人の繋がりや思いのある音楽を

Interview
群馬交響楽団 音楽主幹
上野 喜浩さん

高崎芸術劇場の大劇場をバックに意気込みを語る上野さん

県内はもちろん県外や世界からも愛される群馬交響楽団。2019年には「高崎芸術劇場」(同市栄町)に活動拠点を移し、幅広い活動を県内外で展開する。今年4月、数々の音楽シーンやホールで活躍した上野喜浩さんが音楽主幹として着任した。来年度、日本を代表する指揮者の一人、飯森範親(のりちか)氏を常任指揮者に迎える群響の目指すところや、今後の見どころについてインタビューした。

〈〈 群響の音楽プロデューサーとして 〉〉

ー 音楽主幹に着任して半年経ちました
4月に群響に来てからというもの、お客様が直接声を掛けてくださったり、楽団員に大学の同級生もいたりと、群馬の皆さんが温かく接してくださってうれしい限りです。群響は、以前勤務していた「すみだトリフォニーホール」(東京都)の事業に毎年参加していましたので、メンバーと顔見知り。だから「初めまして」というよりは、「改めましてよろしく」という感覚です。

ー 着任以来、群響はどのように変化をしていますか?
群響は脈々と続く歴史あるオーケストラです。その中で、私はわずか数ページに関わるだけです。友人が「オーケストラはタンカーだよ」と船に例えたのを聞きました。つまり、進路を変えようと思っても、大きな体ではすぐには曲がれないと。なるほどと思いましたが、「少しずつでも変化しなければ、何も起こらない」と考えています。来年は新しく飯森範親さんが常任指揮者として就任します。オーケストラの潜在能力を引き出してくれるのではと期待しております。

ー 音楽主幹とはどのような役割ですか?
群響の楽団員58人は一人ひとりが年齢や性別、国籍も違う音楽家です。皆が自身の能力を最大限発揮できるように良い環境を整えることが仕事です。また、年間10回ある定期演奏会を中心に自主公演を企画しています。定期はオーケストラにとって、芸術的追求を行う大きな柱でもあります。誰を指揮者に呼び、どんな曲を演奏するのかをプロデュースします。「演奏しない音楽的な責任者」とでもいいましょうか。加えて、県内全小中学校で行う「移動音楽教室」などのアウトリーチ(出張演奏)にも立ち会っています。私が言うのも変ですが、全小中学校の生徒がオーケストラを体験できるとは、群響の活動ってすごい。先日、小学校で「行儀よく」座っていられない子どもがいて、それを先生が気にしていましたが「行儀とか気にしないでください。そのことで、音楽を聴けなくなってしまうことの方が悲しいですから」と伝えました。

ホールに足を運んでくださるお客様はもちろん、児童生徒や障がいのある人、外国人など一人でも多くの方に音楽を体験してもらえばうれしいです。そのため、楽団員や事務局スタッフ、行政、ホールなどとのコミュニケーションを大切にしながら仕事に取り組んでいきたいです。

ー 最近の定期演奏会も評判が良かったようです。
9月3日の第581回定期演奏会は、フランスのパスカル・ヴェロ指揮でフランクやドビュッシーなどのオールフランスプログラムにより高崎芸術劇場で行われました。指揮者やソリスト、楽団員はリハーサルと本番を通し、「音響の素晴らしいホールだからこそ、フランスの音楽が持つ色彩感や繊細さを表現できる」と喜んでいました。良いホールは良い演奏に繋がると改めて認識できた重要な演奏会になりました。高崎芸術劇場という「自分たちのお家」が新しくできたことは、とても意義深いこと。今後も群響に様々な個性ある指揮者やソリストを呼んで、楽団員に幅広い音楽体験を重ねてほしいと思っています。

〈〈 1月には飯森マエストロ登場 〉〉

ー 今後の見どころは?
定期演奏会については、次回10月23日に、いよいよ群響合唱団が登場します。実は合唱団が高崎芸術劇場で演奏するのは初めてです。これまで3度もコロナで中止になり、ようやく群響との共演が実現します。次の定期は、11月26日(高崎芸術劇場)、27日(すみだトリフォニー)に、イギリスの指揮者ジョセフ・ウォルフを迎えます。海外の指揮者はひと味違うので楽しみです。そして、いよいよ来年1月21日に飯森マエストロが登場しますので、ご注目ください。直前の9日に「群響渋川ニューイヤーコンサート」も予定しています。飯森さんのお母様の出身が渋川の赤城村(現在の同市赤城町)なので、ゆかりの地で盛り上げ、定期に繋がる企画を考えています。今後も人々の繋がりや思いを大切にした公演を仕掛けていければいいですね。

また、11月には楽団員自らがプロデュースする「室内楽演奏会」もあります。年間を通して、高崎芸術劇場との「GTシンフォニック・コンサート・シリーズ」も始めました。恒例の野外コンサート「森とオーケストラ」(群馬の森)も来年4月に行う予定です。

これからも群響は、様々な活動をしていきますので、皆様のご来場をお待ちしています。  (文・写真/谷 桂)

うえの・よしひろ/1968年東京都生まれ。すみだトリフォニーホールチーフ・プロデューサー、京都市交響楽団を経て2022年4月から群馬交響楽団音楽主幹 。高崎市在住。

〈群馬交響楽団演奏会情報〉
●第582回定期 10月23日(高崎芸術劇場)
●第583回定期 11月26日(高崎芸術劇場)、11月27日(すみだトリフォニーホール)
●第584回定期 2023年1月21日(高崎芸術劇場)
●GTシンフォニック・コンサート・シリーズ 映画音楽名作選2 11月11日(高崎芸術劇場)
●室内楽演奏会 2022 11月19日(高崎芸術劇場)
●群響渋川ニューイヤーコンサート 2023年1月9日(渋川市民会館)
●第44回森とオーケストラ 2023年4月予定(高崎・群馬の森)

■群馬交響楽団ホームページ:   http://www.gunkyo.com/
■群響事務局チケット専用電話 :027-322-4944(平日午前10~午後6時)

掲載内容のコピーはできません。