肝いり案件 [高齢者のワクチン接種を「7月末に完了」「1日100万回」と掲げる菅義偉首相の大号令のもと…]

総局長日記タイトル画像
 
高齢者のワクチン接種を「7月末に完了」「1日100万回」と掲げる菅義偉首相の大号令のもと、東京と大阪の「自衛隊大規模接種センター」で集団接種がスタート。県が太田市に設けた「東毛ワクチン接種センター」をはじめ宮城、愛知でも独自会場での集団接種が始まりました。

ワクチン供給の見通しが改善され、総務省の調査に全国85%の自治体が「7月末」までに「達成可能」と回答。政府・与党も、接種加速に向けた自治体への働きかけをさらに強めているようです。

国内で接種を終えた人の割合は、先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)37カ国中で最低です。感染力の強い変異株が拡大する中、迅速な接種で命を落とす人や重症者が減るならば歓迎すべきこと。それでも、東京五輪開催に照準を合わせた「7月末」の目標設定は無理筋では。

接種を担う「打ち手」に救急救命士と臨床検査技師も加える方針ながら、医療従事者にさらなる負担がのしかかるのは明らかです。朝日新聞社が15、16日に実施した全国世論調査(電話)で東京五輪・パラリンピックの開催について3択で尋ねると、「中止」43%、「再び延期」40%、「今夏に開催」はわずか14%でした。菅首相は「安全安心の大会の実現は可能」と言うけれど、誰にとっての「安全安心」?

「7月末」までに接種を受けられない大多数は不要不急の外出自粛を強いられ、飲食店なども窮地に追い込まれたまま、海外客の姿がない五輪をテレビ観戦するしかない夏が来るのでしょうか。

(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)

掲載内容のコピーはできません。