妥協のない画業たどる 前橋出身の日本画家・塩原友子回顧展

遺族からの寄贈受け ヤマトが記念展示
前橋の本社ギャラリーで3月31日まで開催中

群馬の日本画壇を牽引した塩原友子さん(前橋出身=1921~2018年)の回顧展が、前橋のヤマト本社ギャラリーホールで開催中だ。昨春、遺族から作品約100点が同社に寄贈されたことを受け会期中、未発表作を含むほぼ全ての寄贈作を紹介する。

寄贈作品が並ぶ会場と塩原さんの姪の関口さん=前橋のヤマト本社ギャラリーホール

【寄贈と道の駅開業を記念し企画】
本社にギャラリーを併設し、地元の文化振興や作家支援活動に力を入れる同社は昨春、県内の芸術文化支援団体「企業メセナ群馬」を介し、遺族から作品の寄贈を受けた。3月21日には塩原さんの出身地で、50代から晩年を過ごした前橋市田口町に同社が運営に携わる道の駅まえばし赤城がオープンするため、寄贈と開業を記念し回顧展を企画。塩原さんの姪、関口正子さん(66=前橋)は、「叔母は、『自然豊かな故郷が自分の創作の原点』と話していました。地域文化の向上のため様々な活動を行うヤマト様に作品を収蔵して頂くことになり、不思議な縁を感じています。アトリエに眠っていた作品に光りを当てて頂き本当に光栄。80年に及ぶ画業に妥協はなく、自由に描きたいものを描き続けた叔母の作品を地元の方に観てもらえたらうれしい」と語る。
【群馬画壇の発展に尽力】
塩原さんは県女子師範学校(現・群馬大)卒業後、地元で教員をしていたが30歳を前に画家を志し上京。当時の武蔵野美術(現・武蔵野美大)で日本画を学び、卒業後は日本画院展を中心に活躍。日本の風土や美意識によって培われた線や色彩を基に、幾何学的な画面構成やコラージュ技法を取り入れるなど、伝統的な日本画の枠組みにとらわれない独自の世界を確立。晩年は後進育成や県展審査員を務めるなど、群馬の日本画壇の発展に大きく尽力した。
【未発表作含む約100点を展示】
今展では寄贈作約100点を2期に分けて展示。会場には写実をもとにした初期の人物画や風景画を始め、曼荼羅をモチーフとした抽象画や和紙を張り合わせた実験的なコラージュ作品、渡欧時に描いた油彩画、故郷の山々を大胆に捉えた晩年作など多彩な作品が並ぶ。

同社総務部の柴山徳一郎部長代理(53)は、「様々な技法や画題に挑んだ塩原さんの作品は多岐に渡り、見飽ることがありません。回顧展では未発表作も多く展示されます。命日にあたる明日28日は、特別に開館しますのでこの機会に是非、塩原さんの世界に触れて欲しい」と話す。

入場無料。2月21日より一部の作品を入れ替え。午前10時~午後5時。原則土日祝日は休館だが28日、2月11日、23日、3月21日は開館。同社( 027-290-1800 )。         (中島美江子)

「葉丹の丘」(1998年)
「あしたの風」(1998年)
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