目指せ!金! スピードスケート 県勢3選手出場

北京2022冬季五輪、開幕まであと1週間

2月4~20日に中国の北京で開催される冬季五輪。スピードスケート男女の日本代表として、群馬県ゆかりの新濱立也選手(高崎健大職員)、佐藤綾乃選手(高崎健大出身)、土屋良輔選手(メモリード、嬬恋村出身)の3人が出場する。今月13日にオンライン会見に臨み、現在の心境や本番に向けての抱負を語った。(谷桂、上原道子)

男子1万㍍日本記録保持者
土屋 良輔(27)
悔しさバネに狙うはメダル 日本に敵はなし

写真:アフロスポーツJSF

●男子1万m(11日午後5時)※競技開始予定時刻(日本時間)
五輪スケーターを多く輩出している嬬恋高出身、メモリード(本社前橋市)所属の土屋良輔選手は、オンライン会見で「目の前の練習を1つひとつこなし、しっかり準備をしたい」と真剣な表情で語った。4年前、23歳で出場した2018年の平昌五輪1万mでは、日本記録を更新したもののトップとは30秒差で10位に。「出る前から実力差を感じ消極的になってしまい、満足いく滑りができなかった」と悔やむ。それからは、「強くなろう。絶対、自分はできる」との意志で練習に励んできた。1周のラップを正確に刻む練習を積み重ね、昨年12月の代表選考会(長野市エムウェーブ)では、男子1万mの自身が持つ国内最高記録を8秒63更新する13分6秒17で優勝し、ガッツポーズ。2大会連続の五輪切符を手に入れた。

「日本に敵なし」だが、土屋選手は世界を追い抜くための目標タイムを「12分台」と明確にし、さらに「前半をハイスピードで、残り後半からはラップをあげ気を抜かずにラスト2周のタイムを維持して、メダルを獲得したい」と自信をのぞかせた。

つちや・りょうすけ/1994年11月29日生まれ、嬬恋村出身。嬬恋高校-専修大学-メモリード所属。27歳。18年の平昌五輪1万mでは10位(日本記録更新)、団体追い抜き(チームパシュート)5位。男子5千m16位。五輪出場は2大会連続

平昌・チームパシュート金
佐藤 綾乃(25)
2大会連続 金メダル成るか

写真:アフロスポーツJSF

●女子1500m(7日午後5時半)、3000m(5日同)、チームパシュート(1回戦 12日午後5時)
18年平昌五輪、3人1組で滑るチームパシュートで、世界のトップスケーター髙木美帆・菜那選手と一緒に金メダルを獲得した佐藤綾乃選手。当時、高崎健大在学中で21歳2カ月だった佐藤選手は、冬季五輪の日本人女子最年少金メダリストとして注目を集めた。今回もチームパシュートに加え、女子1500mと3000mの日本代表になった。

北京での各種目について「日本のチームパシュートは、ワンラインのきれいさはどこにも負けない。最近、カナダなど海外チームでは、先頭を入れ替わらないで滑る『プッシュ』式を取り入れる国が強くなっており、気が抜けない」と気を引き締める。ヨハン・デビットヘッドコーチやメンバーともミーティングを重ね、新たな作戦で金メダル獲得を目指すという。最も重要視しているのが、1500m。「今季、ワールドカップの前半4戦で3度表彰台に上がり自信がついた。世界記録保持者の美帆さんの横に立てたことも嬉しかった。最初の1周半のところで、しっかりトップスピードに乗せていければ、間違いなく最終タイムも伸びる」。さらに「3000mは次につなげられるレースにしたい。大きい舞台で自分が100%の力を発揮できるのかがポイント」と冷静に挑む。

さとう・あやの/1996年12月10日北海道生まれ。高崎健康福祉大卒。ANA所属。平昌五輪では団体追い抜きで金メダル、個人3000m8位。五輪出場は2大会連続。新濱選手と大学の同窓生。ともにスケート部で切磋琢磨してきた「同志」でもある

500㍍日本記録保持者
新濱 立也(25)
五輪の金は、人生の目標「世界大会制覇」の一つ

写真:アフロスポーツJSF

●男子500m(12日午後5時53分)、1000m(18日午後5時半)
3歳からスケートを始めたという新濱選手は、釧路商業高時代にインターハイで優勝経験を持つ。高崎健大へ進学後もスプリンターとして活躍するも、同大3年生で迎えた平昌冬季五輪の選考会(2017年)では、僅差で4位となり(代表枠は3)、惜しくも代表入りを逃した。その後も成長を続け、19年3月のワールドカップ(アメリカ・ソルトレイクシティ)男子500mでは、日本勢として初めて34秒を切る33秒79をたたき出し、日本記録を樹立した。同年4月から同大職員として競技を継続。500mと1000mを2本ずつ滑り世界最速のスケーターを決める「世界スプリント2020」では男子総合優勝を果たし一躍、世界のトップスケーターの座に。500mでは昨年11~12月のW杯で好成績を残し初の五輪出場を決めた。1000mは、先月の代表選考会で2位となり、500mとあわせての出場が決定した。

新濱選手は「世界大会全てのタイトルを制覇することが人生の目標。五輪はその中の一つととらえている。500mで『初出場、初金メダル』が達成できるよう、最大限頑張りたい」と意気込む。

しんはま・たつや/1996年7月11日北海道生まれ。2019年4月から高崎健康福祉大職員。500m日本記録保持者。180㌢を超える長身を生かしたダイナミックな滑りが特徴。五輪初出場

新濱&佐藤選手の出身スケート部監督が語る !
悔いのない五輪を !
入澤孝一さん(72)

「先日、高崎健大を代表し、軽井沢で合宿中の新濱選手と佐藤選手へエールを届けてきました。表情、声の張り、目の輝きなどから、順調に準備が進んでいるな、という印象。二人には『最終的な調整をしっかり行って、悔いのない五輪にしてきてください』と声をかけると新濱は『頑張ります』、佐藤は『金メダルを取ってきます』と力強く答えてくれました。

初出場の新濱には、大舞台の雰囲気にのまれず平常心で滑ってほしいです。後半に強い選手なので、200mを過ぎてからの早さに注目です。最初の100mのラップが9秒5以内なら金が狙えるでしょう。

佐藤は上昇中の1500mで個人のメダルが取れるかどうかも見どころです。チームパシュートは、カナダが強い。各国とも周回ごとに先頭交代させない戦術に切り替え始めていて、日本も現在、修正中のようです。それがうまくいけば金が取れると信じています。

彼らの本番はテレビの前で観戦予定です。そしてメダルを獲得したら、すぐに祝福メッセージを送りたいと思っています」

いりさわこういち/高崎健康福祉大保健医療学部理学療法学科教授・同大スケート部監督/県スケート連盟副会長/群馬県スポーツ協会強化委員長

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