神社と和スイーツ

最近、神社の近くの写真映えする「和スイーツ」が人気を呼んでいる。コロナや高齢化もあり、以前に比べると神社に参拝する人が少なくなっている昨今、その参道に、にぎわいを作りたいという神社側と、参拝客にスイーツを提供したいという店の思いが合致した。山名八幡宮(高崎)や玉村八幡宮、上野総社神社(前橋)近くにある団子やわらびもち、かき氷などを扱う「和スイーツ店」を紹介する。  (谷 桂、上原道子)

柔らかくてふんわり「宮だんご」と「八幡わらび」
〈玉村八幡宮近く〉 玉村町甘味処 八幡茶屋

今年3月、玉村八幡宮(玉村町)の東側に「玉村町甘味処 八幡茶屋」(笠原香織代表)を二人の仲良し姉妹がオープンした。

とろけるように柔らかいお団子に、みたらしとこし餡が一杯に入っている「宮だんご」(税込888円)と綺麗に敷き詰められたきな粉の中に隠れているわらび餅「八幡わらび」(税込888円)。2種類をテイクアウトで販売する。すぐに完売になり「幻のスイーツ」と呼ばれる人気の和菓子だ。

団子誕生の秘話はこうだ。菓子作りが趣味の姉妹が「本格的にお店をやりたいね」と地元で物件を探すがうまく行かずに「今日はあきらめよう」と玉村八幡宮の境内でしょんぼりしていると、宮司が「二人の夢」を聞いて励ましてくれたという。すぐに「良かったら、この家を使うかい?」と神社が所有していた古民家を貸してくれることに。「神様のご縁に、感謝しかなかった」と振り返る。その後は、店舗を家族総出でリフォーム。一方で神社というコンセプトに合ったメニューを開発した。硬さの違う団子を多数食べ比べ、二人で「これだ」と意見が合った味と食感に。「小粒で子どもから年配者まで誰でも食べられる柔らかいお団子にした。歯ごたえがあるのにトロトロのわらび餅も自信作。箱を開けたときにワクワクするような見た目にもこだわった」という2品が誕生した。「すべては宮司さんのおかげです」という二人のお店に、今日も行列が絶えない。

あんことみたらし団子とが一緒に入った
「宮だんご」
平らなきな粉の中からわらび餅が出てくる「八幡わらび」

■佐波郡玉村町下新田68-4 TEL:0270-71-6717
営業時間:11時~完売次第終了、定休日:月・火曜
※10月の宮だんごの予約は、9月11日の12時から
インスタグラム:@hachimanchaya

「縁」大切に 地域と神社をつなぐ
〈上野総社神社近く・前橋〉 えんにち茶屋

上野総社神社(前橋市元総社町)の目の前にある古民家カフェ「えんにち茶屋」では、かき氷やあんみつ、ぜんざいなどの多彩な和スイーツを通年で提供している。近くの洋菓子店「ルイドール」のオーナーでもある都丸渥司さん(46)が、パティシエとしての技術を生かした様々なスイーツを創作する。

同店一番人気のプリンアラモードは、カスタードプリンを主役に、白玉、あんこ、栗といった「和」の王道に加え、アイスクリームや季節のフルーツを彩りよくトッピング。しっかりとした固さに仕上げた濃厚なプリンは、なめらかな舌触り。あんこや白玉との相性も良い。また、今週登場した季節限定の新メニュー「シャインマスカットとアロエヨーグルトのかき氷」は、芳醇な香りと爽やかな酸味、さっぱりとした甘さが特徴。内部にアイスが隠れており、最後まで飽きずに美味しく食べられるよう工夫されている。

隣の総社町で生まれ育ち、同神社には昔からなじみがあったという都丸さんが店のコンセプトに掲げるのは「手と手をあわす“まいにちがえんにち”」。空き店舗を借りられたのを機に2018年11月にオープン。神社とのつながりや、人が集うことで生まれる「縁」を大切にしたいという思いから「えんにち茶屋」と命名し、どの世代にも好まれるかき氷をメインに展開する。果物のコンポートや特製シロップ、あんこなども全て手作りだ。

都丸さんは、同神社にも、もっと足を運んでほしいと2年前から、手水鉢に花を浮かべる「花手水」の飾り付けをボランティアで行っている。さらに今月25日に境内を借りて開く祭り「まちのえんにち」を初企画。「カフェと神社をセットで楽しんでくれる若い人も増えてきた。今後も神社との関係性を大事にし、地域が元気になるようなことをやっていきたい」と話す。

一番人気の「プリンアラモード」(税込780円)は、レトロモダンな古民家の雰囲気にもぴったり
旬のブドウを使った「シャインマスカットとアロエヨーグルトのかき氷」(同1150円)は季節限定メニュー
都丸さんが飾り付けを行っている
上野総社神社の花手水

■前橋市元総社町2375 TEL:027-212-5860
営業時間:午前10~午後6時 月曜定休
インスタグラム:@ennichichaya

お団子とは思えない華やかな色と形
〈山名八幡宮境内・高崎〉 予祝

美しすぎるお団子を提供するのが、山名八幡宮(高崎)の元社務所に不定期でオープンするテイクアウトの店「予祝」。

「予祝」の代表で女将と呼ばれる井川みゆきさん(45)は、元パティシエ。独学でスイーツや総菜を作り、以前はカフェを開いていた。自然農法の米に興味があった井川さんは、わらを使ったしめ縄作りがきっかけで、山名八幡宮の宮司と「茅の輪」を作成。4年経ったとき、「ここで店をやってみませんか?」と宮司に声を掛けられ、元社務所を使えることに。

お団子の上には、ピンク、ブルー、紫など、色とりどりに咲くバラの花や緑の葉っぱなどが、あんこで作られている。紫はむらさきいも、ピンクはビーツパウダー、青はバタフライピーという花びらのパウダーを使用。白あんをベースにして濃淡をつける。お団子の上に載せるこしあんは、北海道で評判の「夢むらさきこしあん」。その上から、刻んだコハクカンが宝石のように輝く。

「お団子作りは大変ですが、楽しくて、心が揺れます。もし、本格的に伝統ある和菓子作りをしていたら、このデザインは作れなかった。予祝は前祝いの意味です。お団子を通して食をにぎやかに、華やかに彩りたいですね」と笑う。

山名八幡宮の花手水で撮影した「花だんご」。
3本セットと6本セットがある

 

八幡宮のイベントで人気のクリームソーダ。
猫の形のもなか付き

 

店に立つ女将は手相師でもある

■高崎市山名町1581
営業時間:午後1~4時 不定休
インスタグラム: @yoshukuokami
※来店前には、インスタグラムにて営業日や予約方法を確認

掲載内容のコピーはできません。