずパスポートは取りました(笑)。小=最近、バイクの免許を取ったので地元でツーリングを楽しみたい。後は、時間気にせず好きなだけ寝ていたいですね(笑)。栗=クライミング。ハマっている友達がいて、自分もやってみたくなった。運動不足解消にもなりそうだから。

 

取材後記
「親しみやすいメロディーと飾らない歌詞が魅力。リリースを重ねる毎にクオリティーを高めている」 デビュー前からバックナンバーを見続けてきたFM太郎の亀井歩ディレクターが力説するように、彼らの新曲は前作に比べ格段に進化を遂げているのが分かる。
清水さんの曲作りに対する真摯な姿勢と、彼の目指す音楽を最大限に表現しようとする小島さんと栗原さんの誠実な思いがそれを可能にしているのだろう。3人とも自分の役割に自覚的で、どうすれば「より良い曲が作れるか」という一点に意識を集中させている。
今年の夢は「多くの人を幸せにしたり感動させられるような曲を作りたい」というが、日本武道館ライブでは心揺さぶる曲の数々を聴かせてくれるに違いない。

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