渡りチョウ・アサギマダラ  

ひらひらと優雅に 県内各地に飛来中

フジバカマの花の蜜を吸うアサギマダラ=渋川の赤城自然園

世界で唯一、海を越えて2千キロ以上も渡り(長距離移動)をするチョウ「アサギマダラ」が現在、群馬の各地にも飛来している。浅葱色(ごく薄いブルー)のまだら模様の翅(はね)をひらひらとさせながら優雅に飛ぶ姿や、まだ解明されていない生態が人々を魅了する。今週は、アサギマダラの魅力と県内で観賞できるスポットを紹介する。          (上原道子)

2千キロも旅するチョウ、海をも渡る
アサギマダラはタテハチョウ科のチョウで日本全土に分布。翅の半透明な部分が浅葱色であることが名の由来で、翅を広げると約10㌢とアゲハチョウほどの大きさ。

渡りは、春の北上と秋の南下があるが、1頭の同じチョウが往復するのではない。南方で冬を迎え卵からかえった幼虫はそのまま越冬し春に羽化して北へ。一方、北方で夏に卵からかえり、さなぎを経て羽化したチョウは高地など涼しい場所で過ごしたのち秋に南へ。それぞれたどり着いた地で世代交代していく。1~2千キロもの距離を移動する「渡りチョウ」は世界に2種あるが、海をも渡るのはアサギマダラが唯一といわれる。

フジバカマの蜜が好き
現在、群馬に飛来しているのは南下を始めたチョウだ。アサギマダラは、秋の七草の一つ、フジバカマを好む。蜜に含まれるピロリジジン・アルカロイドという毒性物質を体内に蓄積して外敵から防御する。また、オスはこれを原料としてフェロモンを作る。自宅にフジバカマを植えれば花の咲くころ庭先にアサギマダラがやってくる可能性もある。

長旅の実態を知る喜び

栗田さんが福島で放蝶したチョウ(左)と八丈島で再捕獲したチョウ(右)

医師で、群馬パース大学(高崎市)学長の栗田昌裕さん(70)は、この不思議な特性をもつアサギマダラに魅せられ、2003年から調査・研究を開始。10年間に13万頭あまりに印を付けるマーキングを施し、13年には著書も出版。福島県で放したチョウが台湾の西(蘭嶼島)で再捕獲された例では2513㌔の移動を記録したという。魅力について栗田さんは「旅の時期や道筋、成熟に必要な化学物質などを鋭敏にかつ賢く察知して確実に長距離を渡っていく不思議な能力を持っている。彼らの『心』を読みさえすれば、夏にマーキングをしたチョウに秋に再会できるという事実に喜びを感じます」と語る。

ぐんま昆虫の森でボランティアを行う一場光次さん(72=中之条町)も、10年ほど前からアサギマダラを追いかけ、時期になると吾妻地域でマーキングを行っている。「今年は花の咲きが早め。飛来地で虫取り網を持っている私を見かけたら声をかけて。マーキングのお手伝いをしますよ」と話す。

栗田さんに聞く 鑑賞のポイント

マーキングを施したアサギマダラを手にほほ笑む栗田学長=長野県御代田市

①【天気と気温】雨の降らない、22~25度前後の日をねらう(19度以下だと活動しない)
②【半日陰】直射日光が苦手なので、周囲に隠れられる場所があるところで活動している
③【マークを施したチョウを見たら】撮影してアサギマダラの会(旧:アサギマダラを調べる会)に報告すると、生態調査に役立ち、放蝶者も喜ぶ。

10月上旬にかけてアサギマダラが飛来する県内のスポット

【渋川・赤城自然園】
四季の森エリアの「お花畑」、自然生態園エリアの「チョウのはらっぱ」、昆虫館と三角点(標高675㍍)の周辺にフジバカマやアザミなどが植えられている。同園スタッフの岩田勝さんは「飛来数が日に日に増えてきており、10月上旬にかけて観賞や撮影が楽しめます。HPの情報も参考にしてお出かけください」と話す。なお、同園では自然体験活動と、環境調査、生物生態調査の一環として1998年からマーキング活動を継続して行っているが、コロナ予防のため今年度、一般来場者のマーキング体験は中止。入園料高校生以上1000円。11月までは火曜休み。同園(0279・56・5211)。

【高崎・県立観音山ファミリーパーク】
同園のボランティア委員会(福島位枝担当理事)は2016年からアサギマダラを呼ぼうとフジバカマを植えたりマーキング調査などを実施。現在40~70代の約30人が登録、1年を通して整備を行う=写真。アサギマダラが見られるのは「ローラー滑り台」下周辺、「ダッシュ坂」の途中、多目的広場など。福島さんは「きれいな浅葱色の翅で優雅に飛ぶ姿には感激。マーキングの楽しさも多くの人に味わってほしい」と話す。入園無料。同園(027-328-8389)。

【桐生・ぐんま昆虫の森】
今月下旬から10月上旬に飛来。「バッタの原っぱ」西側の畑の奥で観賞できる=写真は6月、ヒヨドリバナの葉の汁を吸うアサギマダラ。園内でのマーキング調査は実施しない。入園料一般410円、大高生200円。毎週月曜(月曜が祝日の場合は翌火曜)休み。同園(0277-74-6441)。

【中之条・山の上庭園】
旧六合村地区にある同園では、レストハウス裏の丘を上った遊歩道北側に咲く、フジバカマやマツムシソウを吸蜜している。入園無料。11月までは火曜休み。同園(0279・80・7123)。

【そのほか】
高山村の道の駅「中山盆地」近くの畑や、東吾妻町の道の駅「あがつま峡」駐車場近くの畑(上郷農園)などフジバカマの咲く場所に飛来。

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