萩原朔太郎賞受賞の杉本さん 朔美館長とのエピソード語る

「30年前の出会いが、大きな励みとなりました。感無量です」
前橋で贈呈式

前橋文学館の萩原朔美館長(右)から朔太郎のブロンズ像を贈られる杉本さん

優れた現代詩を表彰する萩原朔太郎賞(前橋市、萩原朔太郎賞の会主催)の贈呈式が先月28日、前橋文学館で開かれ、受賞者の杉本真維子さん(50=埼玉県ふじみ野市)へ、萩原朔美館長(76)から朔太郎のブロンズ像が贈られた。

同賞は前橋出身の詩人・萩原朔太郎の功績を顕彰しようと、市制施行100周年の93年に設けられたもので、第1回の谷川俊太郎さん以来、これまで30人が受賞している。31回目の今年は杉本さんの詩集「皆神山」が選ばれた。杉本さんは「大変光栄。心より感謝いたします」と喜びを語ると共に、同文学館の萩原朔美館長との出会いが一つの転機となったことを明かした。「30年程前、会社員をしながら通った専門学校で、講師だった萩原館長に詩を褒められたのです。初めてのことだったので本当に嬉しくて、大きな励みなりました。感無量です」と当時を振り返った。

長野市出身の杉本さんは学習院大文学部哲学科を卒業後、2008年に詩集「袖口の動物」で第58回H氏賞、15年に詩集「裾花」で第45回高見順賞に輝くなど、高い評価を得ている。

受賞作「皆神山」には、「しじみ」など24編が112頁に収録。選考委員の一人で、詩人の日和聡子さんは「通底するテーマは普遍的な生と死。実感をもとに、静かに淡々と書かれているが容赦ない言葉のありようを突き付けてくる。一語一語が濃く、力のある詩集」と評した。贈呈式後は「運命のひと萩原朔太郎」と題し、杉本さんが講演。今後について「物の心に関心があり、命を持たないものの命、心を書きたい」と抱負を語った。

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