高校野球 [試合に向けてメンタルをリセット](Vol.2)

笹川裕昭のスポーツコラム(月1回掲載予定)

選抜出場が決まった際、健大カラーのだるまを抱えて勝利を誓う選手ら

2年ぶりに開催された春のセンバツ高校野球は、東海大相模(神奈川)が10年ぶり3度目の優勝を果たし幕を閉じました。

一方、関東地区のチャンピオンとして挑んだ高崎健康福祉大学高崎は、2回戦で天理(奈良)に0対4で敗れ、涙をのみました。選抜代表選考の参考材料とされた秋の関東大会では、自慢の打力で勝利を重ねましたが、天理戦ではわずか2安打に抑え込まれ、主将の小沢周平選手も「打てなかったなというのが印象です」と悔しさをにじませました。

それでも、初戦の下関国際(山口)戦では、中軸だけでなく上位から下位までの各選手が、鋭い振りと力強いバッティングを見せ、6対2で勝利。「強打の健大」を全国に印象付けました。チームはもちろん、群馬のレベルの高さを十分に伝えてくれたのではないでしょうか。大舞台で活躍した健大高崎はとても素晴らしかったと思います。しかし、今大会には、甲子園という特別な場所で力を発揮するだけではない、その上の難しさがあったと思います。大会中止となった昨年の悔しさを胸に、そして先輩たちの無念をも背負って臨んだことと思います。また、「2年ぶりのセンバツ」と、いつも以上に世間からも注目されました。また、感染防止のために、試合はもちろん練習、移動に至るまで、さまざまな場面で制限を受けたことでしょう。

さらに、技術面を磨く上での困難さに加え、精神面での苦悩がのしかかったのは初戦でした。健大高崎は、開会式後、2試合を挟んでの第3試合。同校の生方啓介部長は「開会式の後から初戦までの時間をどう過ごすか、組み合わせが決まった時から頭を悩ませていた」と振り返ります。この日、健大高崎がとった方策は、緊張や集中を維持し続けるのではなく、一度、リセットすることでした。気持ちを仕切り直すことで、しっかりと試合に集中し力を出し切ることに成功したのです。

このやり方は、明秀日立高(茨城)の金沢成奉監督からのアドバイスを参考にしたのだそうです。かつて光星学院(青森)の監督として、プロ野球・巨人の坂本勇人選手を育てたことでも知られる方です。生方部長は「開会式の後、一度ユニフォームを脱ぎ、気持ちをリラックスさせることでメンタル的な切り替えができ、集中力を欠かさずにプレーできた」と選手たちをたたえました。

実力を持っていても、いざという時に発揮しなければ、後々、悔しさが残るものです。大事な場面で自分のベストを出すためには、気持ちを切らさず維持することも大切ですが、いかにメンタルをコントロールするかということも重大なポイント。気持ちのリセットは、その手段の一つ。スポーツに限らず、私たちの日常でも同じことが言えそうです。

さて、健大高崎は夏の甲子園でのリベンジを誓いますが、県内のライバルも、「打倒!健大」の思いは強いはず。夏の県大会が今から楽しみです。

が、その前に明日10日からは春の関東大会県予選も始まります。常に全力プレーで感動と興奮を届けてくれる県内の高校球児たちの激戦は必至!見逃せませんよ。。

笹川裕昭
Sasagawa hiroaki

1978年3月28日生まれ、埼玉県さいたま市出身、大東文化大卒。ラジオ局エフエム群馬で、アナウンサーとして、スポーツ実況や朝夕のワイド番組に出演。現在は、株式会社フットメディアに所属し、スポーツ実況を中心に県内外で活動。個人サイト「SASAnote」(https://sasanote.net/)を運営し、県内スポーツの情報発信も行う
Twitter:@hiro3sa
Instagram: hiro3sa_insta

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